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田舎の城からの生き残りハーレム増築戦略  作者: 風親
第2章 幼女と軍神編

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夫人たちの別れ

 その晩のエトラ家での食事は気合いの入ったものだった。見た目も色とりどりなのに加えて、じっくりと丁寧に調理された料理たちは、なんとしても喜ばせてやるぞというエレナについてきた職人たちの熱意を感じさせるものだった。




「ふう、美味しかった」


 珍しく食べ過ぎたタモンは、エレナの部屋に入るなりちょっと苦しそうにしていた。


「旦那さま、どうぞおやすみください」


 エレナは優しくベッドに案内をしてくれる。ただタモンからすれば、強く手を引っ張られて、ベッドまで連れてこられたという気がしてしまう。もちろん、もうお互いのことはとてもよく分かっているので、多少強引でもタモンも別に不快に感じたりはしなかった。


(横になったら寝てしまわないかな……)


 タモンとしては、そんな心配をしているくらいだった。エレナは期待はしているのだろうし、相手をする前に寝てしまったりしては怒られてしまいそうと考えてしまう。


 そうは思いながらも、苦しかったのでベッドに腰掛けて、そのままゆったりと倒れこんでいた。


「ふふ」


 エレナは笑いながら、タモンが寝転んでいる頭の横に腰を下ろして髪をなでていた。


(悪くない。素敵だ)


 うとうとしてしまいそうとは思いながらも、こんな美人の妻に頭を撫でられてタモンはいい気持ちになっていた。すぐ下から見上げたエレナのふくよかな体は、柔らかそうで見ているだけで幸せになるとタモンはしみじみ思っていた。


「エレナ。フカヒに戻ったら」


「はい。なんでしょう?」


「あの、魔法塔を調べて、特に地下を」


「地下ですか? はい。あの大魔法使いさまに通じるなにかがあるんですね」


「というよりは……多分、確か、道がある」

 

「分かりました。トキワナ帝国へもつながるかもしれない道なのですね」


 タモンもその言葉には自身がなかったのか、曖昧にうなずくだけにしておいた。

    

「ああ、こんなに賢くて綺麗なお嫁さんがいる僕はなんて幸せものなんだろう」


 タモンは、エレナの腰に手を伸ばしながら少し寝ぼけたような声でつぶやいた。


「それでは、頑張って生き残りませんとね」


 エレナは優しく微笑むと、そのまま横向きのまま顔を近づけて、タモンの顎に手を回して唇をそっと重ねた。二人とももう手慣れたものだったけれど、どこか興奮しつつ見つめ合うともう一度、深く唇を重ねると舌を絡めあった。


「旦那さま。このまま可愛がっていただく前に聞いておきたいことがあるのですけれど……」


 そのまま、抱きしめてエレナもベッドに寝かせるのだと思って伸ばしたタモンの手は空を切って、少し怪しげな目つきでエレナはタモンを見下ろしている。


「な、何?」


「旦那さまは……避妊の魔法を使っていらっしゃいます?」


 そう聞かれた瞬間にぎくりとして体が動いてしまったと、タモンは焦ってしまう。


「な、何で、そんなことを?」


 まだ何か確証があって聞いているわけではなさそうだとタモンは推測していた。


「もう、私やマジョリーがこの城に来てから一年近くの時間が経っていて、何度もこうやって体を重ねていますのに、四人のうち誰も子どもを授からないなんて変じゃないでしょうかと思いまして」


 エレナはそう言いながら体をずらして、寝ているタモンの下半身に跨がった。いつもよりも完全に男性の上に乗っているのは、満腹に主人に配慮したのかそれとももう今夜の目的を遠慮せずに狙っているのか。


(おそらく両方だよな……)


 そうタモンは、脚を動かせなくなって逃げられなくなった自分の現状を分析していた。


「もし、僕に子種がなかったら価値がないと思う?」


 予想していなかったタモンのそんな問いにエレナはタモンに跨がったままで、ちょっとだけ考えているようだった。


「『男王』としては価値がないですね」


「そうだよね」


 エレナは、きっぱりと言い切り、タモンはちょっと悲しげに笑う。


「でも……。気がついてないかもしれませんが……。私は旦那様のことかなり好きですよ」


 そう言って満面の笑みを浮かべながら、エレナは倒れ込んだ。


「かなり?」


 倒れてくるエレナを受け止めてエレナが上に乗ったままで顔から腰まで密着する二人だった。タモンはちょっとお腹は苦しかったが、楽しげに笑っていた。


「とても大好きですよ」


 エレナは大きく口を開けてにんまりと笑う、その口のまま更に倒れ込んできてタモンの唇を食べるかのように重ねてきた。大きくて柔らかい胸が弾力を持ちながらもタモンの胸を強烈に圧迫している。


「子どもを作らないようにしていたのは、夫人たちのバランスを崩さないようにということだと思いますが……」


 長い口吻からやっと開放されると、エレナは鼻と鼻が触れそうな距離のまま先ほどの話の続きをする。


「気にしすぎです。もっと領主は我がままでいいのです。エトラ家が不満そうでしたら、押さえつけてしまいましょう」


 力強く息がかかるくらいの勢いでエレナはそう言った。答えは最初から分かっていたらしいと、タモンは静かに微笑んでいた。


「そういうわけですので、今日から避妊の魔法は禁止です。薬だか呪文なのかは存じませんが」


「分かった」


 タモンはうなずくとしっかりとエレナの腰のあたりに両手を回して掴んだ。


「じゃあ、今晩からはエレナにも遠慮なく……強引に、朝まで楽しませてあげるね」


 エレナを少し持ち上げて、するりとエレナの足の下から抜け出るとそのまま横からエレナをベッドに倒していく。


 うつ伏せになって倒れていくエレナの豊満な胸に手を回して支えると、そのまま背後から覆いかぶさった。


「え。あの……別に乱暴にする意味は……ないのでは……ないでしょうか」


 いつもとても優しく触ってくれるタモンとは別の人ではないかと思うくらいに、押し倒されて強く胸を掴まれてエレナは困惑してしまう。いつもの寝間着ではなく、今晩はまだ宴会に出ている時の華美な服装のままだったので、煩わしそうにもう片方の手で服を引っ張りながら手を下半身へと侵入させていく。


「あ、あ、旦那さま。ちょ、ちょっとお待ちを」


 戸惑った声を上げながらも、エレナは普段とは違うタモンの強引な逞しさにときめいていた。もちろん、それはこの城に嫁いできてから過ごした時間の信頼があった上での話ではあるのだが。


「あ、ああっ」


 欲望をそのままぶつけられるのも悪くないとエレナは思いながら、シーツを掴んで身悶えていた。






 

「大丈夫ですか。エレナ様? とてもお疲れのような……」


 旅立ちの朝、エレナはイリーナにいらない心配をされてしまっていた。


「ええ、まあ……」


 エレナは、この純粋な女の子に夜の生活の話なんてしない方がいいし、余計な心配をかけたくないと思ったので先週と同じ様に適当に誤魔化そうとした。


「……イリーナちゃんも大人になれば分かるわ」


 ただ、この城を一人離れるのにあたって、この将来のライバルにちょっと牽制しつつ意地悪をしたい気持ちが芽生えてしまいちょっと意味ありげな言葉を付け加えていた。


「本気になった旦那様は夜は結構、激しいんですよ」


「ふえ」


 面白くなったエレナの更なる囁きに、イリーナは変な声を出しながら、段々と頭の理解が追いついていったのか徐々に顔が赤くなる。


「子ども相手に、何を勝ち誇っているのですか」


 イリーナの保護者であるかのように後ろで待っていたコトヒが文句を言う。コトヒの方もちょっと照れながら言っているのに気がつくと、イリーナは二人の顔を交互に見比べて意味を察していた。興奮しつつ、自分だけがのけものなのが分かってしまったのかちょっと悔しそうにしていた。


「エレナ様!」


 コトヒの後ろから、マジョリーとコトヨが綺麗なドレスを揺らしながら小走りで駆け寄ってきた。


「どうか、お元気で」


 マジョリーが息を整えている間に、コトヨが近寄ってエレナの手を握りしめた。


「私たち、別にそんな仲ではないでしょう。元々、ライバルな家……」


「エレナお姉さま!」


 エレナは湿っぽい別れなど好きではないし、そんな場合でもないだろうと思い突き放したような態度でいるつもりだったけれど、マジョリーに体当たりにも近い勢いで抱きつかれてしまい。それ以降の言葉が続けられなくなっていた。


「私たちそんな仲では……」


「せっかく仲良くなれましたのに!」


「えっ、いや、な、泣かないでよ」


 仕切り直そうとしたエレナだったけれど、子どものように抱きついたまま泣いているマジョリーの前に完全に失敗していた。


「あー。もう、一生のお別れにするつもりはないわよ。私は私で、旦那様を後方から支援するためにエトラ家に戻るの」


 あまり余計なことを言って、一人頑張っているという体にはしたくなかった。ただ、泣いているマジョリーに抱きつかれていると、タモンや他の夫人たちを見捨てて実家に帰るのだとは思われたくない気持ちに変わっていた。


「まあ、それは分かっていますけれど……」


 コトヨが特に冷静な顔でそう言うと、マジョリーもしばらくしてから大きく二回頷いていた。


「あー、そうね」


 変な空気にならないように、あっさりと別れようと思っていたのが今は、完全に裏目になってエレナは髪をいじりながら照れながら言葉を探していた。


「ですが、もう会えなくなってしまうかもしれません」


 コトヨ姉妹はそう言った。覚悟の決まっている顔つきに、さすがは跡継ぎ候補だっただけのことはあるなと感心していた。


「そうならないために、私が裏で暗躍するのよ任せていなさい」


 エレナにしても、絶対の自信があるわけではなかったが、不安そうな顔でこちらを見ているイリーナの表情が視界に入ってしまうと強がった言葉で安心させてあげようと言う気持ちが強くなってつい大きく自分の胸を叩いた。  


「北方との連携も重要になると思うから、コトヨとコトヒにはどの道、頻繁に連絡させてもらうわ。頼むわよ」


 それだけを言うと、エレナは旅立つために用意させた馬車に乗り込もうと歩き出した。


「必ずまたみんなで集まるのよ。マジョリーもしっかりね」


 エレナは自分でもらしくないと思いながらも、一度振り返り、悲しそうな表情をしている他の夫人たちを励まして、再会の約束をした。


(本当に、みんなで、また集まれるのだろうか……)


 こうやって、避難させている時点で北ヒイロまで攻められてしまうのはタモンの頭では想定していて、そしてそれはおそらく確実なのだ。


 こういうタモンの読みが外れたことはないのだとエレナは今までの出来事を振り返りながら思う。


「旦那様は、必ず勝つわ。私たちが支えるのよ」


 でも、そうだとエレナは確信する。マジョリーもそのエレナの言葉を聞いて涙を拭いながら力強く頷いていた。




 



「私も実家に戻ろうと思います」


 エレナを見送った後で、マジョリーはタモンに決意に満ちた表情で切り出した。


「……主戦場は北になると思うけれど、ビャグンもかなり危険だよ」


 タモンは、すぐに否定はしなかったけれど、優しく諭していた。


「危険ならなおさらです。うちの親はすぐに逃げ出して、南ヒイロとの連携もできなくなります」


 マジョリーは、自分でも何ができるかは分からなかったけれど力強くそう言った。


「まあ、それは……確かにね。だから……ルナさんにあの周辺の土地を見てもらっていたんだけれど……」


 タモンにとってもそこは頭の痛いところだったらしい。マジョリーの親に対する評価は二人の間でかなり低いところで一致していて揺るがなかった。


「……分かった。お願いしようか」


 かなり長い時間考え込んだのちに、タモンはこの綺麗な愛妻に賭けてみることにした。


「はい。お任せください」


「無理はしないでね」


 タモンは、そっとマジョリーを抱き寄せた。


 コトヨたちは邪魔にならないように少し離れたところで見ていたけれど、その光景によかったと感動にも似た気持ちで羨ましく見ていた。


 ただ、それと同時にタモンやマジョリーとも離れ離れになってしまうのだとやっと現実のこととして考えられるようになってきた。仲良しだったハーレム生活はもう終わりなのだと寂しい気持ちになっていた。

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