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第三話 すみちゃんと雪だるま【前編】

しんしん


 今日はちょっと寒い。

 

 ベッドから降りリビングへ。

 リビングのドアを開けた。


「おはようございます」

 思いっきりご挨拶。ごろん。

 でんぐり返し。

 二度寝。


 ZZZ…


 う、うん?!


 誰もこない。


「パパ、ママ。家出した?」


 あたしはむくっと起き、リビングを出ると玄関に向かった。


 う〜、届かない。


 玄関のドアノブが高い位置にありお手手が届かない。

  

 たんぽぽがトコトコ歩いて来た。


「たんぽぽ、おはよう。手伝って」

「ピュー」


 たんぽぽは前足と後ろ足を折りたたみ玄関に座った。首を垂れあたしを背中に乗せる。


 届いた!


 あたしは玄関ノブ回し、玄関ドアを思いっきり開けた。


 ビュー ビュー ビュー


 強い風が雪と共に入って来た。


 ガチャ!!

 ブル ブル ブル


 さ、寒い! 


「たんぽぽ、お外ダメ!」

「ピュー」


 たんぽぽは頭を左右に振っている。


「お外行きたいの?」


 ピュー ピュー


 今度は頭を縦に何回も振った。

 たんぽぽはお外に行きたいみたい。あたしは行きたくないけど、仕方なく玄関ドアを少し開けて見た。


 ドン!!


 たんぽぽが頭で玄関ドアを開けた。


 ビュー ビュー ビュー


 風が吹く中、たんぽぽが走り出した。


 「ぎゃー ぎゃー 助けてー」


 あたしはたんぽぽにしがみつくが、寒い風と雪がお目目にしみ、パジャマもびっしょり。


「どこかで、ママが叫んでいるみたい」


 あたし死んだ?

 きっと天国に行こうとしているあたしをママが地獄から呼んでいるんだ。


「たんぽぽー、お家!!」


 しかし、たんぽぽは戻る様子はない。


「たんぽぽー、あたし死ぬ!!」


 たんぽぽは知らんぷり。

 仕方ない。あたしはたんぽぽの首を思いっきり抱きしめた。


 たんぽぽ、苦しそう。やっと戻る気になったらしい。玄関に向かって走って行く。


 お家の前でママがお目目を釣り上げて立っていた。まるで地獄の門番みたい。


「ただいま」

「お帰り。すみちゃん。リビングに来なさい」


 ママは玄関を開けてリビングに入って行った。


 あたしはたんぽぽをタオルで拭き、びしょびしょのパジャマのままでリビングに。


 リビングに入るとママが手招きしている。椅子に座れという事だろう。あたしはももとお揃いの椅子に座った。

 食卓には湯気が立っている温かい飲み物が置いてある。


 ズズズ


 あま〜い。いちごミルクだ。


 生きた心地がする。


「すみれ、命知らずだな」

 パパだ。

「すみちゃん、バカなの?」

 ママはいつもこんなだ。


 あたしは項垂れる。

 お部屋は暖房から勢いよく風が吹き、暑いくらいかも。たんぽぽは暖房の真下に寝っ転がっている。


 ズズズーズ


 鼻水が垂れて来た。さっきと違ってなんだか寒い。


 ガタッ


 ママが立ち上がった。腰に両手を当てあたしの顔に近づけるために少しかがむ。

 ついに審判が下される時がきた!


「着替えてきなさ〜い!!」


 あたしはコクンと頷き、リビングを出た。


 びん濡れのパジャマを脱ぎ、洗濯籠に入れるとお部屋に入った。脚立を持って来てクローゼットを開けるとハンガーに掛けてあるズボンとシャツ、上着を次々と落として脚立から降りた。


 うんしょ


 ズボンを履き、シャツと上着を着るとリビングに戻った。

 

 暑っ!


 もわ〜んと暖房の暑い風が吹いてくる。

 たんぽぽが出迎えてくれた。


 たんぽぽは既にレインコートを着ていた。


 可愛い。


 初めて見るレインコート。頭からお尻までかぶしてある。耳と角とお目目が見えてお馬さんみたい。


「すみれ、可愛いぞ」

「すみちゃんまともになった。ご飯作るから待ってて」

あたしはママの言葉を聞かないうちにリビングを出た。


「もものお家に行ってくる」


 たんぽぽに乗り玄関を開け飛び出した。


「すみちゃん戻ってきなさーい」

 ママが叫んでいるが、


 『あたし大人の世界』

 

 逃げの言葉だ。きっと雪かきを手伝わされるに違いない。

 あたしは逃げた。

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