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19 人と関わる楽しさ

「またね」と言って別れた。


 夜の空は物寂しく心を乾かしていく。


 別れ際の彼女の笑顔が今でも瞼に焼き付いている。



 カーテンの隙間から差し込む黄色く眩しい光に照らされて、目を覚ます。


 手を突き上げて、伸びをしてほっと息を吐いた。


 パソコン向き直ってゲームを延々と続ける毎日だった。


 可もなく不可もなく、嬉しくも悲しくもなく、何の感情も湧かない。


 ただ、目を背けるために、やっているだけだった。


 毎日をゲームすること、寝ること、ご飯を食べることの3つだけで過ごしてきたから、必然的にゲームのランキング上位につき、ゲームについても詳しくなっていく。


 ゲームをしているときは、将来の漠然とした不安とか焦りとか、そんなものを忘れられる。


 けれど、ゲームの中で人と交流することはしなかった。


 人になじめないと分かっているし、人と関わるのが怖いから。


 敵意を持っているというわけじゃないということは分かっていたけれど、怖かった。


 だから、フレンド申請もずっと断ってきたし、フレンドはいなかった。


 いれば楽しいのかなと思うことはあるけれど、それ以上に怖さが勝って行動することはなかった。


 けれど、久しぶりにハンドルネーム、ユズという人から、フレンド申請が来た。


 何の変哲もないただのフレンド申請。


 惹かれるような、魅入られるようなこともない。


 だけど、ただ、なんとなく承認のボタンを押してしまった。


 ブロックや削除をするのも忍びなく、会話を続けてしまった。



 ユズと話すのは楽しかった。


 ガチャで一緒に出ることを願ったり、現実のことについて人に言えない本音を呟いたり、ユズと話すのはなぜか怖さはなくて、ただぼんやりと淡く浸かっていられる。


 人と交流する楽しさというものを俺は早くから諦めていたから、その楽しさを感じたことに驚いて、そして嬉しかった。


 付き合おうと言った時には、断られるだろうなっていう気持ちもあったけれど、好奇心で何となく送ってみた。


 OKだった時には嬉しかったし、それ以上に驚いた。


 そして、ユズが俺の行けていない中学校の生徒会長をしていて、近くに住んでいると聞いたときには、

 驚いたし、会ってみたいって思った。


 外に出るのも久しぶりだったから、怖かったけれど、出てみると外は意外に気持ちがいいと知れた。


 ユズと直接会った時も、本当に楽しくて仕方がなかった。


 人の怖さとか人づきあいが苦手だというレッテルとか、自分の殻が破れたような、そんな気がした。




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