21 優等生という雰囲気の学校
北川東高校見学の日。
通学時間としては電車と徒歩で1時間くらいだから、通えない距離ではない、と。
まあ、妹が通っている時点でそんなことは知っているんだけど。
それでも、実際に足を運ぶと改めて距離感や雰囲気を感じられる。
雰囲気としては、穏やかな風景に囲まれて、控えめな静けさを保っていた。
まさに優等生という真面目な雰囲気が漂っていて、やはりあんまりかなっていう感じがする。
どこか堅苦しくて、自由な空気を感じられない。
ただ、偏差値は63 内申点は40で、少し余裕があって学力的にも丁度良くはある。
「ゆうやはどう思う?」
「悪いとは思わないけど、あんまりプラスな印象も受けないかな」
「だよね」
在校生の生徒に促されて、体育館に入った。
案の定、多くの生徒がいて、まあそうかと思う。
体育館の中は広々としていて、天井の高い空間が開放感を与えていたが、どこか冷たい雰囲気が漂っていて、居心地がいいとは言えなかった。
生徒会の生徒によって、説明会が順調に進められていき、学業に関するいろいろな取り組みが挙げられた。
・徹底的な学力向上プログラム…放課後の補習や学習サポート。
・ICTの活用…1人1台のタブレット端末配布。
・科目特化型の教育…数学や英語に重点を置いたカリキュラム。
・試験対策の教科…模擬試験や過去問演習。
学力向上には、とてもいい取り組みなのだろうけれど、楽しみが見えないというか息苦しそうという印象。
勉強のためだけに存在しているような学校に、窮屈さを感じる。
学校による説明会が終わり、個々での学校見学の時間に移った。
「ゆうやは、どこか行きたいところある?」
「俺は別に通わないから。ユズの行きたいところを行きなよ」
「じゃあ、図書室にでも行こうか」
図書室は静かで落ち着いた雰囲気があり、読書や勉強に集中できそうな空間だったが、どこか無機質で温かみを感じられない。
ゆっくりと、悠夜のスピードに合わせながら階段を上っていくと、2階の踊り場で同級生が見えた。
生徒会委員の書記・結城君。
「あ。こんにちは」
「こんにちは」
「ごめん。ちょっと、ここで待ってて」
小声で、ゆうやに言って、踊り場から少し離れた廊下で志望校に関する認識みたいなものを話した。
結城君は真剣な表情で、学校のよさを語っていて、結城君は多分ここにするんだろうなって思った。
でも、話を聞けば聞くほど、自分には合わないかもしれないという思いが強くなった。
 




