【パリが危ない!③(Paris is in danger!)】
ジュジェイをパリ支局から追い出したのは良かったが、なにやらキナ臭い匂いがプンプンする。
カーリングラードにあるオフィスからメヒアについて調べていると、どうもメヒアと言う男はザリバンの強硬派と繋がりがあるらしいことまで分かった。
ザリバンが手配した以上ヤツの目的は、おそらくリビアで捕らえた北アフリカ副司令官のレイラと言う女を取り戻すことに間違いない。
ジュジェイは体よく、メヒアたちの案内人として利用されたのだ。
問題なのは、レイラを奪還しようとするメヒアたちの手段。
過去の例から見ると、圧倒的に多いのは民間人を狙ったテロ。
その中でも1976年6月27日エールフランス139便を襲ったハイジャック((通称:エンテベ空港ハイジャック事件)では服役中のテロリスト40名以上の解放を要求している。
だが1994年12月24日に起きたエールフランス8969便ハイジャック事件、2001年9月11日に起きたアメリカの同時多発テロ事件後には、各国のチェック体制が厳しくなり航空機のハイジャックはリスクが大きくなり2010年以降はアフリカ発の便で3機がハイジャックされたのみで、その3件に置いて使用された武器は全て玩具だった。
フランスで今はボルドーで行われるサミットの準備期間にあたり、各交通網では特別な警戒を強めているから航空機や列車を狙ったテロは考えにくい。
カーリングラードから遠隔で詳しいことを調べるのは難しい。
幸いパリ支局にはルーシーが居るので、私の代わりに調査を依頼しておいた。
「サラ部長、パリ支局のルーシー主任からです」
「私のオフィスに回して」
私は個人オフィスに入って、電話を受け取った。
「アロ、ルーシー元気?」
「うん、元気よ。サラは?」
「私も、元気だよ。スマナイ余計な仕事を依頼して」
「いいの、気にしないで。何事も勉強だから」
「それで、なにか分かった?」
「うん、それについて、また技術的な協力をお願いしたいの」
「それについて、技術的な協力?」
ルーシーが掴んだ情報と言うのは、現在DGSE(対外治安総局=フランス国防省管轄の情報機関でアメリカのCIAなどに相当する)に収監されているレイラは、近くDGSI(国内治安総局=フランス内務省直下の組織で、フランス国内のテロやサイバー犯罪などへの対抗、および防諜を担当する情報機関)に引き渡されるらしい。
「移送なんてリスクを背負うだけではないの?」
「私も、そう思うのだけど、なにか作戦があるようなの」
「それで、技術的な協力なの」
「ピンポーン♪」
依頼者はDGSIからで、依頼内容は防弾ガラスに銃弾が当たった時に、あたかも貫通したように見せかけられないかと言う物。
これは、レイラの護送と関係しているに違いない。
国内でのテロを未然に防ぐことが目的のDGSI。
つまりDGSEはレイラの懐柔に成功し、ワザと護送車を襲わせてレイラをザリバンに送り込み、テロの情報を遅らせようとしている。
「分かった。直ぐに対応するわ」
「サンキュー!」
私は直ぐに開発に取り掛かった。
仕様部材は有機ELと圧力センサーを組み合わせれば、防弾ガラスに銃弾が当たった際に銃弾痕を有機ELに映し出すことは出来る。
ただそれだけでは、見破られる恐れもある。
穴が開いたのは見せかけられても、中に居る人が死んだふりで誤魔化せるのはあくまでも映画やドラマの視聴者だけで本物の殺し屋は騙すことは出来ないだろう。
ちょうど都合の良いことに、私の傍には殺し屋が居る。
カールを呼び彼の意見を聞くと、やはり血の気のない死体には止めを刺すためにもう1発お見舞いすると言っていた。
物騒だが、相手がメヒアだとすると、その対処をしておかなければ作戦は直ぐに見破られる。
超高速カメラで銃弾の飛んでくる方向を捕らえ、角度に応じて車内に居る隊員に疑似的に怪我を負わせるシステムを構築した。
撃たれるはずの場所が破裂して、中から血のようなモノを出させる。
貫通した場合なども含めて、車内カメラと連動させて内部にも疑似的に血しぶきを有機ELに投影させる。
穴が開いているのであれば、鼻が利くヤツなら血のニオイかそうでないかは直ぐに分かるので血のニオイいのフレーバーで対応し、これなら大丈夫だとカールのお墨付きも貰った。
近くに殺し屋が居て、殺人意外に役に立つとは思ってもみなかった。
カールにそのことを伝えると、今の俺は殺し屋ではなくて君のボディーガードだと笑っていた。
たしかに。
しかし、こんな陽気で普通っぽい殺し屋が居るなんて想像もできなかった。
さすがにメェナードさんの眼鏡にかなっただけのことはある。
出来上がった製品の納品と、仕様説明にパリに行った1週間後に作戦は実行され、見事にレイラをメヒアのもとに潜らせることに成功したらしい。
だが問題は、そのレイラが裏切らないかと言うことと、裏切らなかった場合にメヒアがそのことに気が付かずに居てくれるかどうかと言うこと。
不安は残るが、今は見守るしか仕方がない
サラの作ったシステムが活躍するのは『グリムリーパー』『フルメタル』の、「パリは燃えているか」の章の「逆スパイ作戦」①と②、「護送車」と「DGSIの罠」の4話に当たりますので、興味のある方は是非読ん見て下さい。




