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田舎の城からの生き残りハーレム増築戦略  作者: 風親
エピローグ 新たな日常

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火曜日のエレナと水曜日のマジョリー

「ようこそ、いらっしゃいました。旦那さま」


 タモンはエレナの後宮を訪ねたはずなのに、扉を開けて出迎えたのはマジョリーだった。


 一番、活気に満ちたこの後宮ではマジョリーの後ろでエレナの侍女たちが何人も並んで出迎えてくれる。

 後ろでは慌ただしくエレナとマジョリーが抱える料理人や侍女たちが食事の準備に駆け回っている。

 顔なじみのメイやランの姿も見え、軽く会釈をしてくれたけれど、慌ただしく何かを運ぶために奥へとすぐに行ってしまった。


 かなりおかしいはずのこの状況にも、タモンはだんだん慣れてきてしまった。


「すっかり二人は仲良しだね」


 タモンからすれば、この人ならと見込んだ二人の正妻が意地を張り喧嘩ばかりするのは避けたいところだった。

 そんな険悪な状況にならないためにも、二人を正妻ということにしたのだから、ほっとした気分にもなる。


「別に、私たち仲良くなんてありませんわ」


 部屋で出迎えたエレナは、腕を組みそっぽを向いてそう言う。


「一緒にトキワナまで大冒険もしてしまいましたから、もうエレナお姉さまのことは理解しています」


 マジョリーの方は微笑みながら素直に親しみを口にする。

 エレナのこの一見冷たそうな態度は、むしろ親しくなり好きだからこそであって、普段はどんな嫌な相手であっても営業用の作った笑顔を忘れることはないのだと解説してくれる。


(そういう意味じゃ、僕にも打ち解けてくれたのだろうか)


 自分に利益があるからタモンのところに嫁にきた。

 地方領主の有力者な夫という取り引き相手に対して、外面のいい笑顔を絶やさなかった。

 今まではそんなイメージだったけれど、今は少し心を許してくれている気がした。

 その代わりに厳しい指摘や悪態も増えた気がしたけれど、今は三人はまるで仲のよい同級生のようだとタモンは感じていた。


「今日は何でこの部屋なの?」


 タモンは周囲を見回した。いつもは最初に出迎えて食事をとるのは大広間だった。

 その場で食べるのはタモンとエレナとマジョリーの三人だけなのだけれど、大きなテーブルに大量の料理が並べられて、いつも壁際には何かあった時にすぐにお世話できるように侍女たちが何人も並んでいるのが常だった。


 ただ、今日はすぐにエレナの私室に通された。


 最上階にあるその部屋は、眺めも風通しもよくてほどよく飾られた綺麗な部屋だった。ベッドがあり、鏡台などもあってエレナが普段どのような生活をしているのかを感じることができた。


 今日は、その部屋に豪華な料理が運び込まれていた。


 タモンの感覚でいえば、この部屋はとても大きい部屋なのだけれど、大きな机が運び込まれてその上にいつもなら三つや四つの机に並べられている料理が並べられると流石に少し、ごちゃっとした感じを受けてしまう。


「いえ、旦那さまが食べる時まで人が多いのはくつろげないと……お、お噂で聞きましたもので」


 エレナはそう答えたけれど、後ろの方は、エレナらしくなくぼそりと話したのが気になった。


「そんなことは……そんな話をしたかな」


 タモンは困ったように腕を組んで首を捻っていた。


 いつだって、夫人たちはそれぞれ趣向をこらした美味しい料理を与えてくれる。

 しばらく逃亡生活をしていた頃から考えればこんな温かい料理が食べられることには感謝しかないので不満を口にしたことはなかったし、不満なんて言わないようにしている。


 とはいえ、確かに、もともと人が多いところで大騒ぎが好きなわけではない。許されるのなら、一人、部屋で本でも読んでいる時間がたくさん欲しいと思っている。


(最近、でも、そういえば、そんな話を……どこかでしたような……)


 そう考えて、一つの答えに行き当たった。


「エレナ。もしかして、エミリエンヌのところに密偵でも送り込んでいるの?」


 タモンは、エレナの目を覗き込みながらそう言った。


「い、いえ。そんな。密偵だなんて大げさな」


 エレナは手を振って否定するのだが、すぐに否定しすぎてしまったという感じを出していた。


「なるほど、ちょっとエミリエンヌの従者たちに金を掴ませて時々情報を得ているってことね」


「そ、そんなことは……」


 明らかに図星だったようで、エレナの目は泳いでいた。


 普段なら、まだまだ何も知らない顔で押し通すところだったが、タモンが相手なので抵抗も諦めて反省した色を見せていた。


「あとは、途中で帰られたりしないようにですね」


 マジョリーは、しょげているエレナの様子を横で見ながらタモンに話しかける。


「え、途中で?」


「この間、大広間で寝てしまって、そのまま明け方に帰ってしまったではないですか?」


「あれは、ジュースかと思ったらお酒だったから……。ちょっと楽しくなって、でもすぐに眠くなってしまったんだよね」


 マジョリーの後宮での出来事を思い出していた。おそらくランがマジョリーのために気を利かせてお酒にしておいたのだろうけれど、まだまだお酒には強くないタモンには逆効果だった。


「とにかく、お食事が済みましたら、すぐそこで休んでいただいて、私たちのお相手をしていただきたいのです」


 マジョリーは言ってから、さすがにぶしつけで直接的すぎたと顔を真っ赤にして照れていた。


(なるほど……ふたりともコトヨに対して焦っているんだな)


 正妻な二人ではあるけれど、今はライバルに後れをとっている。そんな風に思っているのだと納得していた。


「まずは楽しく料理をいただきますか。大丈夫、夜は長いから二人とも可愛がってあげる」


 夜の生活を爽やかに言うタモンに、エレナは『そんなに望んでないです』という態度だったが、マジョリーはまだ照れて頬に両手を当てていたままだったけれど、更に顔を真っ赤にして楽しみそうにうなずいていた。

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