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聖女の仕事を奪っている、と言われ国外追放になった件  作者: 浦田 緋色 (ウラタ ヒイロ)


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リヴァイアサン退治と誤情報と、食べたかったものを諦めた話

俺は逃げ惑う人々の中をなんとか進み、とある建物の屋根へと登ることに成功した。

そこで見たのは、荒れ狂いながら海を泳ぎ、港町へ突進してくるリヴァイアサンの姿であった。

瘴気によって暴走状態となっているのだろう。

そんなリヴァイアサンに追従するように、瘴気もこちらへ迫ってきていた。


冒険者たちや、衛兵が迎え打とうとしているが。

おそらく無理だ。

通常なら、なんとかなったのだろう。

けれど、リヴァイアサンは瘴気によってパワーアップしているはずだ。


リヴァイアサンを倒したことはないけれど、それ以外の魔物ならある。

それも、瘴気でパワーアップした魔物を、俺は倒した事があった。

経験則からわかるのだ。

通常の方法では、おそらく効果がない。


緊急事態ということで、ラテマの聖女へ派遣要請が出ているだろうが。

聖女がこちらに着く頃には、遅すぎる。


気づくと体が動いていた。

荒れ狂うリヴァイアサンを見据える。

目視さえできていれば簡単だ。

魔法を展開、発動させる。


聖なる矢(ホーリーアロー)!!」


リヴァイアサンの巨躯を貫くため、魔力をこれでもかと込めた超巨大な【聖なる矢】を放つ。

初歩の初歩である対魔物用魔法の一つだが。

これで十分だった。

俺の放った【聖なる矢(ホーリーアロー)】に貫かれ、なんなら沖へとその体は押し戻され、沈んでいった。


しかし、瘴気の進行は止まらなかった。

けれど、これもやはり見えているならどうということはない。

俺は浄化魔法を展開し、見えている瘴気をすべて浄化した。

海に閃光がはしり、すぐに消える。


やがて、海は静かになった。


けれど、まだ終わらない。

港町全体にエリアヒールを展開、発動する。

これで、怪我人はなんとかなったはずである。

念の為、歩き回り死者がいないか確認する。

あれだけの騒ぎだったのに、奇跡的に死者はゼロだった。


――――――――




――――




――……



えらいこっちゃ。

俺はガクブルと、その新聞記事を読んだ。

宿にあった朝刊である。

だれでも好きに読めるよう、何部か同じものを宿はとっているようだ。


昨日のリヴァイアサン退治が、大見出しとなって報道されていた。

記者の推測もあり、昨日のことはお忍びで観光に訪れていた聖女がこっそり対処した、というようなことが書かれている。


ほかの客たちの口に上る話題も、やはり昨日のことだ。

町民と、冒険者と、あと衛兵達はその聖女を見つけ出そうと言う方向になっているらしい。


やめてやめてやめて。

ほんと、やめて。


そんなことになって、もしもリヴァイアサンを倒したり、瘴気を浄化したのが自分だなんてバレたら……。

いや、バレるまではいい。

俺の職業がバレたりしたら……。

職場で、仕事をしてきた結果がどうであったか思い出して、喉がひゅっとなる。

袋叩きにあうに違いない。

今度こそ殺されるかもしれない。

聖王国では、俺に利用価値有りと判断されていたからそうなっていなかっただけだ。

事実、同僚や上司の第二王子は、失敗したら死刑だなんだと言っていた。

本気だったのは、今回の追放で実感した。

追放と死刑は同列だからだ。

少なくとも、聖王国ではそうだった。

死刑に処されるのは、殺人など凶悪犯罪をおかした者とされている。

俺は殺人をしていなかったから、処刑台に上がらずに済んだだけだ。


刺身定食は惜しいが、さっさとここから離れた方が言いだろう。

港町はほかにもあるのだ。


せめて【いくら丼】なるものくらい食べたかったなぁ。


※※※


数時間の差だった。

シルが港町を出て数時間後に、ノア達一行はラテマに入国した。

そして、港町での騒動を知ったのだった。

リヴァイアサンを倒し、人々を癒したのはお忍びで観光に来ていた聖女だと専らの噂である。

しかし、その聖女がどこの国の聖女なのかはわかっていなかった。


もしかしたら、ラテマ所属の聖女かともノアは考えた。

しかし、


「いえ、その、たまたまその時は国内にて聖女たちは出払っておりまして」


そう答えたのは、ラテマの国王であった。

ノアの打診による会議にての発言であった。

ラテマとしても、リヴァイアサンを一撃で倒せるような聖女はいないらしい。

いたら是非ともラテマに来ていただきたい、と冗談めかして国王は宣った。


肝心の聖女の派遣については、断られてしまった。

やはり、自国の聖女を貸し出す、というのに抵抗があるのだろう。

気持ちはわかる。

だからこそ、常識の範囲内でねばって諦めた。


落胆続きである。

しかし、そんな落胆が一転する事態が起こる。

翌日のことだ。

リヴァイアサンが出たのとはまた別の港町に瘴気が発生、それに吸い寄せられて竜の群れが大量に流れ込んできたということだ。


すぐに聖女と護衛騎士団が派遣された。

なにか出来ることを、とノア達もこれに同行したのだが。

彼らが到着する頃には、全てが終わっていた。

竜の群れは全滅し、出ていた死傷者は全員蘇生、もしくは全回復されていた。


なにがあったのか、派遣された聖女、騎士団、そしてノアが住民を質問攻めにした。

わかったのは、突如として天から光り輝く矢が降り注ぎ竜の群れを全滅させたということ。

そして、一度に数百人ちかい死者が蘇生させられ、重軽傷者の傷が癒えたということだった。


これを成したのは聖女であることは疑いようもない。


それも歴代最高と称されたエリスよりも、その力量は上だと推察される。

しかし、わからない。


「いったいどこの国の聖女だ??」


そんな聖女がいれば、絶対に耳に入っているはずだ。

けれど、歴代最高の聖女エリスよりも実力が上の聖女の話など聞いたことがない。


「殿下、もしかしてその聖女様はまだ近くにおられるのでは?」


部下の一人が進言する。

たしかに、それは考えられる。

この騒動で辻馬車の運行もストップしている。

徒歩でここを離れていたとしても、そう遠くには行っていないはずだ。


そう信じて聞き込みをした結果、幼い子供から興味深い証言がもたらされた。


「おれみたよ!!

神官様の格好をした兄ちゃんが竜をたおしたし、母ちゃん達を治してくれたんだ!

嘘じゃないよ!!」


幸い、その子供から話を聞けたのはノア一行だけであった。

小さな糸ではあるが、ノア一行はこの証言を信じて再度聞き込みをおこなった。

すると、神官の格好をした少年を見かけたという者たちが一定数いることがわかった。

その足取りを追っていると、決定的な場面に出くわした。


港町から出て少し歩いた先の森の中で、おそらく今回の被害者らしき死体の山が出来ていた。

少年神官は、それらの死体へ手をかざすと魔法を展開させた。

ノアにはすぐにわかった。

少年が使ったのは、本来なら聖女にしか使えない蘇生魔法であった。


そして、その着ているローブこそ違うものの、その後ろ姿はノア一行を助けた人物と同じにみえた。


「き、きみっ」


驚かせないよう、慎重に声をかけたつもりだった。

しかし、振り向いた少年の顔は真っ青だった。

少年は即座にポーションを足元に置くと、魔法で体を強化し走って逃げようとする。


「捕まえます」


静かに右腕たる部下が言って、少年が逃げるより早く動き、少々手荒ではあるが、その身体を拘束した。


「ちょ、なに?!!!」


少年がジタバタともがく。

その少年へ、ノアは改めて声をかけた。


「落ち着いて、話が聞きたいんだ。

そしたら、このことは黙っててあげる」


少年は蘇生魔法が使えることを隠したがっている。

それはすぐにわかった。

だからこその提案であった。

しかし、少年からは出たのは、


「ご、ごめんなさい、出来心だったんです!

許してください!ごめんなさい!!」


観念したかのような、謝罪の言葉であった。

これにはさすがにノアも、部下達も反応に困ってしまった。


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