第四話 すみちゃんと雪だるま【中編】
たんぽぽに乗りもものお家を目指す。
ビュンビュンと雪と風が吹いてくる。手袋も雪で冷たくなって来た。
「たんぽぽ、ゆっくりで良いよ」
たんぽぽに声が届かないのかスピードを緩める気配はない。
水中メガネをつけているが、曇るわ、雪がつもるわ、視界がほぼない。たんぽぽの速度からしてもうそろそろもものお家に着くはずだ。
「たんぽぽ、まだぁ」
「ピュー」
たんぽぽが返事をした。もう着くのだろう。スピードも緩くなってきた。
あたしはたんぽぽの頭に積もった雪を取り除き、あたしの水中メガネに積もった雪も取り除く。
うっすらだがもものお家が見えてきた。今ではたんぽぽもトコトコと歩いている。
「ピュー」
「たんぽぽ、ありがとう」
もものお家の前に着くと、たんぽぽは膝を折って座る。
あたしはらいおんさんの輪っかを『トントントン』と3回叩いた。
「は〜い」
ままさんの声だ。
鍵を開ける音がしてドアが開いた。もももお出迎えだ。
あたしはたんぽぽの背に立ちかがむと掛け声をかけジャンプした。
「とぅ」
良くヒーローものでやっている掛け声だ。ヒーローはカッコよくくるっと周り着地する。
あたしもっ!!
べちょっ
気がついたら水混じりの雪の上に顔面から飛び込んでいた。
ううう〜
「すみちゃん大丈夫?」
ままさんが駆け寄ってきて手を貸してくれた。
「すみちゃん痛い?」
ももはしゃがみ込んであたしの顔を覗き込むように見つめる。
「大丈夫。お腹すいた〜」
あたしはお風呂に入りお着替えしてもらった。洋服は洗濯し干してくれた。
「頂きます」
「頂きます」
ももと並んで朝ごはん。
椅子もプレートもお洋服もお揃い。
ままさんのご飯美味しい。唐揚げ、ウインナー、お野菜、ご飯に味噌汁。
唐揚げとウインナーにマヨネーズをたっぷりかけ、ハムっ!
美味しい。
お野菜も味噌汁もご飯と合わせてハム、ハムっ!
ご飯の後はももとおねんね。
ももを抱っこしながら目覚めるとももも目が覚めた。あたしとももはリビングに行く。
「まま、お腹すいた」
「ままさん何か食べたい」
ままさんの用意が良い。おやつのクッキーを用意してあたしとももを待ってたぁ。
できたままさん。ままとは大違い。
きっとままとぱぱはまだ雪掻きに夢中であたしの事は忘れているに違いない。器が小さい。
あたしとももが食卓に着くとぱぱさん来た。
「すみちゃん、もも。おやつ食べたらソリで遊んでみるかい」
そり?!
そりって美味しいものだろうか。ケーキに様に甘く、クッキーの様にサクサク。ステーキの様にジューシーなやつ!!
「ぱぱさん、そりってなぁに」
「そりなに?」
ももも同じ。そり知らない。
「ソリはこれだよ」
ぱぱさんか持っているやつ!食べ物ではない!残念。あたしいらない。
「あたしそり遊ぶ」
もも楽しそう。
ももあたしをみ見る。お目目がキラキラ。
あたし断れない。
「ぱぱさん。そりでどうやってあそぶ?」
「これに乗って雪を滑るんだよ」
やな予感。東京で乗ったジェットコースター思い出した。
ももが楽しそうだから乗ってみた。
やはりジェットコースターと同じ、あたしもう乗らない。
「もも、あたし降りる」
あたしがそりから降りるとももはたんぽぽに繋いで「行ってくる!」と言って、牧場の天辺まで登って行った。
あたしつまらない。でもそり乗らない。
するとぱぱさん来た。
「すみちゃん、雪だるま作ってみるかい?」
「雪だるま?」
ばぱさんが作った雪だるま。まんまるで可愛い。
「コロコロ転がして作るんだよ」
あたしぱぱさんと同じ様にコロコロ。大きいまんまるでけたっ!
「すみちゃん上手。もう一個作って頭にするんだよ」
あたしもう一個作った。でも重くて持てない。
ぱぱさん持ってくれた。
「すみちゃん、目と鼻と手を付けてみよう」
あたしがお目目とお鼻をつけていると、ももがそりに乗って降りてきた。
「すみちゃん、何してるの?」
「雪だるま作ってる。もももやる?」
「やる!」
あたしももに教えた。でもももコロコロしない。そりに雪を乗せてる。ももそりにいっぱい雪乗せるとそりに乗った。
「ばいば〜い」
ももまた牧場のてっぺんへ登ってった。
あたしぱぱさんに言った。
「ぱぱさん、もも雪だるま作らない。そりに雪をいっぱい乗せててっぺんに行っちゃった」
ぱぱさん考えてる。
しばらくすると雪だるまが牧場のてっぺんからコロコロころがってくる。雪だるまは大きくなって行く。そして、あたしとぱぱさんの方へ転がってきた。
「すみちゃん、おじさんに任せてくれるか?」
あたし頷いたが怖い。
ぱぱさんはお手手を出して、お手手がピカピカと光り始めた。そして、ぱぱさんのお手手から光が飛んでった。
ビビビー
光は雪だるまに当たり、雪だるまは木っ端微塵になった。
「ぱはさん、もう一つ雪だるま来る」
ぱはさん考える。
雪だるまと一緒にたんぽぽ降りてきた。きっとももが転がってる。
「ぱぱさん、きっともも」
あたしは雪だるまを指して言った。
「もも!」
ぱぱさんびっくりしてた。
ぱぱさん知らない。ももいつもこんな感じ。
パパさんもう一度、お手手から光出した。
今度は雪だるまが上に上がり、ゆっくり落ちてきた。たんぽぽもびっくり!
雪だるまが降りると、ズボッ、ズボッと頭、お手手、足が雪だるまから出てきた。
やはりもも。
もも牧場のてっぺんから緩やかな坂を下って転がって来た。ももは顔を出してぱぱさんに言った。
「雪が取れない」
ぱぱさん怒ってる。ぱぱさんのお目目怖い。
「もも、危ないだろう。雪だるまのままここで反省してろ!」
ぱぱさん、怒ってお家へ向かって歩き出した。
あたしもものところに行って言った。
「もも、ごめんなさいは」
「あたし言わない!!」
ももはほっぺを膨らましてプイッとした。あたしどうすれば良いかわからない。
「すみちゃん行くぞ」
ぱぱさん呼んでる。あたしももを見た。ももはまだプイッしてる。
あたしぱぱさんについて行った。
もものお家の玄関ドアを開けるとままさん来た。
「ご飯できてるわよ。上がって」
ままさんはあたしとぱぱさん見る。
「ももは?」