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アン・ファミーユ(家族とともに)第2部  作者: 湖灯


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【妹、ナトー・エリザベス・ブラッドショーの秘密③(Sister, Natow Elizabeth Bradshaw's Secret)】

 数日後にナトーの手術に関するカルテが届いた。

 封を開けて先ず気になったのは、その日付。

 “この日付は……”

 それはイラクでのグリムリーパー掃討作戦が行われた日にちと同じだった。

 時間もローランドがグリムリーパーに射殺された直ぐあと。

 今まで忘れるようにしていたローランドとの甘い日々を思い出してしまいそうになるのを我慢して、カルテを読み進める。

 ナトーは数カ所の骨折と、それよりもかなり多い打撲痕があった。

 コレは山から滑落した患者に多く見られる症状。

 だがバグダッド周辺には、滑落して大怪我を負うような山はない。

 “ひょっとしてグリムリーパーを狙って放たれた砲弾で崩れた、あの住宅に居たのか!?”

 もしそうだとしたら、私は自分が発明した武器ゴッドアローで危うく大切な妹を殺してしまう所だったということになる。

 なんてことだ!

 いかに精密射撃ができると言っても、目の届かない所を狙い撃つ長距離攻撃は見えない不幸を招く。

 大怪我をしたとは言え、ナトーが無事だったことにホッとした。

 次にクラウディから送られてきた2つの重い段ボールの1個目を開くと、そこにはサオリたちのもとでナトーが勉強したという数々の本が入っていた。

 数学に国語、物理や化学、歴史に地理、それに英語とフランス語……。

 ナトーが赤十字に居た時期は、丁度ジュニアハイスクルールからハイスクールの途中までの期間だが、これだけの書物を読み習得したのであれば相当な勉強量だったに違いない。

 だがそれは一般レベルの人間が対象であれば、ということ。

 もしもナトーに私と同じような学習能力があれば、この短い期間内にでも働きながら習得することは十分可能で、むしろこの程度の一般常識の勉強なら時間を持て余すことになるだろう。

 続いて2個目の段ボールを開ける。

 ここには家庭科や美術に音楽、保健体育と言った、生活上身に着けておくと便利な教科書が入っているものだと思って開いたが、そこに入っている本の数々を見て驚いた。

 入っていた本は、危険物取扱い責任者教本や電子機器、機械保全、電気保全などの技術系専門書の他に、幾何きか学・代数学・力学・理学・化学・地学・軍政学・兵学・築城学・通信学など士官学校で習う教本の他に、光学探知機器や各種システムの運用方法など軍隊に配属された後に習得する教本も入っていた。

 仮に、これだけの内容を実際に習得していたとしたら、佐官級昇進試験にも難なく合格してしまうだろう。

 いったい柏木サオリと言う女は、ナトーに何をさせようとしていたんだ……?

 “POCの強硬派の一員なのか?”

 いや、メェナードさんの目的はその強硬派を一掃することにあるのだから、まかり間違ってもそんな女と手を組むことはない。

 だったら何故……柏木サオリに関する情報が少なすぎる。

 彼女に関して今わかっている事と言えば、生前にママが務めていたPOC証券に一時期営業部員として働いていた事と、赤十字に医師として従事していたこと、そして僅かな期間だったがテクニオンに研修生として来ていたことと、事件に巻き込まれて犠牲になったことだけ。

 私の両親が死んだ時期にママと同じ会社に居て、ナトーが大怪我を負った時は医師として、そして私が酷い虐めに会った時にはイラクを離れてイスラエルに来ていた。

 柏木サオリは只者ではない。

  私は直ぐにテクニオンのサイトをハッキングして、研修生だった柏木サオリの名簿を調べた。

 分かったのは、彼女が東亜東洋商事の社員として研修に来ていたこと。

 東亜東洋商事と言えば、SISCONと言う偽善団体の中枢。

 その女が何故……。

 !

 そう言えばメェナードさんと一緒に日本に旅行に行ったとき、別々行動をとり横浜駅にある駅ビルの2階にあるカフェで待ち合わせをしていたときの事。

 あの時、待ち合わせの時間が過ぎても来ないメェナードさんの携帯に連絡をしようとしたが、彼の携帯は電源が切られていた。

 そしてどこかで格闘戦をしてきたように、スーツが着崩れていた。

 メェナードさんは、そのことについて待ち合わせ時間に遅れないように品川から新幹線に乗ったら新横浜と言う横浜から離れた駅に着いたからだと言っていて、その時は私も何も疑わなかった。

 でも、メェナードさんが私を待たせることなんて今までなかった。

 いかなる理由があろうとも、メェナードさんは私との約束を第一に考えてくれる。

 そして携帯の電源が切られていたことも、ただのバッテーリー切れにしては不可解だ。

 コレは私の推理に過ぎないが、メェナードさんはアノ時、私と別れて私には知られたくない場所に行っていたに違いない。

 だから万が一私が居場所を調べようとしても、調べられないように携帯の電源を切っていた。

 遅れるはずのない待ち合わせ時間に遅れたのは、私を待たせるよりももっと重大な用事があったからだろう。

 あのころ既にメェナードさんは柏木サオリを知っていた。

 当然、妹のナトーの事も。

 メェナードさんは屹度、東亜東洋商事の栗林会長に会いに行ったに違いない。

 そして不器用なメェナードさんは受付で、正直にPOCの者だと告げる。

 だから警戒した栗林会長のボディガード達と格闘戦になり、スーツが着崩れてしまった。

 私は直ぐにでも日本に飛べるように、仕事を先行させるべく鬼のように仕事に取り掛かった。



 みつけた……。

 サラ様からナトーと言う妹さんの消息を探すように言われてイラクに来て1ヶ月。

 母と妹を亡くしてから今までずっと探していて、その形も影も見つけられずにいたヤツを遂に見つけることが出来た。

 正直、こんな子供だなんて思いもしなかったが、ヤツがグリムリーパーであったことだけは間違いない。

 まさか、私を救ってくれたサラ様の妹さんだったとは、なんという皮肉な事なのだろう……。

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― 新着の感想 ―
[一言]  サラちゃん、どんどん確信に近付いていますね。  ナトーちゃんの正体がバレるのも時間の問題。    多分クラウディはその確信に辿り着いてしまいました。    うわあ、どうなっちゃうんだろう。…
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