02 自分は人の言うとおりに生きてきただけ
「おはよう」
大きい声で、挨拶をして扉を開けた。
「おはよ。ユズ」
七海が朝の支度をしながら、私の挨拶を返す。
「ユズ。今日、全校集会なんでしょ。頑張って」
「あー。緊張させること言わないでよ」
私、白川柚葵は、この中学校の生徒会長を務めている。
でも、私は親や先生の言う通り、思う通りに行動してきただけ。
本当の私には、リーダーシップもコミュニケーション能力もない。
それでも、人ががっかりする顔を見るのが怖いから、優等生になりきって生活している。
「皆さん、こんにちは。これより、全校集会を始めます。司会を務めます、生徒会長の白川柚葵です。よろしくお願いします」
最初に挨拶が終わった瞬間、一瞬の静まり、そして小さな拍手が返ってくる。
言葉を言う時には、限度もわきまえながらもゆっくりと言うことで堂々として視える。
そんなどうでもいい浅知恵。
小学校からこんな司会はやり慣れているはずなのに、緊張にはどうしても慣れない。
やっぱり、私は向いていないんだなと緊張するたび、思ってしまう。
プログラムの進行に合わせて、セリフを淡々と読み上げていき、全校集会は無事に終えた。
「白川さん。この片づけやっといてくれるかしら」
生徒会委員と教員以外が教室に帰った体育館で、他の生徒会員とともに、マイクや教壇の片づけを行う。
「せーの」
2年生の副会長の子と声を合わせて、教壇を運んでいく。
この子は、何もせずに本当の自分でリーダーに適している。
そんなことを思って、羨ましさを感じた。