表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/45

34 2人でゲーム制作

夜の風が冷たく私を吹き付ける。


その傍らで、私は塾の問題集を開いて、紙を使わず脳内で解いていた。


「ユズ」


「お。やっと来た。寒かったんだからね」


腕を手でさすって、少しでもと暖を取る。


「ごめん。ちょっと遅くなっちゃって」


暖かそうに光るお店の光に煽られて、「あのお店、入る?」と訊ねる。


「うん。入る」



「いらっしゃいませ」と、促されて、ファミリーレストランに入った。


「お店に申し訳ないし、一応何か頼む?」


机の横に置かれたメニューを広げる。


「そうだね」


「ゆうや。何に頼む?」


「ユズは、何頼むの?」


「私はこれ頼んでみようかな」


ワクワクした顔で指さしたのは、イチゴのクレープ。


薄い生地にたっぷりとクリームとイチゴが包まれておいしそうな輝きを醸し出している。


前なら恥ずかしがってあんまり頼まない商品だけど、美味しそうだし頼んでみようかなという気が湧いた。


「美味しそうだね。じゃあ、僕はその隣のカスタードプリンにしようかな」


「じゃあ、お店の人呼ぶね」


「うん」


店員さんが静かに音を立てて、テーブルへと近づいてきた。


「ご注文はお決まりでしょうか?」


落ち着いた口調ではきはきと声に出している。


「このイチゴクレープと」


ゆうやに目配せをすると、少し震えた声ながらに「この、えと、カスタードプリンを」と、注文を伝えられていた。


自分だけじゃない。


ゆうやも変化していくんだなということを捉えることができた。



「じゃあ、さっそくゲームの構想を考えていこうか」


横のリュックからパソコンを取り出して、私の方へ向けた。


「文章力は低いけど、一応、ここまでは考えてみてて」



開始時の設定としては、中学生くらいの少年が主人公で、一軒家に閉じ込められた状態。


名前も、どうしてここにいるのかも全ての記憶がなく、家の中の手がかりである、「記憶の断片」を集めていくという形。


アイテムを見つけるたびに、わずかな記憶がフラッシュバックする。


探索を進めていくうちに、自分が何かをやらかしてことを知る。



最初の方のストーリー構成は大体決まっていて、細かい部分を決めていく感じか。


「なるほど。ちなみに舞台はどうして一軒家にしたの?」


「サイトによると、小さい場所の方が作りやすいらしいから」


制作のしやすさ、製作期間、制作費用。


考えないといけないことがたくさんある。


「作りやすさも考えた方がいいのか。それに、一軒家は雰囲気も出るしいいかもね」



「こちら、カスタードプリンとイチゴのクレープになります」


店員さんによって商品が運ばれてきた。



限界というほどたっぷりと載せられたクリームとイチゴが美味しそうな雰囲気を醸し出していて、唾液が口に溜まる。


「食べようか」


ゆうやがそう言い、テーブルの横からスプーンを取り出して、一口、口に運んだ。


私もそれに倣うように、クレープをカプリと噛むと、口の中にイチゴの甘酸っぱさとクリームの濃厚さが溶けていった。


「零れそうだよ、クリーム」


ゆうやに言われて、クレープの下の方を見ると、折れたところの間からクリームが出てきていて、急いでその部分をなめた。


溶けかけたクリームもイチゴの甘酸っぱさが残っていって、ほんのり甘かった。



「ゆうや的には、どんな感じの雰囲気のゲームにしたいの?」


「雰囲気か。ちょっと怖めな感じとか」


「なるほど。じゃあ、こんな感じ」


スマホで、好きなイラストレーターさんのイラストを開いて見せた。


「うん。そんな感じ。カッコよくていいね」


「でも、依頼するにはコストかかりすぎるからね」


相場は分からないけれど、ある程度有名な方だし、相当なコストはかかってしまうだろう。


「そっか。難しいね」


「ゆうやって、絵得意?」


「いや、全然得意じゃない」


「私も」


「絵、無しはキツイよね。やっぱ、外注する?」


「でも、相場、数十万くらいらしいよ」


調べたスマホ画面を出して、私の方に向けた。


さすがに、その金額は無理だよね。


そうすると、自分たちで描くか。


いや、悠夜はともかく私は画力ないし、台無しになっちゃったら嫌だからな。



「AIとかあと無料で使っていいサイトもあるみたい」


AIなら、お金もかからないし、ある程度、上手さも保証される。


「それは、いいかもね」


今日の時点で、決まったことはこのくらい。


イラストは無料のものやAIのものを使うこと。


記憶の断片として主人公が書いた手紙や飾られた顔写真、本棚の中のレコードなど。


この一軒家は主人公の家で家族もいたこと。


プレイヤーの葛藤や苦しさを誘うような作り方をしたいこと。


家族と対立して、殺めてしまったという過去を主人公は持っているということ。


そんなことをゆうやとシェアしてあるタブにまとめて、目を閉じた。


まどろみの中へとそっと溶けていった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ