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教会滅亡後世界  作者: 木島別弥
世界魔術篇
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観測台

 ベイケたち四人は観測台にやってきていた。ギルベキスタを観測しているという観測台だ。観測台の職員によると、ギルベキスタはこの地域の世界に溶けている。それを観測するのはとても難しいようだ。

 観測台では、この地域の世界に溶けたギルベキスタを人体に収束するように加工した観測を行っている。

 観測台の職員には魔術師が多い。おそらく、契約相手としてギルベキスタを選んでいるのだろう。契約の時、ギルベキスタが心の中に現れ、契約を交わしている。それはベイケも同じだ。魔術の契約から、ギルベキスタが今でも人として自分を具現化することができることが推測できる。

 そのことから考えると、ギルベキスタが世界に溶けているという方が不思議だ。ギルベキスタは人型で具現化されて現在でも生きているのではないか。

 ギルベキスタが教会をなぜ滅ぼしたのか。その理由を推測している。

「確かに世界に溶けているなあ、ギルベキスタは」

 ウォブルがいう。

「世界に溶けるってどういう気分なんだろうな」

 ベイケが答える。

「魔術師アギリジアを観測することはできるのか」

 ノアミーが聞く。ノアミーは魔術師アギリジアと契約しているため、そのことがとても気にかかる。

「いや、ここではアギリジアの観測は行っていないようだ」

 ベイケが答える。

「しかし、何かおかしいなあ」

 ベイケがいぶかしがる。

 ギルベキスタを人体に収束するように観測しているという観測台だが、何かこの観測台そのものがおかしなまちがいをしているような気がする。

 この地域の世界を掌握している世界級の魔術師ギルベキスタを利用することができれば、この地域の物質の動きに大きな干渉をすることができる。だが、それが目的でこの観測台はギルベキスタを観測しているのだろうか。

「何がおかしいんだ、少年よ」

 ノアミーが聞いてくる。

「それがさ、ギルベキスタの周囲の環境を見ると、これ、どこかで見たことのある場所じゃないかなあと思うんだけどなあ」

 ベイケが答える。

 それを聞いて、ベイケは頭が良いとノアミーは思った。

「それはどういうことだ、少年よ」

「それがさ、ひょっとしたらなんだけどさあ、ひょっとしたらなんだよ」

「はっきりいえ、少年よ」

 ノアミーが急かす。

「ああ、このギルベキスタのいるところって西の町じゃないか」

 ベイケがいった。

 この地域に溶けているはずのギルベキスタだ。観測台の職員は、それを強く確信している。そのギルベキスタが西の町にいるというのはどういうことだろうか。

「うーん、やっぱり、このギルベキスタ、普通に西の町で暮らしているぞ」

 ベイケがいった。

「どういうことだ、少年よ」

「ギルベキスタは西の町に住んでいる」

 ベイケが断言する。

 それを聞いた観測台の職員はぼけっとしていた。いったい何をいっているのか、理解できない。

「ギルベキスタはこの地域の世界に溶けているのではないのか」

 ウォブルが聞く。

「それはギルベキスタの魔力だな。魔力の本体は、西の町で暮らしているぞ」

 ベイケがいう。

 それが本当なら、魔術師たちの間では大騒ぎになるはずの出来事だ。

「観測台に来てよかったな。ギルベキスタが見つかった」

 ベイケがいう。

 ずっとこの観測台にいて、そのことに気付かなかった職員たちは呆然としている。

 だが、ギルベキスタに会いに行くのはものすごく怖いぞ。

 世界級の魔術師を相手にして勝ち目があるとは思えない。ギルベキスタの機嫌を損ねるとかなりまずい。

「西の町へ行こう。会いに来ただけで怒るギルベキスタではないだろう」

 ベイケがいう。

 そして、四人は西の町に行くことにした。


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