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田舎の城からの生き残りハーレム増築戦略  作者: 風親
エピローグ 新たな日常

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日曜日

「僕に子ども……ができた……だって……」


 タモンは誰もいない後宮に一人入り、ベッドに横たわっていた。


 その日、コトヨはタモンの子どもを産んだ。

 朝から、タモンも大慌てで医者を呼び、もう効果があるのかは分からないがおばばさまと一緒にお祈りをしていた。

 血だらけの大変な光景にタモンは、戦場よりも不安でいっぱいだったが安産でしたと言われてしまいこれで安産なのかと衝撃を受けていた。


 多く血を流したらしいコトヨのことをいたわりつつ、医者を常駐させてゆっくり休ませていた。


 昼からはどこから嗅ぎつけたのか、訪問客があとを絶たない。好意を無下にするわけにもいかずに、短い時間ながらも次々と応対していった結果、もう深夜になってしまっていた。


「いいんでしょうか。マイ先輩」


 天井を見上げながら一人つぶやいた。


 ここは始まりの魔法使いマイのために作った後宮だった。だが、結局、マイ先輩がこの後宮に住むことはなかったとタモンは残念に思いながら周囲を見回す。


 他の後宮たちが豪華に立ち並んだせいで、この建物は真ん中に一つぽつんと小さな小屋みたいに立っていた。


 時々、タモンが自ら手入れをしつつ、今、世界から失われつつある魔法の痕跡を集めたりしてそれなりのコレクションになっている。


「陛下」


 誰もこないだろうと思って油断していたところだっただけにその声に驚いてベッドから慌てて身を起こした。


「申し訳ありません。こちらに入っていくところをお見かけしたものですから」


 入ってきたのは宰相エリシアだった。部屋の入り口で書類を抱えつつ、遠慮がちにタモンを覗き込んでいた。


「もしかして、ここには入ってきて欲しくなかったですか?」


「えっ? いや、そんなことはないよ。今はただのコレクション置き場だよ」


 タモンは否定する。

 しかし、自分でも最近、一人で感傷に浸りたいときにはここに来ているような気がしてしまっていた。


「……他の方には教えないようにしておきますね」


 全てお見通しのようにエリシアはそう言った。


「あ、うん。僕たちだけの秘密ね」


 そのタモンの言い方にエリシアは少し照れたように目線を逸していた。


「……どうしたの? 何か、急ぎの事態でもあった?」


「いえ、急ぎのお仕事はありません」


 ただ、何かを確認するかのようにじっとタモンの表情を伺っていた。


「そういえば、ショウエの話を聞きました」


 タモンの声を聞いて、心配事はいったん忘れたかのように、エリシアはにこりと微笑んだ。


「あ、いや。その……」


 妻でもないエリシアなのに、何故かタモンは慌てていた。


「別に、良いことだと思いますよ。簡単に恩賞に領地を与えたりすれば後に面倒ですからね」


 淡々とそう言ってくれるのだが、タモンはものすごく裏に棘があるように勝手に感じてしまうのだった。


「でも、もしかして毎晩二人ずつお相手されているんですか?」


「ぶっ、い、いや、そんなことないよ。カトリーヌさまには手を出していないし、イリーナやクリスティアネもまだだから」


「『まだ』」


 別に責めているわけではないのだが、タモンは動揺していた。


「数年後が大変そうですね」


 イリーナたちまで大人になったら、ゆっくり休める日がなくなるのではないかと本気で心配してしまう。


「お妃様たちの機嫌を損ねないように、気をつけてください。バランスを取りつつ、周辺の有力者の跡継ぎに陛下の子を送り込んで地域を安定させなくてはいけませんから」


 そういえば、エリシアは最初からそう献策してくれたのだと思いだしていた。


「そうだね、エリシアの言う通りにしたおかげで生き延びられているよ。ありがとう」


 名宰相に感謝をしつつも、ただずいぶん当初の話よりもかなり規模が大きくなった気はしてしまう。


「もう、陛下に戦場に行っていただくのはやめていただきたいですけどね」


「ごめん」


 トキワナ帝国から戻って来た時に心配をかけすぎてやつれた表情だったことを思い出して、本当に済まない気持ちになっていた。


「……陛下。いなくなったりしないでくださいね」


 不意にエリシアは目に涙をためながらそう声をかけた。この部屋まで追ってきたのはそんな心配があったからなのだろう。


「うん。大丈夫」


 エリシアには、トキワナ帝国であったことも、過去のことも全部は話していない。

 それでも、どんなことがあってタモンが何に悩んでいたのかもほとんどお見通しのようだった。


「僕なんかがのうのうと生き残っていいのかなとも思っていたのだけれど、……でも、子どもを見たらやっぱりすごいなって思った。うん、うまく言えないけれど、僕はこれでもしっかりと生きるよ」


 昔の人々を守れなかった。いや、見捨てたことはタモンにとっても負い目だった。


 マイ先輩もいないのに自分だけがという気持ちもあったが、生まれてきた子どもを見てこの子が大きくなるまで見守ろうと誓った。


「そうですね。まだまだ先は長いです。じっくりいきましょう。今日、生まれた皇子さまの頃になってやっと落ち着くかもしれません」




 エリシアのその予言は十数年後に的中することになる。


 この日、タモンとコトヨの間に生まれた長男は、弟妹たちと手を取り合い、大陸の西半分を制圧する大帝国を建国することになった。


今作はこれで完結になります。


小説家になろうは、すごい昔に一度投稿して全然反応もなくてそれ以降放置していた以来の投稿なので、

再度投稿してみようと決意しながらも、読んでもらえる人もきっとせいぜい二桁とかひょっとしたら一桁かもとか思っていたのですが、意外に多くの人に読んでもらえて反応もいただけて嬉しかったです。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。


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よろしくお願いします。


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