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レナルド王子に毒がもられる事件が起きて1日が経過した。
調査書を持って考え込みながら廊下を歩く私に、隣にいたローベルトが突然、こう言った。
「いつまで続けるつもりだ」
「もちろん犯人がわかるまでです」
「こんなことを続けていても意味がないムダだ。レナルド王子も犯人を見つけ出す必要はないとおっしゃっていた」
「犯人を見つけないと第11騎士団のメンツに関わります。行きましょう」
「待てッ!」
ローベルトは私の行く手を塞ぐように手を壁に叩きつけて顔をグッと近づける。
「ムダだと言っているんだ」
「だったら花をどこに捨てたか教えてください」
「⁉︎」
「体を使う仕事ならやると言う3人にいつまで花を探させるつもりですか」
「いつのまにそんなことを命じていたんだ」
「私、マスターですから」
***
夜になりひとりで歩けるようになるまで回復したレナルド王子はベランダに出て星を眺めていた。
「ところで用事ってのはなんだい? ラニヤ」
「殿下に毒をもった犯人がわかりました」
「ハハハ、まだ探していたのかい」
「はい。犯人は“ナタリー様”ですね」
「⋯⋯」
王子の顔から貼りついたような笑顔が消える。
「お屋敷の花壇に植え直されていた白い花、ホワイトリリカをようやく見つけました。
とても甘い香りがしますが毒なんですってね」
「⋯⋯」
こんな険しい表情の王子の顔は初めて見た。
「殿下のお部屋に入ったときとても甘い匂いがしたので気になっていました。
そして花が飾られていない花瓶。はじめはこの花が飾られていたんではないですか?」
「覚えがないね」
「ナタリー様がメイドに飾るように命じていたのをそのメイドから証言が取れています」
「⋯⋯」
「お部屋に入り、倒れているあなたを見つけてパニックになっているすぐ側でローベルトは
窓を開けて空気を入れ替えてその窓からホワイトリリカを投げ捨てていた。あとは花の中に紛れ込ませ見つからないようにしていた」
「ローベルトは見事な手際だったようだね。だけどどうしてローベルトを疑わなかった」
「殿下が仲間と親睦を深めろとおっしゃられたからです。なのに私だけ仲間外れなんてズルいじゃないですか」
「それはどう言う意味だい?」
「絶対に第11騎士団のメンバーは犯人じゃないと位置付けながら考えるようにしました。
するとおのずとナタリー様が犯人としか考えられなくなりました。だけど殿下たちはそれをすでに知っていた」
「⋯⋯」
「騎士は花草の効能に詳しい。湖のほとりでホワイトリリカを摘んでいるのを目撃していた第11騎士団のメンバーたちは
毒とは知らずホワイトリリカを摘んでいるかもしれないナタリー様の気分を害さないために各々、工作をはじめた。
ハントは殿下にホワイトリリカを捨てるように進言した。ティムは替え玉の花を用意した。ローベルトは万が一の場合、自分に疑いが向くような挙動をとった。
しかし、殿下はそれをすべて拒否してナタリー様からホワイトリリカを受け取った。なぜですか?」
「ナタリーにはね。何度も命を狙われているんだ」
「ではナタリー様はやはり毒と知ってホワイトリリカを」
「ナタリーはね。血が繋がっているがゆえに僕と結ばれることができない現世ならと
僕を殺して自分も死ぬ。心中を望んでいるんだ。だけど僕はこの世でやり残したことがいっぱいあるから
彼女の希望に沿ってあげることはできない」
「だけどホワイトリリカを受け取った。すべては貴族たちに存在感を示すためですよね」
「そこまでわかっていたか」
「あの場におりましたから。荒唐無稽なことを発言する第二王子に対して病症をおしてまで諌める第一王子。
まるで殿下だけが得するように設けられたステージでした」
「やはりできすぎていたか。そうだよ。貴族たちに僕という存在を示すためにナタリーの気持ちを利用させてもらった」
「ホワイトリリカが弱い毒とはいえ無茶がすぎます」
「少々、体をはりすぎたと反省しているよ。だけどよく僕の言いつけを守ったね。
彼らと親睦を深めること⋯⋯君はもれっきとした第11騎士団のマスターだ。誇っていい」
「いいえ。まだ自覚が芽生えた程度です」
「ハハハ、そうか」
「はい!」
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第1章はここで完結。
第2章は準備でき次第公開していきます。




