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聖女の仕事を奪っている、と言われ国外追放になった件  作者: 浦田 緋色 (ウラタ ヒイロ)


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人違いされてダンジョン攻略という、新人研修に参加した話1

どうして、なぜ、こんなことに。


「新人神官さんって、ほんとシル様にそっくりですねー」


ニコニコと言ってきたのは、とある冒険者パーティのリーダーである。


「あ、えっと、はい」


その様子をみていたゴツイ戦士さんが口を開く。


「暗いやつだなー。

英雄のそっくりさん?」


「あ、ははははは、よく言われます」


適当に話を合わす。

俺はなぜか、彼らのパーティに入る予定だった神官と勘違いされたのだ。

そして、一緒にクエストに向かっているのだ。

いや、うん、クエストは受ける予定だったから別にいいんだけど。


「そりゃ、よくいわれるだろうねぇ。

本物の瓜二つだもん」


と続けたのは魔法使いさんだった。

何故か笑いを堪えている。

そんなに面白い顔をしているだろうか、俺。


それにしても、どうしよう。

あとでフリージアさんに叱られる。

殿下とゴードンさんにも叱られる、かもしれない。


言い訳をするなら、ほんのちょっと興味がわいて冒険者ギルドに行きたい、といったのだ。

身分証を作った時に、一定期間内にクエストを受注しなければ無効になると聞いていたからだ。


「気にしなくていいと思うんですけど」


とフリージアさんは言ってくれたが、ちょっと冒険者として仕事をしてみたかったのだ。

もっと言うと、ダンジョンとやらに潜って見たかった。


あそこは、聖石の効果の範囲外、つまり結界内にあっても魔物は弱体化しないし、瘴気が満ちている。

なぜ、そんな構造なのか調べたかったのだ。

そう理由を説明すると、苦笑されてしまった。

そしてフリージアさんが同行するなら、ということでダンジョン関連のクエストを受注する許可を得られたのだった。


そうして冒険者ギルドに来たはいいものの、フリージアさんがトイレに行ってしまった。

そのほんのちょっとの間に、初心者向けダンジョンのクエストを探していたところを勘違いされてしまったのだ。

否定しようとしたのだけど、ズルズルと連行され、今に至るというわけだ。


冒険者ギルドでもジロジロ見られていたけど、噂の英雄のそっくりさんと思われていたらしい。

まさか、こんなところに本人がいるとは思われなかったということだろう。

今にして思えば、あちこちから『すげー似てる』とヒソヒソいわれていた。


新聞等で、俺の似顔絵が出回っているとの事。


それはそれとして、本来の新人神官さんも困っているだろうなぁ。

まさか取り違えられるとは思っていなかったし。


これ、この人達に本当のことを伝えても信じてもらえるかな。

信じてもらえたとして、その後がものすごくめんどくさいことになりそう。


話を聞いてる限り、本来の新人神官さんも研修目的で今回はこのパーティに参加しているらしい。

どうしよう、新人研修の機会を奪ってしまった。


とりあえず……このままでいっか。

うん。

この人達にはあとで本当のことを言って、謝ろう。

フリージアさんにも謝ろう。


「おや、急に笑ってどうした?」


戦士さんが訝しむ。


「いえ、ダンジョン探索たのしみだなぁって、思いまして」


見るだけでもわかることは多い。

それに、いま大陸中で起きつつある異常事態。

それはダンジョンも同じなのか知りたかった。


※※※


一方その頃、アーヴィス国の冒険者ギルドでは、


「置いていかれ、た??」


途方に暮れる新人神官の少女冒険者と、


「シル様~??

シル様どこですかぁ??

シル様もご不浄にでも行ったんでしょうか??」


主人を捜すフリージアの姿があった。


※※※


ダンジョンに着くまでに色々と確認された。

冒険者としてどこまでの知識があるのか、ダンジョンについてどこまでしっているのか。

嘘をつく理由も無いし、わざわざ確認するということは本来の新人神官の情報も最小限なのだろう。


「そう、ですね。

うーん、一般人程度の知識しかないです。

塔や洞窟、はたまた宮殿のような形をした様々な建物があり。

中はどうなっているのか、広大。

ダンジョンによっては、空や砂漠、草原、海が広がってて。

これまたダンジョンによって異なりますが、何十回層になっているとか」


「そうそう」


と、パーティリーダーさんが言ったあと、ゴツイ戦士さんが、


「思ったより優秀だな。

言語化できないやつもいるんだが」


と、褒めてくれた。

続いて、魔法使いさんが、


「では問題!」


と、小さな子に出すクイズのノリで出題してきた。


「ダンジョンではさまざまなアイテムがてにはいりますが。

どうやって手にいれるのでしょうか??」


これも一般常識だ。

魔法使いさんは、


「チッチッチッチ」


と時間のカウントを始めた。

俺は楽しくなってきて、勢いよく手を挙げ答える。


「はい!!

魔物を倒すとダンジョンの外と違って、魔物の死体は光の粒子となって消えます!

その時に残されることがあります!

あとあと、何故か宝箱がダンジョンのあちこちに置いてあって、そこに入ってます!

そしてフロアボスと呼ばれる、物凄く強くてヤバい魔物を倒すと確実にアイテムが残されます。

そうやって手に入れます!」


「はい!大正解!」


ここで戦士さんが補足する。


「ただし、宝箱に擬態したミミックって魔物がいるから、開ける時は注意だ」


なるほど。


「それで新人神官さん」


と、パーティリーダーさんが言ってくる。

小さな体に双剣を装備している、少女のように見えるが実年齢は二十代後半らしい。


「はい?」


今度はどの知識の確認だろう。


「そろそろ名前教えてほしいなぁ」


そういえば道すがら、パーティメンバーさん達の紹介はあった。

けれどこちらの紹介をする前に、先程のクイズが始まってしまったのだった。


「あ、あー、えと」


どうしよう、下手に嘘をつくのもなぁ。

いいや正直に言おう。


「実に言いにくいのですが。

シルっていうんです」


リーダーさん、戦士さん、魔法使いさんがシーンっとなる。

それから、


「たしかに、それは言いにくいねー」


「英雄さんと同じ名前かぁ。

偽名疑われなかったか?」


「あのシル様と同じ名前かぁ」


とまさか本人がここにいるとは思っていないので、そう反応された。


「顔もそっくり、名前も同じね。

登録のときは苦労しなかった?」


楽しそうに魔法使いさんが聞いてくる。


「いえ、その、まだ有名になる前でしたし。

親切な冒険者さんが見かねて登録の手伝いをしてくれましたので」


嘘では無い。

けっして、嘘では無い。


「まさか本人だったりして」


と、さらに魔法使いさんが冗談めかして言ってくる。

それを戦士さんが否定した。


「おいおい、あの方がここにいるわけないだろ。

スタンピードの時にそのお命を掛けてまで国を救ってくれたそうじゃないか。

そのせいで魔力欠乏症になって今でも伏せっておられるって話だぞ」


「早く元気になってほしいよねー」


パーティリーダーさんもそんなことを口にする。


「あ、はははは、そうですね」


なんかすみません。

ここで元気にしててすみません。


「さて、それじゃ。

雑談はここまでだ」


パーティリーダーさんの足が止まる。

他のメンバーさん達も同時に止まる。

俺もそれに倣って足を止めた。

鬱蒼とした森の中を抜け、たどり着いた先には塔の形をしたダンジョンがそびえ立っていた。




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― 新着の感想 ―
多分魔法使いは気付いてるんだろうけど、笑ってる場合じゃないんだよなぁ 国家の重要人物を危険に晒したとか、消されてもおかしくない
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