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アン・ファミーユ(家族とともに)第2部  作者: 湖灯


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【パリが危ない!②(Paris is in danger!)】

 一旦パリ支局に入ったジュジェイだったが、彼には物騒な後ろ盾がいた。

 その名はメヒア。

 いかにも物騒な顔つきに加え、彼は禁煙を無視してどこでも葉巻を吸った。

 しかも笑えば、そこに見える歯は全て金歯。

 彼らが出入りするようになり、数人の職員が出社を拒否する事態にまでなり請け負っていた案件は処理できずパリ営業所での事業は回らなくなった。

 それでもパリ営業所の所長はジュジェイたちを放置し続けた。

 なぜならパリ営業所の所長は、元はジュジェイの部下だったから。

 ルーシーから状況の報告を受けたサラは、急遽カールを連れてパリに赴いた。

 営業所の中に入ると、そこは今までの整然としたものではなくなっていた。

 メヒアは既にジュジェイを自分のコントロール下に置いていて、そこはまるでオフィスではなくふた昔以上も前の薄汚れた小さな出版社の用だった。

 部屋は煙草の煙で充満して、窓から見える景色もどこか黄色くて、机には書類が散らばり、床には干からびた食べ物のカスや煙草の灰などがあった。

「これは一体どういうことなのです‼」

 パリ支局長に怒鳴ったが、彼はスミマセンと謝るだけでらちが明かない。

「ジュジェイ説明しなさい。これはどういうことなの!」

 私の命令口調に、ジュジェイが嫌な表情を見せる。

「俺を呼び捨てにするとは、君も出世したものだな」

「当たり前でしょう。私は東欧支部第一部長で、貴方と初めて会った少女の時とはもう立場も違います」

「だが、部長だと言っても君は東欧支部の人間。縄張りの異なる西欧支部に口出しが出来る立場ではないだろう?」

 そう言って上から目線で見下ろすジュジェイに対して、しばらく睨み返していると、ヤツは思った通り薄ら笑いを浮かべた。

 そのタイミングで私はバックから1枚の書類を取り出し、ヤツの目の前に突き付ける。

「これは西欧支部長アドルフ・ハイヒマンからいただいた委任状です。内容を確認したのち私の指示に従うかどうかを決めなさい」

 ジュジェイは私の手から紙を引っ手繰るように取ると、みるみるうちにその表情は更に歪なものへと変えていった。

 書類に書かれているのは、ジュジェイたちの退去命令。

「くそっ、みんな裏切りやがって」

 いままで椅子に座ったまま、私とジュジェイのやり取りをニヤニヤしながら覗き見ていたメヒアが近付いて来て、紙を見て何が書かれてあるのか聞いて来た。

 下手な英語を話すくせに、こいつ字が読めないのか。

 ジュジェイが、退去命令だと告げるとメヒアは面白そうに笑った。

「大の男どもが、この落ちぶれたジュジェイに何一つ文句を言えないというのに、お嬢ちゃんナカナカやるな」

 話し声と共に、異常なまでに臭い口臭が漂って来た。

「お嬢ちゃん、気に入ったぜ。どうだ俺の持っているマルタの別荘をお前にやろう。金も沢山やるし車もやる。そこでお前は、一生自由気ままに暮らせるってわけだ。コカインが吸いたければ、いつでも送ってやるし、SEXだって好きな奴と好きなだけやればいい。第一部長か何だか知らねえが、サラリーマンを続けるよりはマシな暮らしが出来るぜ」

「断る!」

 言っている意味が分からない。

 仕事をしないで遊んで暮らすことと自由を関連付ける事が、短絡的過ぎるし、それを自由とは言わない。

 自由とは自らに課せられた役目、つまり社会性を維持した状態で法律に遵守した行動が自らの意思で束縛されずに出来る状況。

 つまり自由の定義は、住む国の法律によって変わる。

「ところでお嬢ちゃん、追い出すのは良いがこのジュジェイはまだアンタたちの組織の人間だ。まさか犬や猫を捨てるような真似はしねえだろうな」

 メヒアが声を変えて聞いて来た。

 嫌な口臭と、悪党独特の嫌な声。

 それに耳障りな下手な英語。

「既に手配済みだ。ココに行け」

「ココは良いところかい?」

 地図を手に取ったメヒアが私に聞く。

「ああ、難民の多いダウンタウンだ。その方がココより落ち着くだろう」

 私の言葉を聞いたメヒアが急に大声で笑い出した。

「さすがにジュジェイと違って、若くして部長になるだけのことはある。この場所も最高だぜ行くぞジュジェイ!」

「でもダウンタウンだぞ」

 不満げにジュジェイが言った。

「バカヤロー!ダウンタウンこそ、今のオメーにとって相応しいところじゃねえのか? いつまでも気取っていると自ら墓穴を掘ることになるぜ。さあ住処も決まったんだからコンナ堅苦しいところとはおさらばだ」

 そう言うとメヒアは手下を連れてオフィスから出て行った。

「覚えていろ!この女狐め。借りは絶対返すからな」

「あら、返す能力があったらね。私は“おごり”でも構わないのよ」

 すてセリフを履いて出て行ったジュジェイに、お返しの言葉を返すと、彼は床に唾を吐き捨ててメヒアの後を追って行った。

 私の後ろでいつになくおとなしくしていたカールにメヒアの正体を知っているか聞いた。

「ああヤツは悪党の中でも最も嫌われている悪党だ」

「どういう事?」

「殺人、強盗、麻薬、売春、脅迫、詐欺、テロ、裏切り……とにかく人の命など何とも思っていないし、金になることはどんな酷い事だってする」

「請け負ったことは?」

「ない。ヤツは他人を信用していない。ヤツの依頼で何人かの有名な殺し屋が会いに行き、逆に殺された」

「殺し屋が、殺されたの!?」

「ああ、ヤツはその殺し屋の過去の経歴を調べ上げ、殺された方に賞金を懸けさせた。そしてその賞金欲しさに呼び寄せて殺した」

「酷い奴ね」

「俺も殺し屋だが、信用できる人間としか付き合わない」

「褒めはしないわよ。この人殺しめ!」

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― 新着の感想 ―
[一言]  さすがはサラちゃん❗  悪党相手に一歩も引かない強い態度❗( ☆∀☆)  ジュジェイがおとなしく引き下がるとは思えないので、気を付けて欲しいなあ。  メヒアも悪どい事、選ばないで何でもしそ…
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