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田舎の城からの生き残りハーレム増築戦略  作者: 風親
第2章 幼女と軍神編

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領主ラリーサの攻略(後編)

「お父様って?」


 ラリーサの姿をした大魔法使いコソヴァレらしい人物が言ったことにタモンは困惑していた。


(そう言えば、トキワナ帝国から来たっていう大魔法使いも同じようなことを言っていたような……?)


 ランダとの戦いのあと忙しすぎてすっかり忘れてしまっていたけれど、自分のことを『パパ』とか言っていた気がする。どういう意味か確かめようとラリーサに詰め寄っていた。


「時間がありません。とにかくボクの魔力をお父様にお渡ししますから、そうですね。さっさとまぐわいましょう」


「え?」


「え?」


 タモンだけではなく、ラリーサの口からもラリーサ本人と思われる声がこぼれていた。


「ま、まぐわうとか! ラリーサさんに失礼だし……もっと他の手段があるでしょ」


「何をいまさら照れているんですか。どうせハーレムで綺麗な女性とやりまくりなんでしょ」


「そんなことは! ……なくもないけど」


 返答に困ってしまったタモンを、ラリーサの姿をした大魔法使いは冷静に説得しようとする。


「ボクは、もうとっくの昔に死んでいます。今の自分は本当にわずかの執念でこの世界と繋がっているだけの幽霊みたいなものです」


 だから時間がないのと続けた。


「わ、わたくしは全然かまいませんので……。いえ、む、むしろぜひお願いしたいくらいで」


 ラリーサの声で、お願いをされてしまった。これが、一人二役の演技だったら、大したものだと思う。

 最初は冗談だと思っていたタモンだったけれど、この怨念のような迫力は本物なのだと理解する。


「お父様はそこに座っていてくだされば、それでいいです」


「ぐ、ぐぬ」


 ついには実力行使をしようとコソヴァレだった。タモンは体を勝手に動かされて椅子へと座らせられてしまう。クッションが柔らかくて、特に痛かったりしないのは幸いだったけれど、自分の体が自由にできないのは恐怖だと感じてしまった。


 今まで、コトヒが体を乗っ取られるのとかを見ていてちょっと楽しそうだと思ってしまっていたことを心の中で懺悔していると、ラリーサの体が座っているタモンの膝の上に乗り、抱きついてきた。


「こ、こんなことに変な魔法……使わなく……て」


 タモンの抗議は、全く耳に入らないかのように、コソヴァレは楽しそうに器用に体を傾けながら、タモンのズボンを脱がしていく。両手はタモンの首に回したままで、下半身を刺激していきながら位置を調整する。


「んっ。……お分かりだと思いますけれど」


 そのままコソヴァレは、下半身を静かに沈めていく。


「この世界の始まりにお父様の遺伝子を組み込んで作られたのが、あっ、ああ」


 時々、とても、重要な話をしているのだと思うのだけれど、タモンの目の前にはラリーサの暴力的な胸が揺れていて深く理解する余裕もなかった。


「大魔法使いで……あっ、そこは……だめです」


 そもそも、大魔法使いが発している声なのか、ラリーサが発している声なのかも良くわからないままに、座っているタモンにまたがり上下に動く彼女の腰の動きに合わせていた。


(仕方がない。これが男というもの)


 タモンはもうすっかり最初の仕方なくやっている言い訳のことは忘れて、ただ普通にラリーサの体を求めていた。


「はあ……はあ、……よかったですよ。お父様」


 ラリーサの体を借りたコソヴァレに、椅子に座った自分の膝の上に跨がったまま抱きつかれて、そんな背徳的な言葉を言われてしまったタモンは困り果ててしまう。


「魔力は差し上げました。後は、そこの魔導書で勉強してください」


 ラリーサの姿をした何者かはワンピースからこぼれ出そうな胸を押さえながら、棚を指差した。


「勉強しないといけないの?」


「残念ながら、アイテムを手に入れたらすぐに何もかも使えるとはいかないのです」


 首に手を回しながら、笑っていた。


「いいですか、ボクの姉妹。つまり他の大魔法使いたちは、今は魔導協会に操られています」


 若干、声をひそめながらそう言った。タモンもあまり詳しいわけではないが、魔導協会が監視しているとしたら、多少声をひそめても意味がないとは思いながら聞いていた。


「うまく、倒すか解放してください。ただし、本来、男が使えるはずのない魔法を使えることは魔導協会にはばれないように」


 ウィンクしながらそう言った。ラリーサ本人はしたこともなさそうな仕草だと思った。


「解放?」


「魔導協会もあくまでも昔の決まりを守ろうとするだけの仕組みです」


 タモンの質問はもうコソヴァレの耳には届いているのかはよく分からなかった。言いたいことだけを早く言ってしまおうとしているように見えた。


「鍵も魔導書の中にあります。……お父様がもう終わりにしてもいいでしょう」


 どうやら、それが最後の言葉になった。


 優しい瞳で懇願されて、タモンはうなずきつつも抱きしめたラリーサの体にはもうコソヴァレと名乗った魔法使いの幽霊はいなくなってしまったのだと感じていた。


「慌ただしい娘だった」


 自分の遺伝子から作られたと主張していた幽霊は、やることだけやって細かいことを聞くこともできずに消えてなくなってしまった。


「『鍵』ってなんだっけ?」


 自分で探していながら、何のために探しているのかは思い出すことができなくなっていた。


「魔法自体も鍵か……」


 意識の無いラリーサの体を抱きしめつつ、タモンは横の棚の中で大切そうに飾られている魔導書に視線を向けていた。





「マリエッタ陛下。申し訳ありません」


 翌々日、タモンを迎えにきた皇帝マリエッタに対して、領主ラリーサは私室に通すといきなり深々と頭を下げて謝罪した。


「え? 何を?」


 部屋には、二人の他にタモンと皇帝陛下お付きの侍女のフリをしているエリシアしかいない。ラリーサと並んでいたタモンは何も聞かされていなかったし、何かあっただろうかと思い出しながら驚いていた。


(大魔法使いのことだろうか? いや、でも……特に謝罪するようなことはまだないはず……)


 マリエッタも緊張した面持ちで、次の言葉を待った。


「陛下の恋人であるタモン様と、一晩の契を交わしてしまいました」


 困惑するタモンの横で、ラリーサははっきりとそう言った。


 そんなことを報告しなくてもとタモンの顔は珍しくも青ざめていた。


『ほー。そうなんだ』


『さすがは、我が陛下。一晩あれば余裕で籠絡できるんですね』


 マリエッタとエリシアの目が細くなり突き刺すような視線で、タモンにそう語りかけていた。


「い、いや、あの、今回は特殊な事情があって……」


 珍しくうろたえて余計な言い訳をしそうになったタモンは、マリエッタに片手で制止された。


「余の愛人を信頼して預けたというのに、ラリーサ殿が手を出すとはどのような了見かな」


「申し訳ございません。全ては私一人がしたことです」


 ラリーサはびくりと怯えながらも、正面から向かいあってそう宣言した。


「タモン様も、この家に仕えている者たちも悪くありません」


 細かいことは説明せずに自分だけが罪を背負おうとする。


「止めることはできたのですが、欲望に流されてしまった私のせいなのです」


 続けたその言葉は、少し自信なさげに声が小さかった。


 タモンとしても、コソヴァレのことは話した方がいいのか、話したとして信じてもらえるのかは分からないので悩んでいる間に、マリエッタは芝居がかった言葉を続けていた。


「では、ラリーサ殿は、どのような処罰をも受けるということでいいのかな」


「はい。覚悟はできております」


 マリエッタの厳しい口調に、ラリーサははっきりと答えながらも、表情は硬く、顔もまた伏せてしまう。


「ふむ……それでは、ラリーサ殿は私の側近になってもらおうか」


「……は。はい」


 ラリーサは承諾したけれど、どういう罰なのかが理解できずに困惑した顔をしていた。


「ラリーサ殿には、帝都に来てもらって力を貸して欲しいという頼みだ」


「……私などでよろしければ」


 まだ目を丸くしながらも、ラリーサは何度もうなずいていた。


 その顔を見ながら、マリエッタは豪快に笑っていた。


「ははは。安心するがよい。まだタモン殿は、余の恋人というわけではない。タモン殿に強引に口説かれて、一晩をともにしたとしても何も咎めることはない」


 『まだ』を強調しながらも、マリエッタはラリーサを安心させるように優しい笑顔で優しい声をかけた。


「そう……でいらっしゃいましたか」


 深々と下げていた頭を上げて、ラリーサはちょっと安心したように交互にマリエッタとタモンを眺めていた。


「あくまでも『今は』だ。いずれは余の恋人にしてみせる」


 謎の高笑いのような声をあげたあとで、マリエッタはラリーサの耳元に顔を近づけた。


「だが、このことはまだ秘密にしておいて欲しい」


「はい」


「すでに、余とタモン殿は深い仲で仲睦まじくこの別荘でも過ごしていたことにしておきたい」


「なるほど、承知いたしました」


 政治の表舞台からは、かなり距離を置いているラリーサではあったけれど、マリエッタがしたいことは理解したように目を合わせて真剣な面持ちでうなずいた。


「分かりました。この身は陛下……とタモン様に尽くしましょう」


 ラリーサは、片膝をついてマリエッタに手を差し出した。と同時にタモンの方に視線を送り微笑んでいた。




「あんなにあっさりばらしてしまうのでしたら、僕などいらなかったのでは?」


 帰りの馬車の中で、タモンはピタリと隣に並んで座っているマリエッタの横顔を見ながらそう聞いた。


「人によるであろう……真面目なラリーサ殿は早く許してあげて、こちらからお願いをしたほうがいいと思っただけだ」


 こういう時のマリエッタは、やはり十一歳の女の子にはとても見えないとタモンもエリシアも思っていた。


「最初から、余がお願いをしても上辺だけのいい返事をするだけであろう……」


 少しため息まじりにそう言ったように聞こえた。


(昔からの家臣や、近い親族ほど信用ができないのだからなあ……)


 今、こうやって他国の人であるタモンやエリシアを連れていっているというだけで、この幼い皇帝の苦労が推測されてしまう。


「タモン殿に抱かれたからこそ。この人の役に立ちたいと久しぶりに思うこともできたのであろう」


「そんなものでしょうか」


「ふふ、では、今回のような感じであと二、三人、近くの領主を口説いてもらおうか」


「いや、無理です。無理」


 頬に触れそうなくらいに近づいて、そう命令するマリエッタに、タモンは顔を引きつらせながら両手を振っていた。

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