【コンゴの動乱②(Congo uprising)】
我々POCは独自に幾つかの軍事的な運用が可能な偵察衛星を持っている。
高感度赤外線センサーをはじめ、最先端技術が惜しみなく投入されている超高性能の衛星。
私はいま丁度その衛星に搭載されている複数のセンサー情報から、かなり精度の高い人員分布情報を作成するプログラムを開発していたので、本部に依頼して偵察衛星をコンゴに移動させて使用する許可をもらった。
ジャングルの植物や現地の気温などで、日中の人が発する赤外線は感知できないものの、夜間は比較的確認しやすい。
最初の観測ではデーターの母数がまだ少ないので大雑把になるが、越境した民兵の数は500~1000人。
そして派遣されたフランス外人部隊の数は約50人程度。
人員的には10倍から20倍の敵を相手にしなけれなならないが、ニョーラに約300のコンゴ軍精鋭部隊、その先のムポフィに国軍の現地部隊が150~200。
3つの部隊が協力し合えば越境した民兵組織とほぼ近い人数になるので、充分に対抗できるはずなのだが、ニョーラとムポフィのコンゴ軍は何故か前進を始めないで外人部隊だけが最前線に向けて進軍した。
“何かある!”
私はそう感じたが、私たちの偵察行動を他国に知られることはマズいので、他の部員はもちろん、クラウディ―とカールにも手伝ってもらい24時間体制で監視にあたることにした。
「ボス、ついに最前線で戦闘が始まりました」
クラウディが電話で伝えてくれたのは、私がフィンランドを訪問している時だった。
明日の予定はスウェーデンだったので、打ち合わせが終わったあと直ぐにストックホルムに移動して1泊する予定だったホテルをキャンセルしてカーリングラードに戻る。
「どうだ?」
「いや大したものでさあ、外人部隊の司令官はとんでもない切れ者らしく、推定250人の敵を撃破して、いま更に追い打ちをかけて民兵の残存勢力を味方の小隊本部のある基地に追い込んで挟み撃ちにして片付けたところです」
カールが、さも自分の手柄でも披露するように言った。
「味方の小隊本部のある基地に追い込んだということは、最前線の小隊全体での攻撃ではなかったということなのか?」
「戦い自体は全線に及んでいましたが、一番戦闘のキモとなる部分は1個分隊が抑えて、その分隊を中心とした討伐隊が敗残兵の裏に回り込んで一網打尽。おまけに捉えられていたナイジェリア兵まで開放するオマケ付きです」
「1個分隊だけで、どうしてそんなことが出来た!?」
「爆薬を沢山持って来ていたようです」
「爆薬!?」
フランス陸軍の弾薬庫の出入状況はチェックしていたが、今回の派兵に於いて銃火器用の弾丸や手りゅう弾、グレネード弾は、かなりの数が持ち出されたようだが爆薬は殆ど持ち出されていないはず。
現地で敵の武器を押収したということなのか……。
「あと一つ、朗報が入っています」
「なんだ?」
「明日、PKO活動でイトウリ州に展開していたウクライナ軍第14独立ヘリコプター部隊から輸送ヘリが派遣され、物資の補給と外人部隊の死傷者を搬送してもらえるらしい」
「確かに良い知らせではあるが、死傷者の搬送に、朗報をつけるな」
「すみません」
次の日は午後にクラウディ―から連絡が入った。
なんでも、ニョーラ付近かフランスの軍事用暗号で“キャディアバに注意せよ”という内容だったこと。
“キャディアバ‼”
キャディアバとは、もしかしてルーシーの婚約者の……。
「あと現地から、エージェントの派遣が依頼されていました」
「過去形になっている訳は?」
「見落としていました。申し訳ありません」
「一度は見過ごしていても、掘り返すことが出来たのだから卑下する必要はない。っで、内容は?」
「大きな子猫ちゃん、王ゴリラを助けに来て、by アマル」
アマルと言うのは、リビアでのシェーラザード作戦に従事したエージェントが名乗っていた名前。
つまりDGSEのエージェントが、本部に応援を依頼した……。
いや、待てよ。
コンゴに投入されたのは外人部隊だけだ。
「発進した無線機は調べたのか?」
「ハイッ。フランス陸軍のPR4G戦術無線通信システムが使用されました。発信場所は昨日ウクライナ軍のヘリが補給に向かった場所と同じです」
「よくやったクラウディ―」
クラウディ―の報告に間違いはない。
で、あるならば外人部隊の中に元々DGSEのエージェントが派遣されているか、もしくは外人部隊の兵士の中にスパイとしての特性を持ったDGSEと深い関係にある兵士が居るかのどちらかだ。
いったい、この通信の発信者は、どのような人物なのだろう?
そしてキャディアバの正体は、ルーシーの婚約者と何かつながりのある人物でなければいいのだが……。




