↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR

2021年11月23日放送 フラワーラジオ ポストメリディアン火曜日 八巻和行の七転び八巻 妄想【愛の劇場】#11 雨降り

掲載日:2023/10/04


 サクソフォン奏者八巻和行(やまきかずゆき)さんのラジオ番組

 こうのすFM フラワーラジオ

 フラワーラジオ ポストメリディアン火曜日(午後4時~午後6時)

   八巻和行の七転び八巻

 

 というラジオ番組の投稿コーナー

  妄想【愛の劇場】

 毎週パーソナリティ八巻さんから出題される【作品のテーマ】を小説風に書いた作品を投稿するコーナー。


 小説の書き方を知らないシロウトが投稿コーナーに参加。

 そのコーナーに投稿した作品をこちらに投稿しています。


 妄想【愛の劇場】のコーナーで、絶賛!妄想仲間を募集中!! 

 こんな感じで大丈夫なので、コーナー投稿に興味がある人がいてくれると嬉しいです! 

 《番組への参加方法》

 ①フラワーラジオが聴けるように、ListenRadio(リスラジ)のアプリをダウンロード

 フラワーラジオを選局して、お気に入り登録

 ②パーソナリティ八巻さんのX(旧Twitter)をフォロー

 ③毎週日曜日の夜に、八巻さんのX(旧Twitter)から【作品のテーマ】が発表

 ④八巻さんのX(旧Twitter)のダイレクトメールから投稿

 ※番組放送当日の火曜日午後6時頃までに投稿できれば、コーナーの時間に間に合います。

 ※何故か八巻さんが初見で読むルールのようなので、漢字には「ふりがな」をふって下さい。


 小説の書き方を意識しながら文字おこしをしています。

 文章はできるだけ、投稿当時のままにしています。

 言葉が二重になるのが気になるところは、手直しをしています。


 サイト投稿回数 第12回目の今回は………

 2021年11月23日放送。

 妄想【愛の劇場】#11 雨降り

 奏(かなで)と八巻シリーズの第十一回目


 まだ秋の景色が色濃く残る11月だが、降り続く雨は冷たい。

 八巻(やまき)は、ひとりで公園のベンチに腰を掛けていた。

 空は鈍(にぶ)く黒みがかった灰色で、今にも地面をめがけて降りてきそうなくらい、重い。

細(こま)かい雨粒が、容赦なく八巻を濡らしていく。

 八巻はただ、そこから動けなかった。


 八巻の仕事場の近くにある喫茶店で、恋人の奏は働いている。

 笑顔の可愛い彼女に会いたいが為に、常連になる客も多い。

 当初、八巻もそのひとりだった。

 仕事の息抜きに立ち寄った喫茶店で、笑顔の奏(かなで)と出会った。

 別け隔てなく全ての客に向けられる笑顔は、誰をも虜(とりこ)にしていく。

 客は芳(かぐわ)しいコーヒーの香りと、奏の笑顔に癒やされに来る。

 顔なじみになり、少しづつ言葉を交わして、奏の愛おしさが笑顔だけではない事にも気が付く。

 相手の話を聞きながら、コロコロと変わる表情。

 とても小さい事にも感激する純粋さ。

 ちょっと天然なところ。

 容姿に関しては、特筆する事もないだろう。

 奏の全てを知りたいと、八巻は喫茶店に通っては、奏を見つめていた。

 奏に好意を持つ男は八巻以外にもいた。男達はこぞって奏に声を掛け、アプローチに勤(いそ)しんだが、奏は愛らしい笑顔で蝶の様にひらりとかわしていく。

「八巻さんって、いつも静かで大人な感じが素敵ですね」

 奏は、常連の男達からアプローチを掛けられるたびに、八巻にそう声を掛けてきた。

「私、髪の長い男性の方(ほう)が好きなんです」

 最初の内は意味が分からなかった八巻だったが、次第に八巻からの好意に勘付(かんづ)いた奏が八巻の事を気になりだした。という事のようだ。

 八巻と奏の関係が客と店員から、恋人同士へと進展していく事に、時間は大して掛からなかった。

 しかし、社会人の八巻と学生の奏。

 年齢も環境も違う男女の心向きなど、ふたり共に同じ方向を見る事など、簡単にあるわけもない。


 お互いに休みを合わせて、久し振りに映画を観に行く事になった。

 奏の観たいフランスのラブ・ロマンス映画は、単館上映で上映回数も限られている。

 朝早くに八巻は、奏の住むマンションへと迎えに行き劇場へ向かった。

 しかし、ふたりは劇場へと到着する事はなかった。


 雨がやたらと降っている。

 雨は地面に叩きつけられ、力なく水溜(みずたま)りをつくる。

 車のタイヤを地面に滑(すべ)らせると、シャー!と音を立てながら、八巻と奏を乗せた車は目的地へと進んで行く。

 今日の八巻は奏と一緒に過ごすはずなのに、なんだか気が進まない。

 その理由がよく分からない。見つける事すらままならない。

 しかしふたりを乗せた車は、八巻の気持ちとは裏腹に前へと進んで行く。

「でね、八巻くん……」

 リアシートの奏は自分の近況報告に余念がない。

「そしたらね……」

 奏が色々と話しているが、奏の話が耳に入らない。

 むしろイライラする。

 奏の話し声と雨の降る音が、八巻の気持ちをイライラさせる。

「黙っていてくれないか?」

 八巻は静かに言葉にした。

「八巻くん?どうしたの?」

 奏は小首を傾げながら訊(たず)ねる。

 八巻は答えない。

 奏は口を閉じる代わりに、カーステレオから八巻の好きなクラッシックをかけようと手をのばす。

「今、音、要らない」

 八巻は感情を押し殺すように、柔らかく言葉を紡ぐことを意識したが、上手くいかなかったようだ。

「八巻くん、今日どうしたの?」

「いつもと一緒だよ」

「怒ってるの?」

「怒ってないよ」

「じゃあ、何で不機嫌なの?映画、嫌なの?」

 奏は八巻の顔を覗(のぞ)き込むが、八巻は見えていないフリをした。

「思った事はちゃんと言うって、決めたでしょ?」

 奏の言葉を聞かないフリをした。

 ふたりの会話が消えて、車を叩きつける雨の音だけが、楽しそうに会話を続けていた。


「停めて」

 奏は静かに言った。

 いつもなら、その理由を聞いて車を停めずにいる八巻だったが、今日の八巻は素直に車を停めた。

「帰る」

 そう言うと、奏は車から降りて雨の降る中を傘を差しながら、来た道をひとりで戻っていった。

 残された八巻は、目的を失った車を道なりに進めて行った。

「思った事はちゃんと言うって、決めたでしょ?」

 奏の言葉がリフレインする。

 今、思った事は……、特にない。


 朝、奏を迎えに行った時は、奏に会えることが八巻は嬉しかった。

 奏のマンションに着いて、奏をリアシートに迎え、車を走らせたところまでは、久し振りに会えた嬉しさに浸っていた。しかし、車を走らせながら八巻の心情が変化した。

 雨のせいなのだろうか?


 八巻はただ車を走らせていた。目的は無い。ただ、道なりに走っていた。

 小さな公園が目に入った。

 雨の中では誰も居ない小さな公園。遊具は無く、あるのは申し訳程度のベンチだけだ。

 雨に濡れる事を厭(いと)わず、八巻は車から降りて、公園のベンチに腰を下ろした。

 鈍(にぶ)い黒みがかった灰(はい)色の雲に覆(おお)われている空は、忙しく雨を降らせ、容赦(ようしゃ)なく八巻を打ち付けていく。

 八巻は雨に濡(ぬ)れる事を気持ちよくさえ感じていた。

 頭の中が、クリアになる気がした。

 奏の機嫌を悪くしたのは八巻自身だ。

 奏には悪いことをしたと思っている。

 じゃあ、その理由は?

 八巻は答えを巡らせながら、その理由を探していた。

 しかし、答えは見つからなかった。


 自宅のマンションに戻った八巻は、風呂場でシャワーを浴びていた。

 雨に濡れた体を温(あたた)め、心に溜(た)まった答えの見えないストレスを洗い流す。

 シャワーで頭を濡らしていると、髪の毛が視界を遮(さえぎ)った。

 八巻はタオルで体を軽く巻き付け、書斎(しょさい)の机に向かいハサミを取り出した。

 風呂場に戻り、書斎から持ち出したハサミで髪の毛を無残(むざん)に切り落とし始めた。

「私、髪の長い男性の方が好きなんです」

 奏の言葉が、ふいに脳裏を過ぎる。

 切り落とした髪が、風呂場に音も無く落ちては床を埋めていく。

 八巻は厭わず髪を切り続けた。


 シャワーで気持ちが落ち着いた八巻は、奏のことを思い出していた。

「きょうは、奏に悪い事をした。電話をしたら声が聞けるだろうか……」

 リビングのソファに腰を下ろし、奏の好きなアイドルの曲をB.G.M.に流す。

 八巻はひとつ大きく深呼吸してから、奏に電話をかけ始める。

 奏へのコールが鳴る度に、八巻の心は高鳴っていた。


 ありがとうございました。

 次回もラジオ番組の投稿コーナー

 妄想【愛の劇場】へ投稿した作品の投稿になります。


 妄想【愛の劇場】#12「夢」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。