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教会滅亡後世界  作者: 木島別弥
贋作遺物篇
25/56

領主の屋敷

 四人はギリニーの土地についた。道をたずねて、領主の屋敷まで行く。領主の屋敷は大きな建物で、行くとすぐに目についた。

 囲いに門がついていて、その中に大きな庭園があった。屋敷は三階建てで大きく造られている。

 ここの領主が聖遺物『ギルベキスタの盾』を持っているのだ。それをひと目見てくるのが今回の目的である。本物か偽物か知りたいのだが、それを鑑定する能力がベイケたちにはない。

 四人は大富豪グラッドからの使者であることを門で守衛に告げた。守衛はそのことを建物の中へ報告に行った。四人は十分ほど待たされたが、中に入ることが許された。

 囲いの中の庭園には、液体生物がたくさんいた。この建物には人が住んでいるのだろうか。守衛は人類だったが、屋敷の中は怪しいものだ。

 建物を玄関から入っていくと、建物の中にも液体生物がたくさんいた。

「聖遺物を見に来たのだが」

 出迎えた使用人にベイケがそう告げると、

「あとで来る者が案内します」

 と答えた。

「靴を履いたまま移動していいのかい」

 ベイケが聞くと、

「かまいませんよ」

 と答えた。使用人も、建物の中にたくさん液体生物がいるので、客が靴を履きたがることは仕方がないと思っているのだろう。使用人はスリッパを履いていたが、靴にした方がいいだろうなとベイケは思った。

「この液体生物は人に襲いかかるよね」

「はい。お客さまの身はお客さまが守ってください。身の安全は保障しかねます」

 使用人はすごいことをいう。

 この建物に住んでいる人たちは、屋敷を捨てて逃げ出した方がいいんじゃないかとベイケは思ったが、この屋敷の人たちにもこの人たちの事情があるんだろうなと思った。

 案内をしてくれる使用人が来るのを玄関で待っていると、液体生物がうろうろしているのが気になって仕方なかった。

 この領主が液体生物に襲撃されているのだろうな。たぶん、現在進行形で。液体生物のゆっくりとした侵略が人類の感覚に合わないだけなのだろう。


 しばらくすると、案内をする使用人がやってきた。きれいな女の人だった。危険なところで仕事をしているなあとベイケは思った。

「案内します。ついてきてください」

 使用人がいうので、四人はついていった。聖遺物はどこに置いてあるのだろうか。

 階段で二階へあがるようである。

 階段で道をふさいでいる液体生物をベイケが毒魔術を使ってバチバチバチと攻撃する。液体生物は攻撃されると、反応し、四人と使用人に襲いかかってきた。

「圧縮」

 ウォブルが重力操作で液体生物を攻撃する。

 ノアミーが雷撃で液体生物を攻撃する。

 ミシアは液体生物が苦手だ。

 三人に攻撃されて液体生物が動かなくなった。

「お客さん、強いんですね」

 使用人のお姉さんがいう。


 階段をあがると、二階の廊下があって、豪華な客間に通された。

 そこに領主がいた。

「グラッドの使いで聖遺物を拝見しに来たものです」

 ベイケがいう。

「うん。きみたちのような客がそのうち来るだろうとは思っていたよ」

 領主が答えた。

 客間の置き物を見てまわると、その中にグラッドの屋敷に置いてある聖遺物『ギルベキスタの盾』と同じ形の造形物が置いてあった。

 ベイケは他の三人の顔を見まわして、それぞれがうなずいているのを見た。話す役はベイケに一任されているかのようだ。仕方ない。ベイケが話す役を引き受ける。

「領主はこれを聖遺物だと考えているのですか」

 ベイケがいう。

「買った時はそうだった」

 領主が答える。

「この聖遺物をどこで手に入れたのか聞きたいのですが」

 ベイケが質問した。領主は少し考える。

「芸術品として購入したものだ。けっこう高い値段を払った」

 領主がいう。

「我々が聖遺物を見に来た意味はわかるでしょうか」

「なかなか難しいな」

 領主がいう。

「商事会社グラッドの社長グラッド氏が所有する聖遺物に贋作の疑いがあるのです」

「どんな聖遺物かな」

「聖遺物『ギルベキスタの盾』です」

「なるほど。予想していたことのひとつだ」

 領主がいう。

 液体生物が少しずつ近づいて来る気がする。

 そうだ。ミシアは強く思っていた。なぜ、この屋敷には液体生物が野放しにされているんだ。それを聞かないのか。

「領主の所有する『ギルベキスタの盾』が真作である根拠はありますか」

 ベイケが質問する。

 領主は少し考えてから答えた。

「ない」

 やはりか。ベイケは思った。

 どちらも贋作の可能性がある。貧民街の聖遺物だって贋作だろう。

 贋作ばかりだ。どれだけ贋作が出まわっているんだ。

 聖遺物を見ることには成功した。もうここへ来た目的は達成したのだ。

「この問題について、領主が何か手を打っているということはありますか」

 ベイケが質問する。

「売り手を調べさせてはいる。もう二年も前の話だ。まだ証拠はあがらん」

「そうですか」

 領主が二年間調べさせて解決しないのなら、ベイケたちによる解決は見込みがないだろう。あきらめるか。

「この聖遺物を手に入れてから繁栄していたということはありますか」

 突然、ウォブルが質問した。

「ない」

 領主が答えた。

 ベイケは考えた。つまり、どういうことなのかについて。

「よし、少年、そこまでだ。まずは液体生物を倒そう」

 ノアミーが声をかけた。

 ベイケは近付いて来ている液体生物を見まわした。

 一体、危険なくらい近くにいる。

 仕方ないなあ、と思いながら、ベイケは、毒魔術を液体生物に放った。

 ノアミーがすぐに雷撃で追撃する。

 領主は、ベイケたちの強さに驚く。

 ウォブルが重力操作でさらに攻撃すると、一体の液体生物は動かなくなった。

 この屋敷にはあと何体の液体生物がいるのだろう。


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