【エージェントを見つけ出せ!(Find an agent)】
後をカールに託して、コンゴの首都キンシャサを後にした。
カールの使命は、キャディアバたちのテロから大統領を救いだしたDGSEのエージェントを探し出すことと、最前線に居ながらその計画にいち早く気付きDESEのエージェントを派遣させた女スパイの捜索。
どちらもフランス政府の最高機密に値する情報なので、捜査は容易ではないことは分かっているが、コイツ等を見つけない限りルーシーの仇は打てない。
スワヒリ語を全く話せないカールだが、コンゴは昔フランス領だったことから上流階級の人間相手なら十分にフランス語が通じる。
もっともポーランド人のカールはお世辞にもフランス語が上手いとは言えないが、それでも何とかなるだろうし、ボディーガード兼運転手とは言え私の部下である以上すこしでも多くの言葉を使えるようになってもらわないと困るのでこの任務に就かせた。
カールの主な任務は“監視”
先ずはフランス大使館に出入りする人間と、ここからフランスに帰国する人間の写真を撮って私に送ること。
送られた写真をもとに、私がその人間の素性を調べてエージェントを探す。
事件からマダ数日も経っていないから、まだ大統領暗殺を阻止したエージェントは残っているはず。
そして次の任務として、最前線に居るフランス外人部隊に紛れ込んでいるDGSEのスパイの正体を探ること。
こちらも写真をカールに撮らせて、私が分析する。
関係者全ての写真が揃えば、その中から必要な人物を特定するのは左程難しい事ではない。
首都キンシャサにあるフランス大使館と、そこから直線距離で1500㎞近く離れた北ギヴ州にある小さな村に駐屯する外人部隊の監視。
俺一人でこの両方を同時に監視するのは無理だが、特に同時に監視することは無い。
派遣とは言え、軍の移動には政治的にも事務的にも物理的にも非常に時間を要する。
政治的にもう帰っても良いと言う判断が出た時点で、そのことは殆どの場合公表され、それから数週間から数カ月かけて撤収する。
逆にエージェントの方は、正体をさらけ出すことを好まないので、大まかな事件解決とともに正体を晦ますのが普通。
つまり外人部隊の方は、後回しで良いって訳だ。
フランス大使館は首都キンシャサ中心部から西へ4㎞離れたソシマにある。
幸いなことに街のド真ん中ではなく、片側3車線ずつの大通りに面しているので離れた所から車の出入りを見張っていればいい。
問題なのは、任務が終わった後のエージェントはナカナカ姿を現さないと言うこと。
道路を挟んだ向かい側にある4階建ての雑居ビルの一部屋を借りて気長に見張ることにしたが、なにせ相手が名うてのエージェントだけに、逆に見張られる可能性もあるので老人に変装して大使館を見張ることにした。
エージェントが女性であることは傍受した通信の声で既に分かっているが、その他の年齢などが分からないので何人かいる女性職員のうち誰なのか特定することが肝心なのだ。
おそらくヤツは、そういった女性職員に成りすまして行動するに違いない。
サラは写真を撮ってくれば、あとでエージェントたちを洗い出すと簡単に言ってくれたが、そんな御用聞きの様な仕事を任せるために俺を連れてきたわけではないことは十分承知している。
だいいちコッチのエージェントが分からない限り、向こうのエージェントを見つけ出すことは非常に困難になる。なぜなら俺が向こうに行くまでの時間差が出来るため、向こうのエージェントは幾らでも姿を消すだけの時間的余裕があるから。
これは賭け。
俺はコッチのエージェントが必ず帰国前に必ず向こうに居るエージェントとの接触を試みると読んでいる。
張り込みを始めてからから1週間、エージェントらしき人物は見つからなかったが、ひとり気になる女を見つけた。
女にしてはかなり背が高く優に180㎝以上はあり、俺の大好物な巨乳の持ち主。
おそらくはエージェントではなく、パスポートか何かのトラブルで大使館に転がり込んだ旅行者だと思うが、毎日昼前から大使館の車で出かけて3時くらいに戻って来るので1度だけ後をつけたが、女は街の外国人向けのレストランで優雅にランチを食べているだけだった。
“エージェントは、もう帰国したあとなのか?”
ここに来てただ写真を撮るだけで飽きてきたのと、成果を上げられていないことに少し焦りも出て来たが、あの長身の巨乳女を毎日見ることが出来る事だけが心の支え。
こんな隠密性の高い任務でなければ、とっくにナンパしに行っていたのに、見ているだけとは何ともモドカシイ。
ちょうど8日目に、事態が動いた。
大使館の玄関前に、白のSUVとトラックが止まり、何人かがそれに乗り込んでいた。
全員私服だが、その体つきを見れば鍛え上げられた軍人であることは直ぐに分かった。
そして遂にエージェントらしき女も……。
「!??」
なんと軍人と一緒に出て来たその女こそ、あの長身の巨乳女。
他の者たちより遅れ、何かを食べているのか口をモグモグさせながら玄関を出てくる女に、外人部隊のペイランド少佐が「エマ早く、早く!」と声を掛けていた。
“エマと言うのか、あの女……”
エマは、まるでハンティングにでも行くようなサファリヘルメットを被り4WD車に乗り込んだ。
下っ端の職員や観光客で無い事は、車に乗り込むときに外人部隊の少佐がその女のために自らドアを開けた事から容易に分かった。
“あんなお気楽なエージェントがこの世の中に居たとは、思ってもいなかった……”




