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婚約破棄された令嬢はどうして腹黒王子様とイケメン騎士様たちに弄ばれてしまうのか  作者: 悠木真帆


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サラサラとした金髪に碧い瞳の切れ長の目。

その美しい殿方の顔を感情に身を任せて私は大きく広げたその手のひらで叩いた。


パーティー会場に響いた乾いた音に周囲は騒然となる。


どうして私、ラニヤ・ヒュームがそのような暴挙に出たのか。

それは遡ること1ヶ月前のことだ。


王宮で文官を務める私は日々仕事に追われていた。


のちに公衆の面前で私に張り倒されることになる男は婚約者のライネル・フォートリル。


豊かで広大な領地を持つ侯爵家の長男で貧乏男爵家の令嬢である私にとってはもったいない殿方だった。


そんな彼を放っておくほどに私は忙しくしていた。


平積みになった書類の束を腕に抱えながら政府執務室と事務室の間の廊下を行ったり来たりを繰り返す。

なかなかの重労働。


そんな私に室長が椅子に座って悠長に新聞を読みながら新たな仕事の指示を出してきた。


「ラニヤ君。来月、王宮で第一王子の誕生日パーティーが行われることになったんだ。

その準備をよろしく」


「は? そんなの外交官の仕事じゃないですか!どうして文官の私が」


「外交部は招待客の案内からアテンドまで。会場の準備から料理の手配、王族方の衣装の用意は我々だよ。

あと会場を盛り上げる楽団の手配も忘れずに」


「通常の業務はどうなります?」


「もちろん通常通りだよ」


室長の執務机を叩いて迫る。


「も・ち・ろ・ん。室長も手伝ってくれるんですよね」


「どうして僕が」


「どうしてって、そのたるんだお腹を引っ込める努力をしてくださいって言ってるんです」


鬼気迫る形相をした顔を室長にグッと寄せる。


「ひッ!」


その甲斐もあってか宰相の議会答弁書の作成を室長に押し付けてパーティーの準備に取り掛かった。


まずは調理場から。


「第一王子は白身魚が苦手だからメニューから避けて。第二王子は辛いものが苦手だからそれも」


シェフたちを集めて王族方の好みを共有。


ひとりのシェフが手を挙げる。


「隣国では食べてはいけない食材があると聞いた。調べてもらえますか」


「わかりました。調べておきます」


1日目でノートはメモでびっしりとなった。


次は衣装部だ。


衣装担当の女性と綿密に打ち合わせる。

「王妃と王女様はあまり派手なお色のドレスは好まないので注意して」


「はい」


「アクセサリーはどうしますか」


「真珠のネックレス。それとティアラだけはマストだから」


「はい」


「それと王女様、最近、体型の変化にナーバスだから。

身体のラインが目立たないように工夫してあげて」


「おまかせください」


そう言って女性は、針を手に衣装に手を加える。


そして次は楽団だ。


しかし、マエストロが神妙な顔で頭を抱える。


「シンバルが辞めた?」


「新しいシンバルが見つかるまでは俺たちは演奏できない」


「上司なんですけどその辺で暇してる人をよく知っているんでやらせましょうか」


「シンバルを舐めるな!素人にできるわけない」


マエストロは鬼気迫る形相で私を怒鳴った。


「す、すみません」


(てか、そんなに大事⋯⋯)


後日、新しいシンバル担当が無事に見つかった。


様々なことがあり迎えたパーティー当日ーー


大勢の招待客がホールに続々と集まってくる。


招待客の中にはライネルの姿もある。


テーブルの上に並べられたグラスの数をかぞえながら最後まで入念なチェックを怠らない。


そんな私にかけられる声。


「ひさしぶりだな。ラニヤ」


「⁉︎ ライネル!」


振り返るとライネルの隣には見知らぬ女性が⋯⋯


「その人は誰?」


「誰って。ロザリーだ。俺の側で親身に世話をしてくれた女性だ」


ロザリーという女性は何かを訴えるかける目で私を見つめながらライネルの腕に抱きつく。


「ラニヤ。今日はお前に伝えることがあってやってきた」


ライネルが口にしようとする言葉はなんとなく予想がついた。


「ラニヤ。お前とは“婚約破棄”する」


婚約破棄⋯⋯その言葉に悲しみよりも悔しさよりも先に怒りがやってきた。


「な、なんで⋯⋯」


握りしめた拳が小刻みに震える。


「なんだ聞こえないぞ。ラニヤ、もっとはっきり言え」


楽団の演奏がちょうどピークに達するときだった。


鳴り響いたシンバルが合図となった。


「なんで今なのよ!このくそ忙しいときに」


そう言い放った瞬間、気づけば拳を大きく広げて彼の頬を強く叩いていた。


ライネルは美しい顔を酷く歪ませながら床の上に倒れた。


鈍い音に楽団の演奏がピタリと止まる。


そしてロザリーがあげた悲鳴に周囲が私たちのいざこざに気づいて場内が騒然となる。


王女様たちも怪訝そうな表情でこちらを見ている。


終わった⋯⋯今日まで準備してきたことがすべて台無しになった瞬間だ。


この日、私は文官をクビになり執務室を去ることになった。


しかし、私は気づいていなかった。


騒動の最中、私を見下ろし、子供のようにおもちゃを見つけてはしゃいでいる存在に。


ホールの2階部分から一部始終を見ていた第一王子の存在に。


「なんだか面白い子見つけちゃったな。これからが楽しみだ」










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