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魔王と博士の世界見聞録  作者: 秋山リョウ
第1話「旅立ちと初めての街」
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第1章「旅立ち」

はじめまして!

趣味ではじめました!

たくさんの方によんでいただけたら幸いです!

第1話「旅立ちとはじめての村」


第1章「旅のはじまり」



1500年前――

かつて人類を滅ぼし、世界を征服しようとした魔王ノア。

人々はただ一人、彼女に抗える存在――“勇者”に希望を託した。


勇者は命をかけた旅に出た。険しい山を越え、荒れ狂う海を渡り、魔物たちとの激しい戦いを繰り広げ、数々の困難を乗り越えて、ついに勇者は魔王の前に立つ。


勇者

「お前が……魔王ノアか。」


ノア

「ふっ、なんとも貧弱そうな勇者だな。」

喜べ勇者よ。貴様が我に挑んだ最初の挑戦者だ!せいぜい楽しませてくれよ?さぁ、こい!勇者!!」


二人の間に、稲妻が走る。


こうして、魔王ノアと勇者たちの1500年に及ぶ戦いが幕を開けた。

何代もの勇者が挑み続けたが、誰ひとりとして彼女を倒すことはできず――

勇者の血筋は代を重ね、その戦いは延々と続いていった。



そして、1500年後の現代。

文明は発展し、人々の暮らしは大きく変わっていた。

勇者と魔王の戦いなど、もはや誰の関心も集めない。だが――


戦いは、まだ終わっていなかった。



ノア

「わぁ……いいなぁ、こういう出会い……。私もこんなイケメンに出会いたい……」


かつて神聖な祭壇だった場所は、今やピンクのカーペットに、かわいらしい壁紙とぬいぐるみに囲まれた“少女の部屋”に変わっていた。

ソファに寝そべったノアは、大好きなドーナツを頬張りながら少女漫画に夢中になっていた。


そのとき――


重装備に身を包んだひとりの勇者が、部屋の入り口で固まっていた。


勇者

「あ、あのぉ……」


ノア

「あ〜んっ……んふ〜、おいひ〜……」

「ん? ああ、いたの勇者。ごめん、今日はそういう気分じゃないから。また日を改めてくれる?」


勇者

「え、あ、ああ……はい……でも、僕との決着は――」


ノア

「あーもう!しつこいなぁ!今日は気分じゃないの!!」

「やるときはちゃんと“クックック”ってするから! 今日は帰って!!」


かつて人類の敵と恐れられた魔王ノアは、魔王業を完全に放棄していた。



ここは、ヴァルキア王国にもルミナリス王国にも属さない、世界の果ての孤島。

深い森の中に、ひっそりと遺された古びた遺跡がある。


湿った空気と静けさが支配するその場所に、一人の少女が現れる。

白衣を羽織り、犬のぬいぐるみと紙袋を手にしたその少女は、遺跡の前で足を止めた。


手書きの看板が目に入る。


《ごようのあるひとはインターホンをおしてね ノア》


くすっと笑った彼女は、ボタンを押した。


ピンポーン


——ガチャッ。


???

「クックック……よく来たな、勇者よ。我を倒しに来たのか? 愚か者め……!」


芝居がかった“悪役ボイス”だが、中身はどう聞いても可愛らしい少女の声だった。


白衣の少女

「ふふっ……。僕がつけたインターホン、気に入ってくれてるみたいだね。ノア」


ノア

「その声……!エリシア!? 来てくれたんだ!待って、すぐ開けるね!」


ドタドタと足音が響き、勢いよく扉が開いたかと思うと、小柄な少女が飛び出してくる。


ノア

「久しぶりーっ!もぉ、二日も! 二日もひとりぼっちにして!ひどい!!」


頬をふくらませて怒るノア。


エリシア

「二日って……君、1500年間ひとりだったんだろう? それに、旅の準備があるって言ったはずだけど……でも、寂しい思いをさせたなら、ごめんね」


そう言って、エリシアはノアの頭を優しく撫でる。


ノア

「えへへ、冗談だよ〜! 全然怒ってない!」


エリシア

「そう? ならよかった。……はい、これお土産。新作のワンちゃんのぬいぐるみと、君の好きな少女漫画の新刊だよ」


ノア

「わあっ、ありがとうっ! ちょっと待ってて、置いてくる!」


ノアは勢いよく駆け戻り、すぐに戻ってきた。


ノア

「おまたせ! それで、旅の準備はできたの?」


エリシア

「もちろん、完璧さ。荷物は最小限にしてあるよ。多すぎると不便だからね。必要なものは行く先々で調達するつもりだよ。


ノア

「おぉ〜、すごい!旅慣れてるね!」


エリシア

「そんなことないさ。……で、ノアは準備できてるかい?」


ノア

「うんっ!ばっちり!!」


自信満々のノア。だが、手には何も持っていない。


エリシア

「……ああ、うん。じゃあ、出発しようか。」


ノア

「たのしみーっ!しゅっぱ〜つ!!」


ノアは我先にと森の中へ走り出していく。


エリシア

「……戸締まりはいいの?」


深い森をふたりで歩く。

この最果ての孤島には、島を埋め尽くすほどの木々が広がり、わずかに開けた小さな砂浜と、どこまでも澄んだ海がその周囲を囲んでいる。

木々の隙間から差し込む木漏れ日が、風に揺られてきらきらと踊る森。

二人はその静かな道を、並んで歩いていた。


ノア

「ねぇ、旅って何するの? まずはおいしいもの食べる!? あ、魔物退治もいいな〜! 村を救った英雄になっちゃおうかな!」


エリシア

「せわしないプランだね……。君が楽しめるなら、まあ構わないけど。

まずは、僕が乗ってきたジェットスキーでヴァルキア領に入るよ。境界を越えたすぐ先に、“ミルティア”って小さな街がある。そこにちょっと用事があってね。」


ノア

「へ〜。どんな用?」


エリシア

「その街に、足の不自由な少年がいてね。街の医者に頼まれて、彼の足をサポートする魔道具を作ったんだ。」


ノア(口を尖らせて)

「ふ〜ん。エリシアって、だれにでも優しいんだね〜。」


エリシア

「たまたま通るから、ついでに様子を見に行くだけさ。」


ノア

「ふ〜ん? 本当に〜?」


エリシアは、拗ねたように見えるノアを愛おしそうに見つめ、静かに微笑んだ。


エリシア

「……それに、ミルティアのドーナツは絶品なんだよ?」


ノア(ぱっと目を輝かせて)

「ドーナツ!!? 行く行く!! はやくいこ!!」


ノアは勢いよく駆け出す。


エリシア

「ふふっ、どこまで単純なんだか。ノア、そっちじゃないよ。こっちだ。」


人の手がほとんど入っていない、静かな砂浜。

白い砂と透き通った海が、太陽の光を受けてキラキラと輝いている。

波打ち際には、エリシアが乗ってきた白いジェットスキーが停められていた。

彼女はしゃがみ込み、静かにメンテナンス作業をしている。


少し離れたところで、ノアが砂浜にぺたんと座り込んでいた。


ノア

「うぅ、はしゃぎすぎてお腹空いた……。」


ぐぅ〜……と、わかりやすい音が鳴る。


エリシア(メンテナンスしながら)

「少ないけど、食べる?」


バックパックから、包み紙にくるまれたドーナツを取り出す。


ノア

「ドーナツだぁ! いいの?」


エリシア

「君がお腹空かせて騒ぐんじゃないかと思って、迎えに行く前に王都で買い物をしておいたんだ。非常用だから少ないけど牛乳とビスケットも買ってあるよ。」


ノア

「ありがとう! いただきま〜す! あ〜んっ……もぐもぐ♪」



エリシアは手際よくジェットスキーの点検を終え、手を払った。


エリシア

「よし、これで出発できるよ。」


ノア

「すごいねぇ、乗り物も直せるんだ。……でもさ、ここから陸地までボートで1時間以上かかるって、勇者が言ってたよ?」


エリシア

「これは普通のジェットスキーじゃないからね。魔道具を搭載してる。1時間かかるところを、10分で着くよ。」


ノア

「す、すご……! スピード出そう……。落ちないようにしなきゃ。」



エリシアはノアの方を振り返り、真剣な表情で語りかける。


エリシア

「ノア、いいかい?」


ノア

「ん? どうしたの、改まって?」


エリシア

「僕はこの旅で、君に“世界の広さ”と“自由に生きる楽しさ”を知ってほしい。

でも、楽しいことばかりじゃない。目を背けたくなるような現実にも、きっと何度も出会う。……それでも、君は世界を見たいかい?」


ノア(一瞬うつむいてから、顔を上げて)

「……うん、見たい。」


「私は、何も知らずに1500年も“魔王”として閉じ込められてた。でも、あのときエリシアが言ってくれた。“世界は広いよ。自由は、いいものだ”って。」


「なんとなくだけど……今は、わかる気がする。

いいことばかりじゃない。でも、それでも私は……見たいんだ。世界を見てみたい!もう天井のシミを数える毎日は嫌なの!!」


「私はもう、引きこもりの魔王じゃない。……自由に生きる“人間”になるんだ!」


エリシア(小さく笑って)

「……そんなまっすぐな目で言われたら、引き返せないね。ごめん、僕が無粋だった。」


「君は君の目で世界を見て、君自身の解釈で、世界を理解すればいい。

僕はその旅に、最後まで付き合うよ。」


ノア

「エリシア、うんっ! ありがとう!」



エリシア

「じゃあ、行こうか。改めて、旅を始めよう。」


エリシアはジェットスキーにまたがる。


ノア

「うん! 行こう!! 頼むぜ、相棒っ!」


ノアはエリシアの背後に乗り、そっとその腰に手を回す。


ノアの言葉にエリシアは微笑みでこたえ、魔道具を起動させた。


魔道ジェットスキーが唸りをあげ、蒼い海を滑るように走り出す。


ノア

「うっひゃぁ〜!! はやいはやい〜!!」


ノアは風を切る音、顔にかかる水しぶき、初めての感覚を心から楽しんでいた。


エリシア

「しっかりつかまってて! あと、あんまりしゃべらない方がいい! 舌、噛むよ!」


ノア

「え〜!? なに〜!? 全然聞こえな〜い!!」


エリシア(苦笑して)

「……もう好きにして。」


ノア

「わくわくが止まらない……!

海って、こんなにきれいなんだ! 風って、こんなに気持ちいいんだ! 空って、こんなに広いんだ……!」


「この先に、どんな世界が待ってるんだろう。そう思うだけで、胸がどきどきする!」



魔道ジェットスキーは風を裂き、果てしない蒼を駆けていく。


──こうして、かつて世界を滅ぼそうとした魔王と若き天才科学者。奇妙なふたりの旅が始まった。その旅路に、いったい何が待っているのだろうか。

読んでいただきありがとうございました!

今後ともよろしくお願いします!

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