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フェン編3

世界は多くの願いが落ちている。

 ーお金が欲しいー

 ー空を飛びたいー

 ー過去に戻りたいー

いろんな願いだ。

もしも、どんなに実現不可能な願いでも叶うチャンスがあるのなら。

これはいろんな願いを持つ者たちと願いの管理者の記録の合間の物語。

今回はフェン編です。

フェンはどんな風に過ごしていたのか、なぜ守護者となったのか。

山の斜面を登り、昨日行ったキノコの群生地を通り過ぎてしばらく進む。

すると、ドドドドド……と大きな音を立ててたくさんの水が流れ落ちる滝の近くに出た。

「よぉし。さっさと採って、さっきの森で薪を持って帰ろう。なんていい子なんだ、私。きっといい子ねってお師匠様に褒めてもらえて、誕生日くらいしか食べれない街のお菓子を買ってきてくれるかも。」

そんなことを呟きながら少しブカブカな手袋をはめる。

「さぁ採るぞ―!」

そう言って私はベリルの採集を始めた。


「こんなもんかなぁ。」

そう言いながら私はベリル採集を終えた。

ベリルはかなり小さな薬草で、ブカブカな手袋だと掴みにくくてなかなかに時間がかかってしまった。

もうすぐお昼ご飯の時間だ。

「お腹すいたなぁ。お弁当もう食べようかな。」

そんなことを呟くといきなり後ろでガサガサ、誰かが草を踏む音と声がした。

「お、嬢ちゃん。そっちも昼飯か? 一緒にどうだ?……ああ、驚かせたな。怪しいもんじゃねぇよ。」

振り返ると、重たそうな鎧をきた数人の大人が滝壺の周りにいて、一際偉そうな模様のあるマントのおじさんがこちらに近づいてきた。

「あなたたちは誰?どこからきたの?」

あまり見たことがない服装だ。

もしかしたら外国の人たちなのかもしれない。

「俺たちはこの国の衛兵でさ。最近この辺の警備を任されてんだよ。このクソ暑い中この重たい鎧着て歩き回れって言われてな……。馬もそろそろバテちまうし。んで、どうせなら景色のいいとこで飯にしようって来てみたら、嬢ちゃんがいたってわけ。仲があんまり良くない野郎どもと飯を食うよりも可愛い嬢ちゃんと一緒に食った方が飯も上手くなるってもんよ。どうだ?あ、もしかして今からご飯食べに家に戻るとこだったか?」

「ううん、今からご飯なの。お師匠様と一緒に昨日作ったお弁当があるんだ。」

そういってお弁当箱を取り出すと、おじさんはちょっと笑って言った。

「お、すごいな。自分で作るなんて。じゃあ食うとするか。」

「うん。食べよう。」


「あぁ、美味かった。嬢ちゃんのおかげかな、いつもの飯がより上手く感じたよ。ありがとうなぁ。」

「そんなことないよ。……じゃあ、私はこれからまだすることがあるから、行くね。」

「おぅ。元気でなー。」

「バイバイ!」

手を振って別れると、おじさんはニコニコしながら手を振りかえしてくれた。


いい感じの暖炉に焚べる用の薪を探して歩く。

「お、ここ良いかも。」

そう言いながら薪拾いをしていく。

ついでにキノコも拾って歩き、自分で持てるだけの薪とキノコを集めたときには、もう日が暮れかかっていた。

「やばい、お師匠様がカンカンに怒ってそうだな……。」

急いで山を薪やキノコを落とさない様に駆け下りる。

「お師匠様に面白いおじさんたちに会ったってこと教えてあげなくちゃなぁ。」

そんなことを言いながら家へと急ぐ。

夕日は辺りを照らしながら少しずつ沈んでいく。

――この時まではまだ今までの幸せが続くことが当たり前……のはずだった。


もう少しで家だ。

そう思った瞬間、私は驚いて持っていたものを全て落としてしまった。

誰かの大きな声が響いてきたのだ。

「なんだろう?お師匠様があんなに大きな声を出すなんてありえないし……。お客様かな?」

そして落としたものを拾おうとして大変なことに気付いた。

「やばい!ベリルの瓶の蓋少し開いてたんだ!ちょっと籠の中に溢れてるなぁ。どうしよ。とりあえず、手袋してできるだけ集めておくか。」

籠の中に溢れたベリルを慣れない手袋でかき集めて瓶に戻し、薪とかを急いで拾い、家へと向かった。

さっきの声がお師匠様の声じゃないことを信じて。

先ほどの綺麗な夕日はどこからか湧いた雨雲に隠されてしまった。

なんだか胸騒ぎがしたが、勘違いだ、と言い聞かせながら家への道を急ぐ。


「何、してるの……?」

本格的に降ってきた雨の中、衝撃で思わず持っていたものを全て落としてしまった。

「……え?なんでここにいるんだ?嬢ちゃん。」

驚いた様子でおじさんは言う。

家から誰かを引きずってできた様だ。

え、えっと、そこにある家は、私とお師匠様がずっと2人で住んできた家で……。

じゃあ……誰をおじさんは引きずって出てきたの……?

考えたくなかった。

でも考えなければ、その人――お師匠様が助からない。

思わず雨でぬかるみ始めた地面を蹴ってお師匠様の元へと急ぐ。

「逃げ……なさい……。あ……なた、……だけ……でも……。」

そんな声がしたが、聞こえるはずがはなかった。

ここまで読んでいただきありがとうございます

この短編集は更新未定です

できたら投稿、みたいなスタイルでこれは進めていく予定なのでよろしくお願いします

また、本編の方は水曜日、土曜日に一話ずつ更新しているのでそちらもどうぞ!

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