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アン・ファミーユ(家族とともに)第2部  作者: 湖灯


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【妹、ナトー・エリザベス・ブラッドショーの秘密②(Sister, Natow Elizabeth Bradshaw's Secret)】

 クラウディをイラクに向かわせてから1ヶ月が経ち、少しずつだがナトーに関する様々なことが分かってきた。

 バラバラに入ってきた分かったことを時系列に並べると、実に興味深い。

 先ず、ナトーの義母であるハイファのこと。

 ハイファ・ハミル。

 イラク、バクダッド出身。

 父親は外資系大手貿易会社の現地社長を務め、母親は大学教授、兄弟は5歳年下の弟がいる。

 裕福な家庭と良好な教育環境のもとに育てられ、イラク工科大において最年少で博士を取得した才女。

 大学卒業後の職歴はなく、卒業の2年後にバグダッドに出稼ぎに来ていた大工のヤザと結婚した。

 ここまではPOCの研修所からテクニオンに通っている時、丁度ルーシーがキャディアバ氏と交際を始めた頃に調べたが直ぐにルーシーと恋愛について、つまり才女が駆け出しの貧しい大工と結婚する可能性について彼女と話し合ったきりになっていた。

 今回クラウディがイラクから新たに知らせて来たのは、ハイファの父親の会社が“TOHYOH石油”と言う日系企業だということ。

 TOHYOH石油を調べてみると、関連企業の欄に“東亜東洋商事”と言う会社があった。

 資本金は東亜東洋商事のほうが桁違いに多かったので、ネーミングからしても東亜東洋商事の傘下に入っている企業であることは間違いない。

 東亜東洋商事の栗林会長と言えば、我が社(POC)に敵対するSISCONシスコンという偽善団体の重鎮……。

 さらにクラウディが調べて来た情報は、泥臭いほどの執念を持つ彼女ならではの情報。

 なんとハイファの勤め先はPOC証券。

 支社名までは、分からなかったと言うことだったが、聞き込みだけでココまでつかめれば十分。

 POC証券と言えば、私の母“ナオミ・ブラッドショウ”が務めていたところ。

 母はバクダッド本店で総務課長を務めていたが、2人の間には何か接点があるはず。

 さっそくPOC本部に依頼して、当時のバクダッド本店の従業員名簿を取り寄せたところ、やはり思った通りハイファも同じバクダッド本店でシステムエンジニア部の課長として働いていたことが分かった。

 これで母とハイファと関係は繋がった。

 母とハイファはココで娘を預けるほどの信頼関係を築いたのだ。

 名簿の中に、その他に気になる人物の名前がないか一応確認したが、現時点では思い当たる者は居なかった。

 私の母はナオミ・M・ブラウン。

 ファーストネームで分かる通り母はワンエイス(1/8)で祖母がクオーターで、曾祖母がハーフ。

 祖母はイギリスで、曾祖母は日本で既に亡くなっている。

 曾祖母の実家は、東京都にあるということだった。

 次に分かった事は、一時だがナトーはイラク郊外にある赤十字難民キャンプに居たということ。

 ナトーが赤十字に運ばれてきたのは今から約7年前のことで、全身に複数個所の骨折があり瀕死の重傷状態であったそうだ。

 スタッフのうち2人が手術とリハビリを請け負い、後遺症もなくナトーは回復し、その後もその2人が親身にナトーの世話をした。

 ナトーの世話をしていた2人については既にもう現地には居なかったが、ここでナトーは2人から勉強や武道を教わりながら2人の仕事を手伝っていたということ。

 ナトーは凄く勤勉で現地のスタッフや同じ難民の人たちからも評判のいい子だったそうだが、ある事件をきっかけに突然いなくなってしまったらしい。

 そのある事件とは、世話をしていた医療スタッフの1人がバクダッドでの爆破テロに巻き込まれて死亡した事件が切っ掛けで、その事件があった夜にナトーは忽然と姿を消した。

 世話をした2人のうちの一人はミランと言うフラン人医師で、死亡したのは柏木サオリと言う日本人医師……。

 “柏木サオリ!?”

 たしかPOCの研修生時代にダニエルたちの虐めにあっている私を心配したルーシーからテクニオンに研修に来ていた武術の達人を紹介されて一緒に稽古をしたことがあったが、その人の名前もサオリ・カシワギだった。

 しかし私が出会った時は、もう赤十字の医師だった柏木サオリは事件に巻き込まれて死亡していた後。

 同姓同名……日本では一般的な名前なのだろうか……。

 しかし、共に武道をたしなんでいる所が引っ掛かる。

 “そう言えば‼”

 私は慌てて、さっきまで眺めていた古いPOC証券の社員名簿を手に取った。

 たしか名簿の5ページ目に……。

 “Saori Kashiwagi”

 あった‼

 名簿には、営業第2課と書かれているだけで、役職名はなかった。

 POC証券に居た“Saori Kashiwagi”と赤十字の医師“柏木サオリ”、それにテクニオンに居た“サオリ・カシワギ”。

 いくら、ありふれた苗字や名前であったとしても、私の生涯の重要な局面で3度も同姓同名の人物に出会うなんて、ただの偶然としては出来過ぎている。

 私は直ぐにテクニオンで出会ったサオリ・カシワギの似顔絵を描き、凡その年齢と身長や体重を添えてクラウディに再度確認するとともに、ナトーの手術に関するカルテのコピーを送るように指示を出した。

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― 新着の感想 ―
[一言]  情報とサラちゃんのよみが冴え渡るシーンでした。  登場人物サラちゃん一人。  移動も無くて、そんなシーンを退屈させないで読ませてしまう湖灯様の力量が凄いなあと思いました。  色んな事が明ら…
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