【ルーシーとの別れ④(goodbye to lucy)】
会場に着くと、もう多くのフランス支局の人たちが集まっていた。
「寂しくなるわ」
「次は私たちの番ね」
行き交う支局の人たちから、そう言った会話が飛び込んでくる。
そう。
いくらメヒアが黒幕だと言っても、フランス支局員の身分を持つジュジェイがザリバンによるテロを手引きしたとあっては支局の存続は難しい。
いくらPOCが武器商人だと言っても、戦争や紛争に直接関与してはならないのは基本中の基本。
一部の者とは言え、それを破ったのだから近いうちにフランス政府からキツイお達しがあることは間違いない。
ルーシーは先陣を切って移動するに過ぎないのだ。
「よう、久し振りだな。相変わらずチッチャイな」
不意に後ろから肩を叩いて来たのはハイファの幹部養成所で同期だったダニエル。
彼にはよく虐められ、サラサイトなどと言う仇名なんかも付けられた。
そのたびにルーシーが庇ってくれて子供の私でもなんとかダニエルに一泡吹かせられるようにと、ルーシーが合気道の達人であるサオリを紹介してくれ、私はついに道場でダニエルを倒すことに成功した。
最初は凄く嫌な奴だったけれど、それ以降は私の実力を認めて少しはまともになった。
「珍しいわね、ダニエル。アナタ、コロンビアじゃなかったの?」
「ああ、今でもコロンビアに居るさ」
「じゃあ、ルーシーの送別会のためにワザワザ?」
「まあ、ルーシーやサラとは色々あったからな」
「あり過ぎよ!」
そう言って私が睨むと、ダニエルは「最後は俺を伸したんだから、今ではいい思い出だろう」と言って笑った。
たしかに負けっぱなしだったら、良い思い出だなんて考えられもしないけれど、あの時覚えた合気道で勝つことによって謂れのない虐めから抜け出せたあとはダニエルもおとなしくなり全てが良い思い出となった。
「まあ、サラ!忙しいのにワザワザ来てくれたのね‼」
ダニエルと昔話をしている所にルーシーが現れて、私の傍まで走って来てくれた。
ルーシーは私に抱き着くと、目から涙を浮かべて喜んでくれた。
「オイオイ、俺はお前の門出のために、ワザワザ南米から大西洋を渡って来てやったんだぜ」
ダニエルが不満げにルーシーに声を掛ける。
「大航海時代じゃないんだから大したことないでしょう?」
「それでもシャーロット経由で10時間も掛ったんだぜ」
「なによ、たった9,000キロ弱でしょう。サラみたいにプライベートジェットが持てる身分になれば経由地無しで、8時間で来られるわよ。ねえ、サラ」
私のプライベートジェット、ダッソー ファルコン 2000EX EASyでも航続距離は5,700キロなので直通は無理だし、最大巡航速度も時速900キロが限界なので10時間は掛かってしまう。
しかもこれは会社が私のために用意してくれたもので、私のプライベートジェットではない。
「あーあ、俺も早くプライベートジェットを持たされる身分になりてぇな」
「アンタ昔っから要領は良いから出世は早いみたいだけれど、結局肝心なのは要領じゃなく実力よ!サラからチャンと何かを学びなさい」
「ハイハイ」
ルーシーは主任、それに比べるとダニエルは係長補佐なので出世はかなり早い。
私を除けば、出世頭だ。
「こんな所で立ち話もなんだから、会場でゆっくり話しましょう」
ルーシーが私の手を引いて案内してくれる。
「あっ、ちょっと待って!」
「なに?どうしたのサラ」
そう言えばすっかり忘れていたけれどカールは何処?
クラウディ―と違って図々しいからこんな所でも平気だと思っていたのだけど、やっぱり居辛くて端っこで小さくなっているのかなと思って周囲を見渡していると、ホテルのカウンター係の女の子にチョッカイを出しているカールを見つけた。
カウンター係の女の子は、顔はまあまあだけど胸はエロカールの大好物の巨乳だ。
「ホラ行くよ‼」
私は後ろからカールの耳を思いっきり掴むと、そのまま後ろに引っ張って歩き出した。
「イテテテテ……」
悲鳴を上げながら、引かれるままついて来るカールに、私はご満悦。




