04 優等生らしくいなければ
「ユズ。お願いがあるんだけどさ、この問題教えてくんない?」
昼休み、友人のなずなが私の机を覗き込んでいった。
「いいよ。どの問題?」
「数学のテスト、3時間目に返されたじゃん。解説ちゃんと聞いてたんだけどね、ちょっとよく分かんなくて」
言いながら、私の机の横に椅子をもってきて、座る。
「まずね、こことここを掛け算して」
「x2乗?」
「そうそう。そんでその後、後ろの数同士を足してそれにxをかけて、最後に後ろの2つをかける」
私の説明を聞きながら、テスト用紙に数字を書き込んでいく。
「なるほど。じゃあ、これはこう?」
「そうそう。正解」
「いやー、ホントユズって頭いいね。ありがと」
昼休み狩猟のチャイムが鳴って、なずなは自分の席に戻った。
5時間目の授業が始まって、優等生らしく挙手する。
「じゃあ、この問題白川さん」
「はい。細胞分裂です」
授業は淡々と進んでいき、終わりへと近づいて行った。
日直が忘れた黒板を消して、教室を出た。
人が嫌なことでも、積極的にやるのが優等生。
どうしても、心がぐらぐらして人の発言は表情に怖くなってしまう。
なにかしないと頭がボワって何かにのみこまれそうな感覚に駆られる。
その感覚は気持ち悪くて、だから動く。
思いやりだとか、いい子だとか言われるけれど、そういうんじゃない。
私のはただの自己中心的な行動だ。
心がぐらぐらしてしまう。
人が笑っているのを見て私が笑われていると思ってしまう。
人の目が私を睨んでいるように見えて、心はずっと浮き沈みを繰り返している。
知らぬ間に構成された人間関係を目の当たりにして、劣等感が心を渦巻いていく。