【バラクからの手紙(letter from barack)】
ザリバンがリビア侵略を諦めざる負えなくなってから1ヶ月。
僕のもとに1通の、はがきが届いた。
差出人の名前は書かれていない。
けれども切手の消印はリビアで押されたものだった。
“バラク……”
公開されていない情報だが、DGSEのエージェントは武器が保管されている港の倉庫を爆破することに成功した上に、LéMATの協力を得てリビア方面作戦司令であるバラクと副指令のレイラの確保に成功したばかりか基地に火事を発生させて残った弾薬類を焼き尽くし隊員たちを解散させた。
まさに100パーセントの勝利は、僕の予想を上回る出来。
しかしよく言う120パーセントではない理由がある。
それはバラクが死んだと言う噂。
何故か今回は作戦の実行が発令されて以降、ホンの僅かな情報さえも漏れて来ない。
ようやく分かった情報は司令官2人の拘束と、その後1人が死亡したことくらい。
死んだのはバラク。
大使館員からの目撃上によると、1人のエージェントがズット死んだバラクの傍に寄り添って泣いていたと言う事だった。
肝心のエージェントの名前もエマとアマルと言う名前しか分かっていない。
このはがきに事件の真相が書かれているとか、エージェントの正体が明かされているとかに関しては何の興味もない。
僕の興味は、これはバラクが僕にくれた最後のメッセージだと言う事だけ。
夜中に自分用の洞窟部屋のベッドに横になり、封を切って中を開けた。
やあ、メェナード元気にしているか。
噂によるとアサム様の信頼も厚く、新しい要塞基地の設計を任されたと聞いたが、さすがじゃないか。
君なら出来るだろうし、君なら戦争のない世界を築くことができると信じています。
ところで今夜、君のお目当てであるナトーが僕の前に現れたんだ。
見間違えるほど好い娘になっていて、彼女は僕の事を助けようとしているのが分かったよ。
でも僕には、彼女に助けてもらう勇気がない。
今まで姉さんを殺された復讐のために多くの人を殺してしまったからね。
アラーのために戦えば天国に行けるなんて嘘さ。
だって戦争は殺し合いだから、アラーのために僕たちが戦うことで、その巻き添えになる市民も沢山居るからね。
ひょっとして君が要塞基地に熱心なのは、一般市民への影響が出ない完ぺきな戦争を仕掛けようとしているんじゃないかな。
僕もそこで最後の戦いをしてアラーのもとに行きたいと思うが、ナトーと出会うのが早すぎたみたいだ。
数日のうちに僕は彼女に連れられて行く。
何故って?
それは、この出会いがおそらくハイファ姉さんの意志だから。
そして僕は、ハイファ姉さんのもとに旅立つよ。
君と出会えたことで僕の魂は救われた。
感謝する。
そしてナトーが僕の魂をハイファ姉さんのもとに届けてくれるんだ。
以前、君に聞かれたね。
ナトーがグリムリーパー(死神)かどうかを。
ようやく答えを見つけたよ。
ナトーはグリムリーパーに間違いない。
彼女は、魂の戻る時期と戻るべき場所を知っていて僕たちの前に現れるんだ。
グリムリーパーは、殺し屋でも悪魔でもない。
魂を導く神様だ。
そういう意味で彼女はグリムリーパーに間違いない。
ただし、それは君の探しているグリムリーパーとは違うかもしれないけれど。
いままで有難う。
そして、くれぐれも言っておきたい。
あまりグリムリーパーに対して深追いしないように。
君は平和のためにマダマダ生きるべき人間だ。
ユックリ世の中を楽しんで、こっちの世界に来たときに僕が聞き飽きるくらいの土産話を持ってきてくれ。
それでは、健闘を祈る。
親愛なるBMへ
君の友人であるバラクより。
洞窟から外に出た。
夜空には満天の星。
屹度この中にバラクの星もあるのだろう。
バラクはグリムリーパーの橋渡しで、今頃はハイファと姉弟仲良く天国で暮らしているのだろう。
グリムリーパー……。
残酷な死の使いだとばかり思っていたが、おそらくはバラクの言う通りなのだろう。
風が吹いた。
星々がその風の影響を受けたのか、まるで拍手をするように一斉に瞬きだす。
そんな馬鹿な。
宇宙には風の影響はない。
だが影響を受けることは確かだ。
何故なら僕たちは宇宙に無数にある星々を、空気と言うレンズを介して見ているのだから。
雨が降れば星々は見えない。
レンズが曇っていれば、本当の姿は見ることは出来ない。




