2021年11月23日放送 フラワーラジオ ポストメリディアン火曜日 八巻和行の七転び八巻 妄想【愛の劇場】#11 雨降り
サクソフォン奏者八巻和行さんのラジオ番組
こうのすFM フラワーラジオ
フラワーラジオ ポストメリディアン火曜日(午後4時~午後6時)
八巻和行の七転び八巻
というラジオ番組の投稿コーナー
妄想【愛の劇場】
毎週パーソナリティ八巻さんから出題される【作品のテーマ】を小説風に書いた作品を投稿するコーナー。
小説の書き方を知らないシロウトが投稿コーナーに参加。
そのコーナーに投稿した作品をこちらに投稿しています。
妄想【愛の劇場】のコーナーで、絶賛!妄想仲間を募集中!!
こんな感じで大丈夫なので、コーナー投稿に興味がある人がいてくれると嬉しいです!
《番組への参加方法》
①フラワーラジオが聴けるように、ListenRadioのアプリをダウンロード
フラワーラジオを選局して、お気に入り登録
②パーソナリティ八巻さんのX(旧Twitter)をフォロー
③毎週日曜日の夜に、八巻さんのX(旧Twitter)から【作品のテーマ】が発表
④八巻さんのX(旧Twitter)のダイレクトメールから投稿
※番組放送当日の火曜日午後6時頃までに投稿できれば、コーナーの時間に間に合います。
※何故か八巻さんが初見で読むルールのようなので、漢字には「ふりがな」をふって下さい。
小説の書き方を意識しながら文字おこしをしています。
文章はできるだけ、投稿当時のままにしています。
言葉が二重になるのが気になるところは、手直しをしています。
サイト投稿回数 第12回目の今回は………
2021年11月23日放送。
妄想【愛の劇場】#11 雨降り
奏と八巻シリーズの第十一回目
まだ秋の景色が色濃く残る11月だが、降り続く雨は冷たい。
八巻は、ひとりで公園のベンチに腰を掛けていた。
空は鈍く黒みがかった灰色で、今にも地面をめがけて降りてきそうなくらい、重い。
細かい雨粒が、容赦なく八巻を濡らしていく。
八巻はただ、そこから動けなかった。
八巻の仕事場の近くにある喫茶店で、恋人の奏は働いている。
笑顔の可愛い彼女に会いたいが為に、常連になる客も多い。
当初、八巻もそのひとりだった。
仕事の息抜きに立ち寄った喫茶店で、笑顔の奏と出会った。
別け隔てなく全ての客に向けられる笑顔は、誰をも虜にしていく。
客は芳しいコーヒーの香りと、奏の笑顔に癒やされに来る。
顔なじみになり、少しづつ言葉を交わして、奏の愛おしさが笑顔だけではない事にも気が付く。
相手の話を聞きながら、コロコロと変わる表情。
とても小さい事にも感激する純粋さ。
ちょっと天然なところ。
容姿に関しては、特筆する事もないだろう。
奏の全てを知りたいと、八巻は喫茶店に通っては、奏を見つめていた。
奏に好意を持つ男は八巻以外にもいた。男達はこぞって奏に声を掛け、アプローチに勤しんだが、奏は愛らしい笑顔で蝶の様にひらりとかわしていく。
「八巻さんって、いつも静かで大人な感じが素敵ですね」
奏は、常連の男達からアプローチを掛けられるたびに、八巻にそう声を掛けてきた。
「私、髪の長い男性の方が好きなんです」
最初の内は意味が分からなかった八巻だったが、次第に八巻からの好意に勘付いた奏が八巻の事を気になりだした。という事のようだ。
八巻と奏の関係が客と店員から、恋人同士へと進展していく事に、時間は大して掛からなかった。
しかし、社会人の八巻と学生の奏。
年齢も環境も違う男女の心向きなど、ふたり共に同じ方向を見る事など、簡単にあるわけもない。
お互いに休みを合わせて、久し振りに映画を観に行く事になった。
奏の観たいフランスのラブ・ロマンス映画は、単館上映で上映回数も限られている。
朝早くに八巻は、奏の住むマンションへと迎えに行き劇場へ向かった。
しかし、ふたりは劇場へと到着する事はなかった。
雨がやたらと降っている。
雨は地面に叩きつけられ、力なく水溜りをつくる。
車のタイヤを地面に滑らせると、シャー!と音を立てながら、八巻と奏を乗せた車は目的地へと進んで行く。
今日の八巻は奏と一緒に過ごすはずなのに、なんだか気が進まない。
その理由がよく分からない。見つける事すらままならない。
しかしふたりを乗せた車は、八巻の気持ちとは裏腹に前へと進んで行く。
「でね、八巻くん……」
リアシートの奏は自分の近況報告に余念がない。
「そしたらね……」
奏が色々と話しているが、奏の話が耳に入らない。
むしろイライラする。
奏の話し声と雨の降る音が、八巻の気持ちをイライラさせる。
「黙っていてくれないか?」
八巻は静かに言葉にした。
「八巻くん?どうしたの?」
奏は小首を傾げながら訊ねる。
八巻は答えない。
奏は口を閉じる代わりに、カーステレオから八巻の好きなクラッシックをかけようと手をのばす。
「今、音、要らない」
八巻は感情を押し殺すように、柔らかく言葉を紡ぐことを意識したが、上手くいかなかったようだ。
「八巻くん、今日どうしたの?」
「いつもと一緒だよ」
「怒ってるの?」
「怒ってないよ」
「じゃあ、何で不機嫌なの?映画、嫌なの?」
奏は八巻の顔を覗き込むが、八巻は見えていないフリをした。
「思った事はちゃんと言うって、決めたでしょ?」
奏の言葉を聞かないフリをした。
ふたりの会話が消えて、車を叩きつける雨の音だけが、楽しそうに会話を続けていた。
「停めて」
奏は静かに言った。
いつもなら、その理由を聞いて車を停めずにいる八巻だったが、今日の八巻は素直に車を停めた。
「帰る」
そう言うと、奏は車から降りて雨の降る中を傘を差しながら、来た道をひとりで戻っていった。
残された八巻は、目的を失った車を道なりに進めて行った。
「思った事はちゃんと言うって、決めたでしょ?」
奏の言葉がリフレインする。
今、思った事は……、特にない。
朝、奏を迎えに行った時は、奏に会えることが八巻は嬉しかった。
奏のマンションに着いて、奏をリアシートに迎え、車を走らせたところまでは、久し振りに会えた嬉しさに浸っていた。しかし、車を走らせながら八巻の心情が変化した。
雨のせいなのだろうか?
八巻はただ車を走らせていた。目的は無い。ただ、道なりに走っていた。
小さな公園が目に入った。
雨の中では誰も居ない小さな公園。遊具は無く、あるのは申し訳程度のベンチだけだ。
雨に濡れる事を厭わず、八巻は車から降りて、公園のベンチに腰を下ろした。
鈍い黒みがかった灰色の雲に覆われている空は、忙しく雨を降らせ、容赦なく八巻を打ち付けていく。
八巻は雨に濡れる事を気持ちよくさえ感じていた。
頭の中が、クリアになる気がした。
奏の機嫌を悪くしたのは八巻自身だ。
奏には悪いことをしたと思っている。
じゃあ、その理由は?
八巻は答えを巡らせながら、その理由を探していた。
しかし、答えは見つからなかった。
自宅のマンションに戻った八巻は、風呂場でシャワーを浴びていた。
雨に濡れた体を温め、心に溜まった答えの見えないストレスを洗い流す。
シャワーで頭を濡らしていると、髪の毛が視界を遮った。
八巻はタオルで体を軽く巻き付け、書斎の机に向かいハサミを取り出した。
風呂場に戻り、書斎から持ち出したハサミで髪の毛を無残に切り落とし始めた。
「私、髪の長い男性の方が好きなんです」
奏の言葉が、ふいに脳裏を過ぎる。
切り落とした髪が、風呂場に音も無く落ちては床を埋めていく。
八巻は厭わず髪を切り続けた。
シャワーで気持ちが落ち着いた八巻は、奏のことを思い出していた。
「きょうは、奏に悪い事をした。電話をしたら声が聞けるだろうか……」
リビングのソファに腰を下ろし、奏の好きなアイドルの曲をB.G.M.に流す。
八巻はひとつ大きく深呼吸してから、奏に電話をかけ始める。
奏へのコールが鳴る度に、八巻の心は高鳴っていた。
ありがとうございました。
次回もラジオ番組の投稿コーナー
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妄想【愛の劇場】#12「夢」




