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聖女の仕事を奪っている、と言われ国外追放になった件  作者: 浦田 緋色 (ウラタ ヒイロ)


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人探し

会議が終わり、派遣する聖女の件についてはこれから聖王国側で審議に入る。

前向きに検討してもらえることに安堵しつつ、ノアは自分達を助けてくれた神官について考えた。

蘇生魔法を使える神官、その話題を出した時。

あきらかに場の空気が変わった。


つついてはいけないことだったらしい。


わかったことは、あの場のもの達全員に、その神官について心当たりがある、ということだ。

よくよく思い出してみれば、ローブにあった国の紋章に大きなバツが描かれていた。

訳ありの人物なのだろうことに、今更ながらに気づく。

身につけている国章、それに大きなバツマークがあるのは国外追放された印だ。

かつて聖王国では、追放されたものである証明として、刺青を施されていたが、現代では禁止されている。


しかし、だとするならあの人物はいったい何をしたのだろうか?


仮に国外追放にされるような極悪人ならば、ノア達を蘇生させることなどしないはずだ。

金目のものだけ持っていけばいいのだ。

しかし、なにも盗まれてはいなかった。


「……調べるか」


聖王国側からの返答まで、時間がかかるのはわかりきっている。

前向きに検討するとは言っていたが、それを信じきるわけにもいかない。


国外追放にされたものならば、話題にくらいなっているだろう。

すぐ調べはつくはずだ。

そんな訳ありの人物ですら、勧誘したいほどにアーヴィス国の実情は苦しいものになっている。


国を魔物から守る結界。

聖女の急逝によって、その維持がいずれ難しくなるのら明白だ。

はやく聖女を国へ招かなければならないのだ。


そして調べてわかったことは、直近で国外追放になった人物などいないということだった。


「どういうことだ?」


ノア含め、部下達も首を傾げる。

国外追放になっているとはいえ、自分たちの命の恩人だ。

こんな状況ではあるが、礼を言いたいし、恩を返したいと考えていたのである。

しかし結果は、なにもわからなかった。

ただ、別方向から収穫があった。

かつて聖王国には、歴代最高と称された聖女がいた。

聖女エリス。

すでに高齢で亡くなっているが、彼女は晩年一人の子供を拾い、弟子にしたらしい。

その弟子の行方について調べようとしたが、しかし、記録は全て黒塗りにされ、あるいはその記録が記載された項目だけ破かれていた。

国として秘匿したいと考えたのか、それともほかに理由があったのか。

とにかく、弟子の行方はようとしてしれない。


「ダメか……」


落胆は続くもので、聖王国側からも聖女の派遣は出来ないと返答されてしまった。

しかし、諦める訳にもいかないのだ。

粘るだけねばってみたが、やはり派遣はできないの一点張りだった。

この国の第二王子が代表として出てきて、その理由をつらつらと述べられた。

納得のいく理由ではあった。

しかし、同盟国同士だというのに、という気持ちも湧いてしまう。

それを押し込んで、ノアは動く。

他の国にも打診はしてある。

ノア達は、直ぐに次の国へと旅立つことにした。


かならず自分たちを助けてくれる聖女はいる。


そう信じるしかないのだ。


※※※


「どっちいこうかなぁ」


俺は目の前の道を見た。

道が二つにわかれている。

片方は港町がある国へ。

もう片方は内陸の国へ続く道だ。

たまに騎士たちが家族旅行で、港町へ行ったことがあると話していたことを思い出す。

会話に参加したことはない。

空気にされていたからだ。

それでも業務連絡の時だけは、話を聞いてもらえていたからまだ良かった。

それですら無視されていたら、仕事が滞って仕方なかったことだろう。


「魚料理が美味しいんだっけ」


この5年間、携帯食料と自家製ポーションを片手に仕事をしてきた。

料理、と呼べるものを食べている暇が無いほどに忙しかったし。

食べようとすると決まって仕事が入った。

だからゆっくり食事をする、というのもなかった。

ばあちゃんと暮らしていた頃のことを思い出す。

川魚を焼いたヤツ、美味しかったなぁ。

その記憶に刺激され、俺の足は港町がある国へ向く。


途中途中で、行商人たちとすれ違った。

これ幸いに持っているもの、作ったものを金や携帯食料に変えた。

その際、ローブについて質問されたので、


「古着屋で買ったんです。

安かったんで。

防寒にいいんですよ、このローブ」


そう誤魔化した。

まさか本当のことを言う訳にもいかない。

国章にバツマークは、追放者の証だ。

まぎらわしいな、と行商人達に苦笑された。

本当のところどう思ったのかは知らない。

でも、世の中ではこんな子供が国外追放になるような大罪を犯すということは考えられないことらしい。

それに救われた。


さて、次の国へ向かっている途中。

冒険者たちが乗る馬車に遭遇した。

街道脇に停車していたのだ。

討伐依頼に行くのか、はたまたその帰りか。

俺は馬車の横を通り過ぎようとしたのだが、


「お、おい、あんた!!」


焦った声に呼び止められる。

冒険者である。


「はい?」


「な、なぁ、あんた神官だろ?!

治癒魔法をおねがいできないか?

もしくはポーションを持ってたら分けて欲しいんだ!」


必死すぎるな。


「怪我人ですか?」


冒険者が通りすがっただけの神官に声をかけるなど、余程のことだ。

冒険者について詳しくは知らないが、結界を張り直す仕事中にこういうことには度々遭遇していた。

だから、だいたいの事情は声をかけてきた冒険者の態度だけで察することができた。


俺は招かれるまま、馬車へ乗り込む。

血の匂いだ。

国を出てよく嗅ぐ匂いである。

馬車の中には腹を引き裂かれ、そこだけ欠けつつもなんとか生きている人間が寝かされていた。

その人間を囲み、絶望しきった顔をしている仲間たち。


怪我人の状態は悪い。

虫の息だ。

いや、息だった。

俺が馬車に乗り込むのと、怪我人が息を引き取るのは同時だった。

この冒険者パーティの中に治癒、回復魔法を使えるものはいないのだろう。

だから、俺をわざわざ呼び止めた。


「いやぁ!!」


冒険者の1人、女性が悲痛な声をあげる。

俺を呼び止めた冒険者が、


「おそかったか」


と声を漏らした。

俺は、怪我人へ近づき膝を着き、手をかざす。


「お、おい、もういいんだ。

すまなかったな、呼び止めて」


背後でそんな声が聞こえた。

けれど反応している時間が無駄なので、無視する。

俺は蘇生魔法を無詠唱で展開、発動させた。

この方が早いからだ。


魔法陣が展開し、怪我人が蘇生魔法特有の真っ白な光に包まれる。


やがて、光が収まる。

怪我は消え、おだやかな呼吸をする元怪我人がそこにいた。


「いまのって」


呆然と、冒険者の一人がなにか言おうとする。

やってしまった。

問い詰められたら、いや、本当のことを知ったらどんな事になるかわかっている。

だから、俺はその言葉を遮る。


「治癒魔法ですよ!!

これは治癒魔法です!!」


そこで、俺を呼び止めた冒険者がローブのことに気づいたらしい。

少し驚いた気配が伝わってくる。

石を投げられるのは平気だ。

どんな言葉を向けられたって、もう慣れている。

でも、めんどくさい事にはかわりない。

だから、早くここから離れよう。

そう考えて動こうとした時だった。

投げられた言葉は予想と違うものだった。


「そうだな!

治癒魔法だ!!

よかったな!凄腕治癒魔法使いが通りかかってくれて!!」


そう言ってくれた。

話を合わせてくれるらしい。

訳ありと察してくれたのだ。


「それじゃ、俺はこれで。

あ、念の為ポーション置いていきますね。

もし、良かったらつかってください」


馬車を降りて、とりあえずの目的地へ向かおうとする。

しかし、ストップをかけられた。


「ま、待て待て待て!!

なにかお礼をさせてくれ!!

向かってるのは、ラテマか??」


ラテマというのは、港町がある国の名だ。


「ち、ちがいます!!」


思わず否定してしまった。

しかし、相手は俺の言葉が聞こえていなかったかのように続けた。


「それなら送っていく。

俺たちもそこに帰るところなんだ」


歩いていた方向で目的地はバレバレだった。


歩くのも嫌いじゃないが、厚意として結局俺はこの申し出を受けることにしたのだった。


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