40 ゲーム完成
ゆ「ゲーム、完成したよ!」
「最短でいつ会える?」
画面から高揚感が伝わって、嬉しくなる。
ユ「今、塾から出たところだけど、来れる?」
送ると、即座に返事が来て、すぐに見せたいという気持ちが伝わってくる。
ゆ「すぐに行くよ」
ユ「OK 待ってる」
靄がかかったように淡く光る街灯。
風が応援するかのように吹いて、ゆうやは現れた。
「速いね。こんなに寒い季節なのに、凄く暑そうw」
はにかんで笑う。
純粋に嬉しそうな顔に、私まで嬉しくなる。
「完成したから、早く見せたくて」
「そうだね。じゃあ、早速行こうか」
夜の澄んだ冷たい空気を吸い込んで、白い息を吐く。
「でも、長くいられるところがいいし、どこかあるかな」
「前のレストランは、さすがに申し訳ないよね」
「俺の家、行っても多分問題ないと思う」
小さく手を挙げて、恐る恐る言う。
「じゃあ、そうしようか。一応、親にラインしといてね」
スマホを慣れない様子で人差し指で丁寧にタップしていく。
「ラインしたよ」
「じゃあ、行こうか」
夜の静かな空気が私たちを覆っていく。
私達の自由を乱すものはもう何もない。
「遅い時間にすみません。お邪魔します」
戸を開けて、家の中に入る。
「先日はごめんなさいね。いいおもてなしはできないけど、ゆっくりしてってね」
「いえ。ありがとうございます」
「わざわざパソコン持ってきた意味無くなっちゃったね」
笑って、ゆうやの隣に座り込む。
大きめのパソコンが机にセッティングされていて、その隣にレストランの時にも使ったタブレットが置かれている。
少し小汚いこ雰囲気ではあるものの、ゲーム機器が揃っていて、ゆうやらしい部屋。
「早速、ゲーム見せてよ」
「うん」
リュックからパソコンを取り出して開き、マウスを叩かれて、画面が切り替わっていく。
「エンターキー押したら、始まるよ」
小刻みに震える手で、ゆうやがエンターキーを押した。
画面が暗転して、重厚なBGMが流れ始める。
まるで映画の予告編のような緊張感に、心臓が飛び跳ねる。
Playボタンを押して、キャラクターが現れた。
その瞬間、息を呑んだ。
滑らかな動き、細かく作り込まれた背景。
「凄いじゃん。これヤバいって」
言葉にするよりも先に胸が熱くなる。
隣で笑う湯谷の顔が誇らしげで、少し照れていて、でも確かに輝いている。
「ね、ゆうや。これ、応募してみない?」
学校で配られたコンテストのチラシを手渡す。
「ストーリー性重視で、AIイラストOKって書いてあるし、面白そうじゃない?」
チラシを熱心に見て、「これ、育成ゲームの製作者が主催だ」と子供みたいに無邪気に笑った顔で目を輝かせる。
「やってみる?」
「うん。やってみたい」
「じゃあ、このコンテストについて詳しく調べてみようか」
スマホを取り出して、「第13回中学生ゲームコンテスト」と検索をかける。
「紹介動画が必要みたい」
「せっかく応募するんだったら、最大限魅力伝えたいよね」
「魅力伝えるの得意だよ」
ニヒルな笑いを浮かべる。
「生徒会長って、そういう機会結構あるのか」
「あるよ。絶対正しくないだろってものを適当に利点だけをうまくいって、拍手貰ったこともあるからね」
胸を張って笑うと、「大変そう」としょげた顔。
「でも、このゲームは絶対いいものだから、本気でやるよ」
と笑い掛けた。
ゆうやのゲームに賭けた気持ちを人に伝えたい。
絶対に成功へと結びつかせたい。
ゆうやの努力が報われる瞬間を、この目で見届けたい。
そして、誰よりも誇らしくその背中を押してやりたい。
 




