表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/16

 王都の関所を抜け、防壁から騎馬を走らせて一時間ほど離れた位置の、魔物多発区域にて──二人の子どもが、サンドワームに背を向けて走っていた。


 サンドワームは三匹。うち一匹は親玉なのだろう、他二匹よりも二回り以上も大きい。

 どす黒く脈打つ胴体を振り回すようにうねらせながら、子ども──歳の頃は14かそこらの二名の小柄な少女を驚異的なスピードで追っている。


「班長!あれは助けに行かないと!」

「……あぁ、君は見習い上がりの新人従騎士か。その心配はないよ、見ていてごらん」


────

───

──


「ベル!まだ釣れそうなミミズはいる!?」


 透き通った紫の髪をツインテールにしている少女が、並走しながら笑顔で問う。

 私は足元の索敵魔法陣を素早く広げ、サンドワームを探す。左斜め前方に潜んでいるのを確認し、走りながら土属性の魔術式を指先で空中に書いて構築して……飛ばした。地面を爆発させる魔術式だ。


 どおおおぉぉん!

 

 盛大に土埃が噴出し、中からワンドワームがキシャアア!と怒り声を上げた。2人で走り回りながら、順に索敵しまくった。


「これで全部!」


 そう返答をすると、紫髪ツインテ少女――オルンは、走りながら口に入ってしまったらしい髪束をペッ、と吐き出してにやりと笑った。


「おっけぃ!ようやく反撃開始だね!」


 オルンはそう言い切って、跳躍に側転、転回なども混じえて疾走し、サンドワームの群衆から瞬く間に距離を取る。彼女は天性の武術士だ。

 対する私は魔術師タイプのため、短距離の転移魔方陣を構築してオルンの側に着地した。


 サンドワームの群衆は全部で五匹。

 全体を見据えながら私はしゃがみ、地表に攻撃用の魔法陣を展開、敵の数の分を複製……しようとしてオルンが言う。


「3つにして。中央とその隣の一番でかいのは私がやる」

「だと思った」


 ふふっ、と苦笑をしながら私は答えた。彼女は天性の武術士で、同時にとてつもない自信家だった。


 進行スピードに差はあるものの、魔法陣を3つに絞って複製。向かって一番左と左から二番目の個体、一番右の個体に飛ばす。荒野の大地を滑るように光が迸り、追随してオルンも飛び出す。


 魔法陣が魔物を捉えたと同時に、発動。地面から氷の柱を発生させるものだ。

 ぷしゅっぷしゅっ──とこちらが静かに且つ確実に仕留めている中、紫髪ツインテ少女は中央の個体を短刀2本でアクロバットよろしく切り上げ、致命傷を与えた頭部を踏み台に更に高く跳躍した。


 そして空中で、特大サイズのサンドワームを見据ええ、短刀の柄どうしを一直線に繋ぎ、ぽそっと何かを唱える。すると魔法陣と共に光の弓を出現し、輝く弦に触れると同時に光の矢が出現して――、


 しゅっ!


 オルンを飲み込もうと牙を見せていたその頭部のど真ん中を、彼女が放った矢が貫いた。強烈な閃光のそれは黒い胴体をも縦断し、地面に着弾。


 どおおおぉぉん!


 私に負けず劣らず盛大に発生した土煙の奥でドスン、と巨体の息絶える音が、地面と空気を震わせた。


────

───

──


「なんすか、あのふたり……サンドワームって通常個体でも一体につき1~2班が原則なのに」


 王都防壁外の初任務として、魔物多発区域を警邏していたチェスティーリージュ王国の新人騎士は、土埃が霞む中でハイタッチを交わす二人の少女に、開いた口が塞がらなかった。


「あのふたりは、王都で有名な狩人だよ。短剣で舞っていた少女は、君のひとつ上の位の下級騎士。茶髪の魔術師の少女は……王都民によると、どこかのお貴族様に隠されている子らしい」

「らしい、とは」

「本人も語らないそうだ。なんでも、家族の話題になると悲しそうな顔をするんだってさ」


 しんみりとした話題が、新人従騎士は好きではなかった。だから、次に気になった内容を班長に問うた。


「あの実力で下級騎士って……そんなに昇進って大変なんすか」

「ふふっ、あはははは!あの子はね、仕事をサボって茶髪のお友達と狩りをしているんだよ」

「はぁ!?仕事をサボって仕事って……」

「彼女にとって、あれは遊びらしいよ。だから騎士団でも特例で、アルバイト枠と同じ給与体制。一時間銅貨8枚。実力はあるけれど、サボリ魔だから昇進はできない」

「任務で討伐すれば、すごい実績なのに……」


 新人従騎士がぽつりとつぶやいたその内容に、班長は再びしんみりとして答える。


「“お友達と遊んでいる方が楽しいから!”って本人は言うんだけど内心はやっぱ……彼女を一人にしたくないんだと思うよ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ