【一場面小説】ジョスイ物語 〜如水、英傑を束ねるノ段
上方で勃発した石田らの乱は、関ヶ原での大戦で多勢は決したようだ。が、如水は諸城を降しながら九州を南下し、島津との決戦に臨まんとしている。
古の諸葛孔明は斯様な人であったか。栗山は主君の貌を見上げた。粗末な輿に乗った如水は、白熊の毛を束ねた采配を握り神妙な表情だ。 百戦錬磨の策士というよりは古寺の和尚を想わせる佇まいで、錏に孔雀の羽を配った奇抜な兜が不釣り合いで可笑しい。 栗山は若い時分から変わらない、主のそういったところが好きだ。
それにしても、豪華な陣立だと栗山は唸る。先鋒には言わずと知れた鬼将軍、加藤虎之助清正。右備えには鎮西一の弓取り立花宗虎、左には強かな鍋島父子。そして本陣は軍師如水が率いて島津を討つ。三国志に喩えるならば勇猛な加藤は張飛か。義に篤い立花が関羽ならば、鍋島はさて、。
かつてこの九州の地で敵味方として戦った漢達が恩讐を越え、如水と手を携えて此度の乱を締め括る。再び戦乱の世に戻さぬ為に。