37 目指していいのかという怖さ
一昨日返ってきた模試を未だに開けられずにいた。
これが、もし合格圏に届いていなかったら、私は英知高校を諦めなくてはならない。
それが怖かった。
今まで、一生懸命にやってきたつもりではある。
ちゃんと、模試の結果も伸びていたし努力の成果も目に見えてきていた。
だけど、もしも合格圏に届いていなかったら、なんて思うと開ける決断ができなくて怖い。
ゆうやとのチャットを開いて、深呼吸を置いた。
今だけは、面倒臭い奴になってもいいから助け舟にさせて。
オンラインであることを祈って、送信ボタンを押す。
ユ「12月の最後の模試が返ってきた もし合格圏じゃなかったら、面倒臭いだろうけど、慰めて」
強がるのは得意だった。
中学受験で落ちた時だって、悔しかったけど泣かなかった。
それ以降も、誰の前でも泣かなかった。
泣いたら、気まずくなるのは分かるから。
イタイ奴になるだけで、本当の味方なんていやしない。
でも、ゆうやなら、そうはならないと思った。
励まし上手ではないけれど、一生懸命を馬鹿にはしない。
ゆ「うん。わかった」
その言葉が心強く、響く。
封筒を開けて、模試の結果を開いた。
鼓動が高鳴って、手が震えた。
偏差値、73。
高校の基準には1下回っているけれど、合格圏だ。
嬉しさと安心感が込み上げる。
ユ「ゆうや。合格圏、行ったよ」
喜びが溢れた。
英知高校を受けられる権利。
これなら、きっと母も認めてくれる。
ゆ「おめでとう」
短いけれど、温かいその一言に、心が華やいだ。
階段を降りて、リビングへと向かった。
けれど、まだ見せるわけじゃない。
条件が揃っただけで、まだ準備は必要だ。
「莉桜。今日さ、お母さんと話してる時、お母さんの機嫌、ちょっと台無しにしてもいい?」
グッと拳を握って笑う。
「もちろん。私も応援するよ」
妹の笑う顔に、きっと大丈夫だろうと思えた。
「ありがとう」
 




