【エージェントを見つけ出せ!②(Find an agent)】
エマと言うエージェントを乗せた外人部隊の一行を車で追う。
直線距離で1500㎞も有るのだから、まともに“つけて”いたのでは直ぐに怪しまれるから車5台分の距離を開けた。
しかし彼らは俺が予想もしていなかったルートをコンゴ政府から提供されていた。
一行は、ものの10分走ったかと思ったら、首都から一番近いキンシャサ・ンドロ空港に入って行った。
航空機で移動するのなら俺も同乗しようと思ったが、なんと彼らが乗るのはコンゴ空軍が用意した輸送機。
双発プロペラ機Af-26だ。
しかもこのンドロ空港には一応サロンは有るものの、とても小さくて身を潜める事も出来はしない。
つまり様子を見に行こうものなら、直ぐに相手に気付かれると言う訳だ。
さすが俺好みの巨乳だけでなく、スペシャルなエージェントだけはある。
敵からの追跡を巧みにかわす技は大したものだ。
だがコンゴ空軍がC130輸送機を持っていなくて、用意された輸送機がAf-26だったことはいただけない。
Af-26輸送機は、着陸滑走距離は730mと短いものの、離陸時には倍近い1,240mもの滑走距離が必要となる。
しかも最大搭載時の航続距離は1,100㎞と短い。
行き先がゴーマ方面で出発地点がキンシャサなら1,000㎞前後に空港は幾つもあるが、どの空港も滑走路の長さは1,000m程度と短く、着陸は出来ても離陸は出来ない。
ただ1カ所だけ離陸が可能な滑走路を持つ空港は、ここから1,200㎞離れたキサンガニにあるバンゴカ国際空港しかない。
人員の他にSUVとトラックを搭載すれば、Af-26輸送機の最大搭載量を超える。
最大搭載量を越えれば、バンゴカ国際空港まで辿り着けない。
空港近くの店に入ってパンとコーヒーを買い、遠くから様子を探っていると、やはり輸送機に乗せるのはSUVだけでトラックの方は駐車場に止められたまま。
これから輸送機のペイロードからSUVを積み込んで固定し、安全確認が全て終わって乗員乗客が乗り終わるまで軽く2時間以上は掛かる。
このンドロ空港を出てからバンゴカ国際空港に到着するまで、Af-26輸送機なら大体3時間半~4時間は掛かるだろう。
それからSUVの積み降ろしに30分……だからと言って、とても下道を走って追いつくことが出来る距離ではない。
ヨーロッパのようにカーナビも使えなければ、地図にガソリンスタンドのある場所さえも乗っていない。
当然、ドライブのお供となるコンビニエンスストアもない。
直線距離1,200㎞を車で追いかけるために必要な、高速道路もない。
金は有るのだから無理をする必要はない。
だから俺も飛行機に乗って……。
キンシャサ・ヌジリ国際空港に到着して、タイムテーブルを見て言葉を失った。
なんと、この空港からキサンガニに向かう便は、今朝8時45分に出発したのが最後。
しかも次は明後日の朝まで便が無い。
と言うことは、次の出発まで47時間も待たなければならない。
“ハメられた‼”
見た目はお気楽な長身の巨乳女だが、さすがにリビアに引き続きこのコンゴでも手柄を上げたスペシャル・エージェントだけのことはある。
万が一追手が居たとしても絶対に付いて来られないように、ワザとキンシャサ・ヌジリ国際空港からキサンガニへ向かう便が出たあとで大使館を出発したんだ。
どうする?
エマと言うエージェントのあとは追えなくなったが、外人部隊はニョーラと言う町付近に駐屯していることは分かっているのだから、先回りして同じ北ギブ州のゴーマ空港に行けば!
携帯の時刻表で調べたところ、昼までの便は終わっていて次は17時丁度の便があった。
飛行時間は2時間半。
これなら十分先回りして、エマたちを待ち伏せして外人部隊が駐屯している場所まで案内させられ……る??
ところが携帯には載っている17時の便が、空港に表示されているタイムテーブルには表示されていない。
何故かと思ってカウンターで聞くと、ルワンダの民兵組織が越境したために、ゴーマ便はしばらく運行できないと言うことだった。
当然と言えば、当然。
何故そんなことに気付かなかったのか……。
俺は、頭を抱えた。
明後日の朝の便まで待つか、それとも他の空港に立ち寄って行ける便を探すか?
いや、あのエージェントなら、当然すべて調べたうえで行動を起こしているはず。
なら、どうする?
行くしかない!
でないと、サラにシバカレル‼
雑貨店で予備のガソリンを入れるジェリ缶を何個か買い、スタンドで車とジェリ缶にたっぷりガソリンを入れて出発した。
当然ヨーロッパとは違い、高速道路網もなければ、長旅のお供でもある24時間営業のコンビニエンスストアもない。
だから珈琲とパンを買い込んで、車で出発した。
キサンガニまでは、おそらく2,000km近くあるだろう。
俺は決意を込めてハンドルを握り、アクセルを踏み込んだ。
信号もなければ横断歩道もないばかりか、街灯すらない暗い夜道をひた走る。
時々目にするのは、目の光る生き物。
野生動物は車のライトで目が光るし、万が一轢いたとしても一応は“仕方がない”で済むが、人間はそういうわけにはいかない。
こんなことを言ってはいけねえが、この街灯のない暗い夜道で黒人が道に居たとして、俺はそのことに気付くことが出来るのだろうか?
ラリーカーみたいに飛ばしたいけれど、それが出来ずにもどかしく思いながらいつまでも続く夜道を走った。
昼は暑さと、夜は道に飛び出してくる野生動物、そして常に訪れるのは俺自身の中に居る睡魔との闘いが続いた。
1日目はまだ余裕があったが、2日目にはもう自分が何をどうしているのかさえ分からないまま気が付けば夜が来て、気が付けば空港に着いていた。
結局キサンガニにあるバンゴカ国際空港に到着したのは、出発して46時間後。
一応空港内に入って見るが、エマたちも居なければAf-26輸送機ももう空港には駐機していなかった。
職員に聞くとエマたちはフランス外人部隊が空港に預けていたTRM 2000を受け取るのに手間取ってココで2泊したあとまだ日が明ける前の午前3時に出発したそうだ。
午前3時!
いまから約6時間前。
全てが遅かったが、しかしそれを悔いることは無い。
むしろ、丸2日間寝ないで運転してきた自分を褒めてやりたい。
後はまた、追いかけるのみ!
そう思っていたとき、キンシャサを8時45分に出発した便が空港に定刻通り到着したと言うアナウンスが耳に届いた。
あのとき2日待ってでも、アレに乗っていればココまで2日間徹夜で運転することもなかったのだ……。




