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企画参加作品(ホラー抜き)

押入れの秘密

作者: keikato
掲載日:2023/11/01

「夕ごはんだから、お父さんを呼んできて」

 お母さんに言われ、ボクは二階にあるお父さんの部屋に行った。

 ところが、いるはずのお父さんがいない。

――あれ?

 押入れのフスマが少しあいていた。

 お父さんは鬼ごっこみたいに、なぜだかときたま隠れることがある。

 ボクは上の段にのぼって、フトンと壁の間をのぞいてみた。

――えっ!

 ほのかな明かりがともり、そこには映画みたいに山や川が映っていた。

 夕焼けの空も広がっている。

 と、その空に、男の子の飛んでいる姿が映し出された。

 山の方に向かっている。

 やがて……。

 男の子は地上に向かって降り始めた。

 それにつれ田んぼや畑がだんだん大きくなり、家もすぐ近くに見えるようになった。

――あっ、おじいちゃんの家だ!

 庭では子供たちが遊んでいる。

 その子は子供らの輪の中に降り立つと、いっしょになって遊び始めた。

――あの子、もしかして……。

 そう、子供のころのお父さんなのだ。

 やがて日が暮れ、子供たちはそれぞれ自分の家に帰っていく。

 子供のお父さんが空に舞い上がった。

 家が小さくなる。田んぼも畑も遠くなり、子供のお父さんも夕暮れの中に消えていった。

――秘密にしなきゃ。

 このことはだれにも話せない。

 話してしまったら、お父さんの子供のころが消えてしまいそうな気がした。

 明かりが消えてなくなった。

――お父さん、もうすぐ帰ってくるんだ。

 暗闇に向かって、

「お父さん、ごはんだよー」

 それだけ叫んで、ボクはいそいで押入れから飛び降りた。


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― 新着の感想 ―
思い出に浸れる押し入れ、なのかなあ? それともお父さんの固有の能力なんだろうか? しかし、お父さん? そんなに思い出や夢に浸りたくなるくらい現実が辛かったの?
[一言] 思い出の世界にひたる、ということでしょうか。 とっさに秘密にしなきゃと思った子どもは偉いですね。 お父さんの世界を守ろうとしたのですから。
[一言] 拝読させていただきました。 誰の心の中にも、自分が育ったところの原風景があるのでしょうね。そしてふとそこに戻りたくなる。夕焼け空はいっそう郷愁を誘うのかもしれません。 お父さんのそんな気持ち…
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