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田舎の城からの生き残りハーレム増築戦略  作者: 風親
第3章 最後のお妃編

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大魔法使い攻略会議

「オレが援軍でした! なんて! ちょっと意外でありましたでしょう」


 シュウは逞しい肩を仰け反らしつつ笑いながら、タモンの前へと歩み寄ってきた。


 北ヒイロのニビーロ方面からの帝都攻略部隊は、トキワナ帝国へ侵入したところで一時、武官たちが再合流したところだった。


 帝都も近い森の中で集結したタモンたちに驚いてもらえるだろうかと思いながらシュウは入場したが、あまりその場に集まった武官たちの反応は大きくはなく、どちらかと言えば冷ややかな反応だった。特に南ヒイロ帝国から来ている武官たちは愛想笑いさえなかった。


「失礼ながら、どちら様でいらっしゃいますでしょうか?」


 エミリエンヌは、本当に誰だか分からないのでおずおずと手を挙げて質問していた。


「シュウです! ミハト様の一番弟子の! エミリエンヌ様が北ヒイロに侵攻してきた際は、真っ先に戦いを挑み。そしてあっさりと負けましたシュウです!」


「あ、ああ、あの時の……元気な若者ですね」


 ある程度予想はしていたが、シュウはエミリエンヌにまで全く覚えられていなかったことにショックを受けていた。


 エミリエンヌもひょっとしてと思いながらも聞いたが、とても気まずい答えに困り果てていた。そう言われても、エミリエンヌに勇ましく挑んできて、あっさりと負けた武官は掃いて捨てるほどいるだけにいちいち覚えていることも難しかった。


「まあ、無事で何よりだったよ。ヨライネ将軍の軍を預かってきたということでいいんだよね」


 気まずい雰囲気を察して、タモンが優しく声をかけてくれた。


「はい。捕虜となってしまい。それからも変なおばさんに無理やり相手をさせられ、ニビーロ国まで連れ去られてしまいましたが、ヨライネ将軍に助けていただき今日に至ります」


「あ、それは、色々と大変な目にあわせてしまい……申し訳なく……」


 明るくシュウは言っていってくれていたが、エミリエンヌは益々、肩身が狭くなってく。シュウが捕まった原因は自分であるし、捕虜を丁重に扱わないドミクルたちに代わり、ニビーロ国を代表して深々と頭を下げていた。


「まあ、ですがヨライネ将軍やその部下たちとは妙に意気投合して気に入ってもらえました。ヨライネ将軍は、どうしてももう自領で隠居したいとのことなので代わりにオレが全軍を率いてタモン陛下の手助けをしてこいと任されたわけであります」


 エミリエンヌは意外な大抜擢とは思うが、一度は敵対した身であるのでもう北ヒイロ出身の武官に全て任せてしまうというのは、配下の軍を考えれば一番安全な手であるかもしれない。ヨライネ将軍からすればいいところにいい人材がいたものだと思う。


 タモン側から見ても悪い話ではない。ヨライネ将軍が自ら先頭で率いてはくれないが、優秀な武官が復帰して、ヨライネ将軍の軍はほぼ完全に配下として扱うことができることになるのだからと納得していた。


「でも……あまり、タモン陛下はお喜びではないみたいですね……」


 シュウはショウエに向かって耳元で囁いていた。


 シュウは自分の登場にタモンが驚きつつも、帝都攻略の頼もしい援軍として喜んでくれるんじゃないかという想像をして、ショウエと打ち合わせていただけに、少し寂しくあり何か想定外の事件でも起きてしまったのかと不安になって聞いていた。


「大丈夫です。シュウが来てくれたことはとてもお喜びですよ。ただ……ちょっと、そのタモン陛下の……好きな人? ……がですね。敵に操られて立ち塞がってきたのです」


「ふむ……」


 合流したばかりで先の戦闘での話をあまり知らないシュウに、ショウエは説明する。ただ、田舎育ちの武官であるシュウには操られた魔法使いのあたりでもう自分の生きてきた世界からは程遠い話だと思い理解できていなかった。


「タモン陛下の前で、ひそひそ話などするものではないでしょう」


 エミリエンヌが二人のすぐ横で苛立ったような声で注意をした。確かに、陛下の前ということを考えれば不健全な会話だった。ただ、それほど堅苦しい場所でもなかっただけにエミリエンヌの声でこの場は一気に静まり返っていた。


「まあ、気にしなくていいよ。ショウエは、僕の個人的な関係に気を使ってくれているのだろう」


「はい。申し訳ありません」




 笑顔でその場を和ませようとするタモンに、エミリエンヌは恥ずかしそうに頭を下げていた。


(私の方が、『タモン陛下の好きな人』に嫉妬しているだけなのだ)


 自分でもその事には気がついてしまい恥ずかしい思いで顔を伏せていた。


「僕は実は、北ヒイロに来るまでの記憶があまりないんだ」


 ショウエはエリシアを通じてその話を聞いていたが、エミリエンヌは以前に一時住んでいた後宮の話として聞いたくらいだった。ましてやそれ以外の人物は初耳だったのでわずかに驚きの声が漏れていた。


「でも、時々思い出すことがあるんだ。あの人は間違いなく僕の大事な人だ」


 タモンのその言葉に、エミリエンヌは思いがけずショックを受けて胸が張り裂けそうな思いだった。先程から伏せ気味だった顔がもう床を見つめているようだった。


(落ち着きなさい。別に、他に夫人だって何人もいるのに……何を今更……) 


「そして、間違いなく大魔法使いと同等の力を持っているんだよね」


 タモンはそう言ってため息をついた。


 今回の作戦は、大魔法使いヨハンナを危険視して倒せないまでも魔力を使わせる作戦だった。一大決戦の時に、強力な大魔法を本隊に撃たれてしまうことだけが一番の懸念だったが、作戦はうまくいきおそらく暫くの間ヨハンナは脅威にならないだろうと安堵したのはほんの一瞬だけだった。


「魔法も備えていればこちらが有利だ。大魔法使いもう一人くらい、僕の方で受け止めるよ」


「おおっ」


 タモンは心配させまいと言い切ったその言葉に、配下たちからはどよめきが起きていた。


 少し前なら、そんな言葉は信じられずに怯えて不安の声だらけだったかもしれないが、先の戦いを経験しているだけに、どうやらうちの『男王』様はすごい魔法が使えるらしいと崇めるような視線を集めていた。


(嘘ではないけれど……あのもう一人の娘は何者なのだろう……?)


 マイ先輩一人だけなら何とかなると思うが、あの娘が大魔法使いと同じ力を持っているとしたらどうなるだろうとタモンは内心では不安に思っていた。


(しかし、もう時間をかけるわけにはいかない)


 ヨハンナが休んで魔力を取り戻してしまえばそれこそどうにもならなくなる。危険はあってもここは一気に勝負を仕掛けるときだとタモンはもう一人の女の子については一旦忘れることにした。


「ご安心を、南ヒイロ帝国の魔法使いも集中してタモン陛下を守らせます」 


 それまで一歩下がって、北ヒイロの軍の話にあまり口を出さないようにしているようだったラリーサがそう声をかけた。  


 宮廷付きの優秀な魔法使いが十人束になったところで、大魔法使い一人にかなわない。ラリーサはそのことを良く知っているが、南ヒイロ帝国の重鎮としてもここはタモンに賭けてみることにした。タモンを失いたくないという私情が入っていることも自覚はしていたが、少しでも手助けをしてタモンを守ることがトキワナ帝国の不気味な魔法使いたちに勝つ一番の手だと判断した。


「私は、その魔法使いのことを存じませんが、おそらくもうこそこそしても無駄なのでしょう?」


 ラリーサもちょっと苛立ったような声で話しているなと、エミリエンヌは顔を伏せたまま感じていた。


「そうですね。おそらく、マイ先輩は僕がどこにいても見つけ出してしまうでしょうね」


 タモンはしれっとそう言った。その言葉がラリーサとエミリエンヌは更にもやっとしてしまったことが伝わってはいないようだった。


「でしたら私もエミリエンヌ様も全力でお守りいたしますので、合流して南下いたしましょう!」


 ラリーサは南ヒイロ帝国の指揮官としてそう宣言する。


「ね。エミリエンヌ様?」


 先程の勇ましい声とは打って変わり、可愛らしくウィンクをしながらエミリエンヌに同意を求めていた。


「はっ、必ずやタモン陛下をお守りいたします」


 エミリエンヌは、顔を上げてラリーサの瞳をしっかりと見つめながら力強く宣言した。


 厳密にはタモンの配下ではない二人による頼もしい言葉に、この場にいる人で異論を唱えるものはいなかった。


 いよいよ帝国同士による一大決戦の時が迫っていると周囲の指揮官たちの空気も引き締まるのだった。

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