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プロローグ

父が死んだ。


あれは夏の始まりだった。


死んだときの光景は今でも目に焼き付いている。


電車のブレーキ音、肉が引きずられていく音、半分だけ人の形を保っていない父だったもの、目の前を埋め尽くす美しいとも言える赤の数々。


そんな光景を見たら誰だってトラウマが残るだろう、勿論俺も。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


俺には2人の姉弟がいる。


俺が中学生の時父と母は離婚した、その時に姉と弟は母についていき離れ離れになった。


円満なほうだったと思う、でもそれから母と姉弟と会う機会は無くなった。今では何をしているのかすら分からない。


突然始まった父との2人暮らし、決して悪い物では無かった。しっかりと愛を持って育ててくれたとずっと思っている。俺もその愛に応えたいからこそ父に色々な親孝行をしていこうと思っていた矢先だった。


20XX年6月8日、俺が21歳になってから2ヵ月が経とうとしていた頃、その頃も例年通り猛暑が続いていた。梅雨のはずなのに梅雨の気配すら見えない、そんな晴天の中父と出かけた帰り道、駅で電車を待っている時にそれは起こった。


「思ったよりも大量に買ってしまったな。」


父はその手に持った大量の電化製品を見て少し自嘲気味は笑う。


「まぁしゃーないやろ、気になったもんやし。それに俺の奢りや、日頃の感謝を込めて!ってやつ?」


「生意気言いやがって...ありがとうな!!」


父は少し...いや大分嬉しそうな顔をしながら返事をする。そんな父を見て俺は自然と笑みがこぼれた。しかし、俺は一つ我慢しているものがあった。


何を隠そう、トイレである。


まだ我慢できるが、電車の中に入ってしまえばトイレは無い。俺はそう思いトイレへ足を向ける。


「お父さんごめんトイレ行ってくる、荷物見といて。」


小走りでトイレに向かう俺を見ながら、父は「はいよ」とだけ返事をしてベンチに座りに行った。俺はこの時間違えた選択をしたのだろうと今でも思う。だってこれが父のと最後の会話だったのだから。



それからトイレを済ませ、駅のホームへ小走りで帰って来た時信じられない物が目に写り込む。


通過しようとする電車、そこに体を出し、今にも落ちそうな父、周りの人たちはまるで父が見えていないような様子でスマホ「だけ」を見つめているおかしな光景。


「ッ!お父さん待っ!!」


俺は全速力で父に駆け寄り、父を掴む。しかし、その抵抗虚しくそこにあったはずの父の体は左へ引きずられていった。ぐちゃぐちゃと内臓をばら撒く音を立てながら人ではない何かに父が変わっていくのをただ茫然と見ていることしか出来なかった。


父の体の腹から下が肉片になったころ、やっと電車は止まった。引きずられた跡がハッキリと血痕として残っている。おそらく10メートル前後だろう引きずられた跡を見ながら俺は千鳥足で父だった「物」に近づく。


「お、父さん...?」


ドクドクと血が流れていき、段々と肌の血色が失われていく半分もない体。もう生気を失い、虚ろな眼球。服に血が滲んできているが、それを気にする余裕も無い俺は必死に父を呼びかける。


「お父さん!!お父さん!!なんで!なんでや!!お父さん!!!!」


そんな俺の声が聞こえたのか、最後に父は言葉を発する。


「......は...る..き...」


俺の名前だ。その小さな声を零さず拾った俺は必死に呼びかける。


「お父さん、なんや!!ちゃんと聞こえてるから!」


俺の声を聞いて、少し笑った後父は最後の言葉を言う。


「.........○...○......○..○.......○」


......いや、言ったのだろうが俺はその言葉を聞き取る事が出来なかった。


何かを言った後、父はこと切れたのか何も話さなくなった。完全に死んだのだ。


それからの月日はあっという間に流れていった。


遺体は腹の上が無事だったため、葬式は行われた。「どうして」と泣き崩れる親戚の人たちや祖母。そんな人たちを前に俺は泣く勇気すら出せずにただ立って見るしかなかった。


こんな俺を見て、同情するもの、何故そんなにも無感情なんだと非難するもの、沢山の人が居た。


ただ、皆口裏合わせのようにこう言っていた。「あなたは悪くない。」と


葬式も終わり、1週間経った頃。俺は自分の部屋から出る事すら出来ない状況になっていた。父の居た跡を見るのが辛くなったのだ。そんな俺を見て、祖母は決して遠くない距離から俺の...俺と父の家に通い、家事や俺の食事まで作ってくれていた。


この時既に俺の■は壊れかけていたんだと思う。


あの時トイレに行かなければ。


あの時もっと強く引っ張っていれば。


あの時俺が身代わりになっていれば。



『俺が殺したも同然だ。』



俺が、俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が




殺したんだ。




そうだ、罪を償おう。誰にも迷惑の掛からない場所で、俺の罪を償うんだ。今度は間違えないように、誰にも見つからないように。


俺はろくに服も着替えず、部屋着のまま森の中へ足を踏み入れた。かなりの傾斜があるはずなのに、何も苦に感じない。むしろ■地がいい。この先で自分のした行いを懺悔するんだ。そう思い足を進めていく。


そうやって歩いて登っていく内に、少し開けた場所に出た。そこは崖になっていて、良く街の様子が見える場所だった。


「ここだな。」


そう独り言を零し、俺は足進める。


崖の縁へ行き、手を横に広げる。



あぁ、風が■地いい。


俺はここで自分の罪を償うんだ。


やっとこの地獄から解放されるんだ。



そう思い、重■を前へ倒そうとした瞬間、後ろから声がかけられる。


「本当にそれでいいの?」


「おわぁ!?」


その唐突の声に俺は驚き、跳ねる。その跳ねた勢いで俺は足を踏み外してしまった。


あぁ、落ちちゃった。でもいいや、このままで。と思った矢先、一筋の光が差し込む。その光に俺は目を眩ませ、思わず瞼を閉じてしまう。


「君は本当にそれでいいのかい?」


可愛らしい幼さの残った声で質問される。それと同時に、俺の体が落ちる感覚が徐々に無くなっていく。


知らない、本当にそれでいいのか?そんなもん分かる訳無い。でもお父さんを殺したのは俺や、その罪を償わないと俺は俺が許せへん。急に話しかけてきて俺を知ったような口を聞くなや。


思考を巡らせているうちに、自分が落ちている感覚が無くなっている事に気づく。


「は?」と不意に出た声と同時に目を開ける。すると、俺は空中に浮かんでいた。いや、浮かんではない。浮かんでいるものに抱えられていた。すると、また質問を投げかけられる。


「君は本当にこんな終わりで満足しているのかい?」


その姿は異常だった。長く腰まで伸びた金髪の髪、とても澄んで明るい碧眼の瞳、とても整った顔立ち、身長は140cmくらいだろうか?そして何より目立つのはその大きく広がる翼と頭上にある輪。その姿はまるで...


「天使...?」


思わずそう零してしまった俺を見て、彼女は笑みを浮かべながら言葉を出す。


「元、だけれどね。」


そんな彼女に抱えられ、さっきいた崖へと戻された後、俺は彼女に質問をする。


「なんで俺を助けた。」


折角楽になれると思ったのに、どうして俺を止めたのか。もう俺は■が限界だ、早く楽になりたいのに。そんな俺を見て彼女は少し笑みを浮かべて話始める。


「いやなに、ここで失わせるには勿体ない命だと思ってね。君は特別だ、君の魂は大きな使命を背負っていまこの現世に居る。その使命すらも果たせないまま朽ちるのは少し勿体ないと思ってね。」


「...大きな使命?」


なんだそりゃ、アニメや漫画の世界じゃないんだから。そんな使命がある訳ないだろ。俺にはもう生きる意味も、理由も、モチベーションも無い。早く死なせてくれよ。


「それに、君は君のお父さんを自分が殺したと思っているようだね。でもそれは間違いだよ。」


「...だったら!!だったらなんなんや!!あの時、俺がお父さんと離れずにいれば、もっと早く駆けつけて手を引いてあげれれば!!きっと...お父さんは死なずに済んだはずなのに...。」


俺のこの怒りはただの八つ当たりだ。「あなたは悪くない」この言葉は俺の事を■配してくれているだけだって事を知っている。俺は漫画やアニメの主人公みたいにひねくれている訳でも、クソボケな訳でもない。至って普通の人間だ、そのくらい分かっている。でも...分かっていても納得できないのだ。後悔だけが俺の体を...■を蝕んでいく。こんなのもう耐えられない。だから...。


「君のお父さんを()()()()()()()()()()んだよ。」


「...は?」


同じことを...いや、同じ意味に聞こえる事を言われる。しかし、その言い方にはどこか引っかかりがあった。それはまるで...


「君のお父さんは君に殺されたんじゃない、君じゃない誰かに殺されたんだよ。」


聞いた言葉が信じられない、じゃあなんで?どうやって?何がどうして他殺になったんだ?そんな疑問を頭の中で巡らせていると、彼女は答える。


「全能神だよ。彼が君のお父さんを殺した。実に惨い事をするよね。」


「...は?」


今日何回目の「は?」だろうか、そろそろ俺も反応に疲れて来た。こいつは何を言っているんだ?神様?全能神って言ったか?そんなやつが俺のお父さんを殺した?なぜ?


「選別だよ、全能神は増えすぎた人類を減らして、次のステップへ進める為に選別しているんだよ。本当に全能神とは名ばかりのバカな事をするよね、呆れちゃう。」


彼女はため息を零し、いかにも残念と言った表情で空を見上げる。そして言葉を続ける。


「最近は特に多くなってきたね。地震、異常気象、不自然な交通事故、どれもあの全能神の選別をうけたせいだよ。君も目の前で見て違和感を感じなかったかい?」


「...いわ...かん...」


確かに違和感はあった。父が駅のホームから飛び出そうとしているのに、周りの人たちはおかしな程スマホに目を奪われていた。それが違和感だとするならば...。


「そう、あの時周りの人たちは全能神の影響を受けていた。だからだれも止めようとしなかったし、出来なかった。でも君だけは違う。無意識だろうが、全能神の影響を受けないように自分の身に結界を張っていた。だからあの時、あの場で君だけが正気だったんだよ。」


でも、だとしても...だ。


「仮に俺だけ影響を受けていなかったとしても父を殺したのには変わりはないだろ。あの時、俺だけが止めれたなら...止めれたなら尚更俺が殺したようなもんじゃねぇか!」


叫ぶように彼女に言う、しかし彼女は何とも思っていないような表情で、言葉を続ける。


「確かに、君が止められたかもしれない。でも全能神はしつこくてね、選別で排除すると決めた人は絶対に排除しようとするんだよ。」


「じゃあなんだ、お父さんは死ぬしかなかったってのか?」


そう言葉を返すと彼女は不気味な笑みを浮かべながら答える。


「そうとも。」


その言葉に俺は言葉を失った。いや、正確には言葉が出てこなかった。そして俺の中で感じたことのない強い感情が湧き上がってくる。それはとても大きく、そしてどす黒い感情



『復讐心』



この感情はこう呼ぶんだろう。自分の中でこの感情に整理を付けていると、彼女は言葉を発した。


「君には三つ選択肢がある。一つ:普通の人としてこれからも生活していくか 二つ:今ここで死ぬか 三つ:全能神への復讐を誓うか 君はどれを選ぶ?」


そんなのもう決まっている。不思議と笑みが零れた、きっとこの時の俺の顔は相当なものだったのだろう。そんな顔を見て、彼女は笑みを浮かべた。


「おや、選択肢を与える必要も無かったね。では私と契約をしよう、伊禮宮(いれみや)陽輝くん。私と契約する事で君の復讐劇は始まりを告げる。この道を歩む覚悟があるなら手を取り給え。」


そう言って彼女は手を差し伸べる。俺は迷うことなく彼女の手を取る。すると彼女は僕の手を引き、顔面を近づける。瞬間、彼女の唇と俺の唇が触れ合った。唐突の事に困惑していると、突然右手の甲に紋章が現れる。そして笑みを浮かべた彼女は言葉を発した。


「私は元天使序列(エンジェルナンバーズ)第一位、ルシファー。そして今は堕天し、悪魔に成り代わった存在、サタンだ。よろしく頼むよ、旦那様。」


突然の彼女の行動に驚きを隠せずに茫然としていると、彼女はまた笑みを浮かべた。


「なんだ、初々しいじゃないか旦那様。これから幾度となく交わす唇だ、そんなに照れなくても大丈夫だよ。」


「契約ってそういう事か...。」


そうして俺の復讐と愛の物語が始まるのであった。

という訳で序章(プロローグ)です。

天啓が降りて間もないので、まだプロットが完璧に固まっておりません!!固まり次第続きを書いていこうと思っているので、気長にお待ちください。m(_ _"m)

駄文かもしれませんがよろしくお願いします!

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