【削除された写真①(deleted photo)】
とりあえず関係者の写真は全て撮った。
あとは、この写真をサラにメールで送れば、このミッションは万事終了。
だが、その前に俺には大切な役目がある。
それは、この写真をサラに見せてもいいかどうか雇い主であるメェナードに確認してもらうこと。
なにしろナトーと言う女を見つけてしまったのだから、これはとても重要だ。
サラに送る前に写真の全てをメェナードに送ると、直ぐにナトーの写真だけ送らないようにと指示が返って来た。
いわくつきの女、ナトー。
この女に一体何があるのだろう。
とりあえず指示通り、撮影した写真のデーターからナトーが写っている写真を除けて、サラにメールで送る。
それからナトーの写っているデーターの削除……しかし、寝不足の頭でこのチマチマした作業は妙にイライラして頭に堪える。
作業の途中で一旦やめて、車に戻る。
まあ形態の中の写真でもあるし、帰国までまだ時間があるから、今やらなければならないと言う訳でもない。
とりあえずゴーマ空港の傍のホテルに泊まって寝ることにした。
もう3日もまともに寝ていないので2泊することにして、掃除も断り起こさないようにフロントに依頼して部屋に向かった。
そのあとは、どうやって部屋に行ったのか覚えていない。
気が付けば俺はベッドに寝ていて、起きたのは翌々日の朝だった。
丸一日半も寝ていた。
体もまだ怠かったので、もう1日泊まろうか迷いながら、とりあえず汗でドロドロになっていた体をスッキリさせたくてシャワーを浴びた。
ボディーソープを体に塗りたくり、シャワーを浴びたあと、バスタブにお湯をはり湯船に浸かる。
これは日本に行ったときに覚えた、最高に疲れが取れる入浴方法。
体をスッキリしたあとの長風呂は、体の芯から疲れの元を吐き出させてくれる。
湯船に浸かっているとき、ドアをノックする音が聞こえた。
掃除は不要だと言っておいたのに……。
まあ、もう起きている事だしと思い「どうぞ」と返事をした。
中に人が居るのが分かっていながらワザワザ入って来る泥棒も居ないだろう。
カチャリと、鍵でドアを開ける音がした。
やはり清掃員だ。
ところが部屋は静かなまま。
普通は真っ先に窓を開けて換気するはずだし、だいいち開けたドアは閉めないはずなのにドアの閉まる音までした。
これは、ひょっとしたら間抜けな泥棒かもしれない。
ユックリと音を立てないように湯船から出てバスロープを着ると、外からシャワールームのドアノブが回された。
侵入者に間違いない!
ソーッと、ドアが開く。
黒人でも白人でもない、色の付いた手。
チャイニーズマフィアか!?
俺はその手を掴み思いっきり中に引き込むと見せかけて、逆に外に向かって押し出した。
こうすると敵は中に引き込まれないように身を引こうとするから、簡単に押し倒すことが出来る。
ところが相手を押し倒すはずの俺の体は、次の瞬間に床から離れて宙を舞っていた。
いったい何!??
ドスンと床に打ち付けられ、慌てて体を横に回転させて敵の次の攻撃をかわすが、敵は襲っては来なかった。
何者!?
「用事が済んだというのに、2日もホテルに滞在してサボるとは、いい根性しているなカール」
目の前に居たのは大柄な中東系の女。
「クラウディ!」
「用が済んだならサッサと帰るよ」
「何故ここに?」
「迎えに来てやったんだ。礼ぐらい言え」
「迎えに来たって……しかしゴーマ空港の国際線は現在不通のはずでは」
「バーカ、サラがお前のためにプライベートジェットを寄越してくれたに決まっているだろう」
サラが……。
「それとも、また来るまでキンシャサまで戻るか?」
「いや、それは勘弁願いたいね」
とうとう恐れていたことが起きた。
だがカールがサラに写真を送る前に、僕に写真を送ってくれたことで少しは時間を稼ぐことが出来た。
しかし、その時間はホンの少しでしかない。
サラは確実に、抜けた写真に気が付くはず。
そしてナトーの存在を知る。
完成間近の洞窟の中でメエナードさんは考えていた。
急がなくてはならないと。




