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田舎の城からの生き残りハーレム増築戦略  作者: 風親
第2章 幼女と軍神編

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軍神と名将

「エミリエンヌ本隊でなければなんとでもなるさ」


 タモンが追撃してきた軍を山から見下ろしながら、顎を手のひらの上にのせてそうほくそ笑んでいたのは朝方のことだった。


「け、結構……強いな」


 日も暮れようとしている今は、ボロ負けではないにしても想像以上の苦戦を強いられて泣き言を言いたそうな表情になっていた。


 この後、ミハトの部隊による夜襲があったが、油断していない軍への戦果は限られたものになった。安全な場所まで下がって立て直すエミリエンヌ軍は、翌朝になるとまたタモンに向かって進軍を開始する。


 近づいて交戦しては離れ、また近づいてを繰り返す日々が続いていた。


「まあ、でも南ヒイロから討伐軍が出たというし……」


 この有様でエミリエンヌの本隊が、本腰を入れて攻めてきたらひとたまりもないとは思っていたが、南ヒイロが北方にいる軍をエミリエンヌ討伐のために差し向けたという知らせを聞いてタモンも一安心していた。


「私たちがこの分隊を引きつけている意味がでてくるというものですね」


「しかも、東方騎士団が主力の軍らしいよ」


「怖い相手でしたが、今回は味方なので頼もしいですね」


 タモンの直下で軍を率いるロランは、疲労の色は隠せなかったが新たな希望を聞いてわずかに笑みを浮かべていた。


「ふふん。軍を二手に分けたのはやはり失策だったね。噂の軍神さまだけに惨敗はしないだろうけれど、南ヒイロ帝国の精鋭相手ではしばらく身動きがとれないだろう」


 朝と同じ様にタモンは顎を手のひらの上にのせてほくそ笑んでいた。




 しかし、南ヒイロ帝国からの軍が、エミリエンヌ本隊に惨敗するのは三日後のことだった。





「さすがは帝国の正規軍。田舎の北ヒイロ軍とは装備が違いますな」


 エミリエンヌ配下の歴戦の勇士たちでも、その陣容に、武装に、一糸乱れぬ隊列に驚いていた。驚きはしていたが、エミリエンヌ様が率いる自分たちの軍が負けるなどとは全く考えておらずに迎え撃つべく士気は高揚していた。


「エミリエンヌ様! 後方に砂煙が見えます。『男王』の軍と思われます。」


 そんな中で慌てた様子の副官ケンザの報告に、エミリエンヌは冷静に応じていた。


「私が迎撃に向かいましょうか」


 血気盛んなケンザの提案を、エミリエンヌは制止した。


「『男王』の軍がわざわざ目立つように接近してくるとは思えないな」


「偽の軍だということでしょうか?」


「本命ではないね。おそらく本命は、前の方に潜んでいる」


 自分の読みと勘を信じながらもエミリエンヌも慎重に考えるかのように一度目を瞑っていた。


「よし、全軍、正面に進撃!」


 後ろの陽動など気にするなと勇ましく号令をかけた。


 エミリエンヌの部下たちにも南ヒイロ帝国軍の精鋭にぶつかっている間に後ろから攻撃されるかもしれない怖さがなかったわけではないが、エミリエンヌに対する信頼は揺るがない。背水の陣とエミリエンヌを守らなくてはという思いはむしろ目の前の帝国軍を早く叩き潰さなくてはという強い気迫に変わっていた。


 無謀な突撃にさえ見えた。


 南ヒイロからの遠征軍は、待ち構えている陣形にまさか真正面から全軍がぶつかってくるとは思っていなかった。停滞した時のために左右から回り込ませて攻めさせる準備を始めていたくらいだった。自分たちに真正面から来るわけがないという帝国軍ならではのわずかな油断がエミリエンヌ本隊の突撃を喰らい、揺らぐと第二陣三陣が波状攻撃をくらい崩れていった。


「我が帝国軍が押されている? そんな馬鹿な」


 奇襲を受けたわけではなく手堅く待ち構えているのにも関わらず帝国軍は劣勢だった。とにかく一度、引いてでも立て直すべきだったが、帝国軍は驕りからその判断が遅れた。


 前東方騎士団長リョポフがタモンたちとの戦いの後、失脚したため、混成部隊で指揮系統が複雑なこともあったが、退却の指示がでたのはもう陣形が崩壊してからだった。


「むっ、来たな」


 将兵たちが帝国軍に対して、勝ちを確信して高揚しているなかで、エミリエンヌだけは少し後ろに下がり周囲の様子に目を配らせていた。


 追撃しようとするエミリエンヌ軍を待ち伏せて横から奇襲を加えようとする部隊の存在を確認する。


 少数精鋭。鋭い動きの騎馬部隊に、前線のエミリエンヌ軍は大きな被害を受けて翻弄されていた。


 エミリエンヌは迷うことなく愛馬を操ると自ら迎え撃ちにいった。


「また貴方か」


 奇襲をしてきたカンナに対して、昔からの友人であるかのようにエミリエンヌは呼びかけた。


「あわよくば大将の首をと思っていたら、自ら出てきてくれるとはありがたい」


 カンナは槍を構えながらそう応じた。先に一度戦ってエミリエンヌの強さはよく分かっている。そう簡単に行かないことは百も承知だった。とは言えこれが千載一遇の好機であることは間違いがない。カンナはためらわずにエミリエンヌに向かっていく。


「おおお」


「ふん」


 背が高く美しい二人が雄々しく叫びながら馬上で槍をぶつけ合っていた。馬を見事に操りながら、大きな槍がものすごい速度で振り回されると時折、火花が周囲に飛び散った。


「なんだこれは」


 エミリエンヌの軍もカンナの軍も前回の戦いと同様に、いや前回よりも鋭さを増した二人の戦いに割って入れる雰囲気ではなかった。二人の一騎打ちを邪魔しないでおこうという考えではなく、近づいた瞬間には自分たちなどでは弾き飛ばされると歴戦の勇士たちも感じていた。お互いの部下も援護できる気すらしなくて何もできずにただ目の前の敵兵を押し留めようとしているだけだった。


「帝国軍からの攻撃です!」


 数十分にも及んだ戦いの後で、近くの林や丘から矢と魔法が飛んできていた。体勢を立て直した南ヒイロ帝国軍は、あくまでも近寄らせずに戦うことを選んだようだった。エミリエンヌの軍は、盾部隊で防ぎつつこの場に留まるのは一方的に攻撃を受けてしまうため退却の決断を迫られていた。


「無粋だな」


「全く同感です」


 エミリエンヌが、動きを止めると、カンナも動きを止めてエミリエンヌの言葉に笑って答えていた。激しい戦場の中で、二人の周囲だけが時間が止まったかのような動きのなさで静まり返っていた。南ヒイロ帝国軍の動きは間違っていない。指揮官としては正しいものだとは認めつつ、極めた武人同士だけが到達できる楽しみに水をさされたようで二人とも不満そうだった。


「また戦場で相まみえましょう」


 先にそう言ったのはカンナだった。どちらが逃げるのに不利な状況かは難しいところだったが、近くにいる兵の数としては圧倒的に不利なカンナの方からそう告げた。


「そうですね。今回は引き分けということにいたしましょう」


 エミリエンヌの方がやや余裕がありそうな表情で、部下たちにも伝わるようにそう応じていた。このまま丘の上に陣取っている帝国軍に猛攻をかける手もあるが、そうなればカンナの軍ともこのまま交戦を続けざるを得ない。


「距離を取るぞ。一旦、後退!」


 エミリエンヌは大きな声で兵たちに命令を飛ばした。近くにいる部下たちには、この一騎打ちは引き分けなので手を出さないようにと手で制していた。カンナは一礼をすると戦うことなく戦場から離脱していった。


「敵ながら見事だな」


 カンナとエミリエンヌはお互いに素早く見事な撤収ぶりに惚れ惚れと見送っていた。特にカンナの方は、エミリエンヌの大軍の指揮に感心するしかなかった。




「南ヒイロ帝国の軍も大したことはないですな」


 その夜、野営していたエミリエンヌたちの元には、南ヒイロからの遠征軍が完全に退却を始めたという知らせが飛び込んできた。


「ビャグンに籠もるのか。それとも、本国まで逃げ帰るのか」


 エミリエンヌがいる天幕の中で、副官ケンザを始め、若い武官たちの気持ちは昂ぶっていた。このまま、南ヒイロ本国まで攻めこもうという意見に反対するものも少なくなっていた。


 今日の戦いで、エミリエンヌ軍の強さは大陸中に響き渡ったと言ってもよかった。今までも有名な彼女ではあったが、あくまでも地方で強いと評判の将であり軍であったのに対して、今日からは五つの帝国の精鋭とも最強を比較される軍になったと言っても過言ではなかった。


「このまま南ヒイロ帝国まで攻め上がりましょう!」


「おおー!」


 ケンザの言葉に、他の武官たちも大きな賛同の声と拍手で応じていた。


「そうだな。だが、今日はゆっくり休んでくれ。この度の戦いご苦労だった。わずかばかりだが、酒もある」


「おお、さすがエミリエンヌ様!」


 エミリエンヌも若干の迷いがあったが、元々南ヒイロに攻め込んでこの戦争を勝ちに導きたい気持ちは強かったのでにこやかに応じながら、酒を振る舞っていた。


「マジェルナの丘にいる軍が気にはなるのだが……」


 前線に持ってきている酒はそれほど多くはない。エミリエンヌは一杯だけを軽く飲み干すと他は部下に与えつつ、ちょっと気がかりそうに地図を広げていた。


「噂の無敗の名将殿ですか?」


 ベテランの武官たちも地図を覗き込んでいた。南に侵攻する、特にビャグンを攻めるならマジェルナの丘は気になる要地だった。


「今のところ全く動きがないのですよね」


 不思議そうに副官のケンザも首を捻っていた。


「単に『男王』と仲が悪いとかではないのですか」


 酒杯を片手にベテラン武官たちは、単純に考えたいのかそう言って笑っていた。


「その可能性もあるのだが、指揮官の経歴も謎なので全く分からない」


 エミリエンヌは、そう言うと静かに目を閉じて考え込んでいた。


「キト家の名門貴族の出であることは、分かっているのですが……キト家では特に戦いに参加したこともなく……政略結婚の際に一緒に『男王』についてモントに来たようです」


 ケンザが補足の説明をしてくれるのを、ベテラン武官たちは真剣に頷いていた。


「しかし、ヨム家との戦いで大抜擢され、先日の南ヒイロ帝国内戦の際には、見事な活躍で現皇帝派を勝利に導いている」


 エミリエンヌは、再び目を開けるともう一度この近辺の地図を指でなぞりはじめた。


「ここから……南ヒイロに侵入して……ゴーディナの街を陥落させている。ずっと前から私が北から攻めるならこのルートで攻略すると考えていたところだ」


 その言葉に、ケンザたちはその戦略の何が効果的なのかは理解しきれていなかったが、エミリエンヌ様に匹敵する才能なのかもしれないと考えると一気に緊張した空気になった。


「先にやられてしまったので、別の作戦を考えなくてはいけなくなったよ」


 エミリエンヌの方は、特に脅威に感じているというわけでもなさそうで笑っていた。その笑顔に周囲の部下たちは『エミリエンヌ様についていけば大丈夫だ』と思いほっとした空気になっていた。





 一方、その頃、マジェルナの丘では顔面蒼白なルナの姿があった。


「丘をひたすら守っていてと言われたけれど、噂のエミリエンヌ軍が攻めてきたらどうすればいいのかしら……」


 丘の上の大きな屋敷。昼間は警備を固めながらも、どちらかと言えばウリルの飼育の方に時間を取られるいつもどおりの日々を過ごしていた。不安はあったのだけれど、あえていつもよりも屋敷の者にも警備兵たちにも笑顔多めに振る舞っていた。


 しかし、帝国軍敗退の知らせが届いた夜、改めてルナは応接間にフミを呼び出して悩んでいた。


「大丈夫です。陛下の指示に従っていれば……陛下やエリシア様の指示が間違っていたことなどありましょうか。今はマジェルナの丘の守りを固めましょう」


 フミはそう言って励ましてくれていたが、ルナの不安が払拭されることはなかった。


「陛下もエリシア様もそれどころじゃないかもしれませんし、私なんかの判断でフミさんや他のみんなが命を失ってしまったらと思うと……」


 ルナは椅子に座りながら、ひたすら下を向いたまま不安そうにそうつぶやいていた。胸の前で合わせた両手が震えているのを、フミが見かねて手を重ねてきた。


(ん?)


 ルナは我に返った。と言っても落ち着いて冷静になったのではなくて、もっと他の問題に頭がいっぱいになってしまったのだった。


「あはは、今後の方針を話すつもりが、こんな情けない愚痴ばかり言ってごめんなさいね」


 手を振りほどくことはできずに、ただ顔だけを上げてフミに謝っていた。


(フミさんは任務で励ましてくれているだけだから……あまりにも不甲斐ない上司を見かねてこんな風に……)


 そう思いながら、ちらりと自分の合わせた両手に添えられたフミの綺麗な手に視線を向ける。


(大きいけれど、綺麗な手……)


 思わずその体温を感じて、自分の頬も赤くなるのが分かってしまう。


「大丈夫です。ルナ様を守るために、私や警備の兵たちがいるのですから、守りきれなければ私どもの責任です」


 フミはいつの間にか床に片膝をついてもう片方の手も差し出して、ルナの両手を包み込むように握っていた。


(近い! 近い! そして、フミ様は顔が良すぎます!)


 武官のような格好良さと侍女のような可愛らしさとの両方を併せ持った中性的な顔のフミに下から覗き込まれるように見つめられてしまい、ルナは完全に舞い上がって頭の中がぐるぐると回っていた。


「わ、分かりました。頼りにさせていただきます。まずは陛下の指示どおりに丘の守りを固めていましょう」


 ルナはわずかに体をのけ反らせて、フミの顔から離れた。ただ、振り払いたくないので両手は握りしめられたままだった。


(私の顔が赤いのバレバレよね……)


「はい。分かりました。ルナ様、不安でしたら今夜は一緒におりましょうか?」


「え?」


 思いがけない申し出に、ルナの頭は更に混乱していた。


(どういう意味……? あまりにも不安そうだったから……ずっと部屋にいてくれるって意味よね)


「一緒に寝ますよ。護衛も兼ねて」


 にっこりとフミは笑っていた。


「ああ、そうね。護衛ね。うん、よろしくお願いするわ」


 からかわれているわけではないという事は分かったけれど、ルナはもう自分の心臓の鼓動がうるさくて、エミリエンヌ軍の脅威など全く頭から消えてしまっていた。





「や、やってしまった」


 翌朝。ベッドの上で裸で起きたフミは、青ざめた顔で引きつった笑いを浮かべていた。隣でまだ可愛らしい寝息を立てて寝ているフミの綺麗な体をもう一度観察する。鍛えている逞しい部分と、夫人たちにも負けない滑らかで綺麗な肌の部分が見事に調和がとれていて、改めて朝の光の中でうっとりと眺めていた。


(完全に私の好みなのよね……)


 今までの人生で格好良い武官にも、可愛らしいお嬢様たちにもあまり興味がなかったルナが、興味を持った初めての人だと言ってよかった。そして、昨晩、フミにしてもらったことを鮮明に思い出していた。


「昨晩、ちょっと甘えてしまったら……そのまま……フミってば強引!」


「ルナ様……? おはようございます」


「ひっ」


 ぼそぼそ言っていたら、フミが目を覚ましてしまったのでルナは飛び退るくらいに驚いていた。綺麗に小さく膨らんだ胸を隠すこともなくフミは、そのままルナの手首を掴んで引き寄せる。


「もしかして……昨晩のようなことは、お嫌だったのでしょうか?」


 悲しそうな顔で、見上げられてしまいルナはとても悪いことをしている気になってしまう。


「そんなわけありません。私なんかで良いのかと思ってしまいます」


「もちろん、ルナ様が良いのです」


 朝のベッドの上で、裸のままで向かい合い。二人は完全に恥ずかしさもどこかに吹き飛んでいた。


「嫌なわけではないのですね」


「はい、むしろ嬉しいです」


「それでは、これから毎日でもよろしくお願いします」


 変なテンションになってしまった二人が抱き合うのを、部屋の外では屋敷の侍女たちが声を殺しつつ、扉に耳を押し当てて聞いていた。


「どうやら、あの二人、やっと! くっついたみたい」


「本当に、じれったかったわー」


 静かに侍女たちは喜びあった。たまたま屋敷に足を運んでいた警備隊長のカメリアにもすぐに耳打ちで報告されてしまう。にんまりと笑ったカメリアの様子からもマジェルナの丘中の警備兵に知れ渡るのに時間は時間の問題だった。






「やはり一度、モントに戻って準備を整えることにしましょう」


 天幕からでて、エミリエンヌは朝日を浴びながらそう決断する。このまま一気にビャグンになだれ込むことも考えていたが、攻略に手間取った時の被害が大きそうだとじっとマジェルナの丘の方向を見つめたままだった。


「ビャグンはもう目と鼻の先ですが……」


 早く戦いたい副官のケンザは、残念そうに一応の抵抗をしてみせた。今の自分達なら、挟み撃ちにされたとしても打ち破れるのではないか。先日の多戦いでそんな自信に満ち溢れていた。


「昨晩のマジェルナの丘の様子も偵察させていましたが、全く動揺した様子もなかったとのこと」


「左様ですか」


 ケンザは無表情に頷いていた。ケンザからすれば、それはもう北とも南とも手を切っているのではないかとさえ思う。自分なら大慌ててビャグンに合流してしまうだろう。


「準備万端だと思うべきでしょう。それにやはり率いる将は、噂通りの智謀に富みつつ、豪胆な人なのは間違いがなさそうです」


 エミリエンヌは、自分なら、じっと動かずにビャグンに攻めかかったところで、一気に丘を降りてきますと口惜しそうに言っていた。


「先にマジェルナの丘を攻めるのも不味そうということですね」


 ケンザには、名将同士によるどの場所を抑えたら勝ちなのかがという駆け引きが自分の理解を超えているので諦めつつも、それだけは聞いてみた。


「たいした兵力はないはずなのですが……。それだけにマジェルナの丘に時間を掛けるのは危険です」


「分かりました。全軍一旦、モントの城に退却させます。まあ、援軍が来てくれれば、無敗の名将殿も牽制してもらえますし、そうすれば南の侵攻に全力を注げましょう」


 おおらかに、ケンザは笑っていた。この経験はまだ少ないが、雄々しく陽気な若者のおかげでエミリエンヌは随分と救われている感じていた。


「そうだな。援軍が来てくれれば」


 エミリエンヌは、その時にはビャグンはもちろん、南ヒイロ帝国の帝都カーレット攻略まで一気にできるのだと力を込めて握る拳に力を込めていた。

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