【裏切り行為(betrayal)】
要塞の建設に着手しながら、北アフリカ進出のための準備をする。
北アフリカは幹部の一人であるジュジェイが担当。
アイツはサラが開発した超精密誘導砲弾“ゴッドアロー”開発の手柄を横取りしようとした奴。
しかも戦争や紛争を仕掛けて実績を伸ばそうとする、強硬派の主要メンバーの筆頭だ。
奴なら、これから僕がやろうとすることを喜んで引き受ける事だろう。
イリジウム(衛星携帯電話)で、ジュジェイに連絡を取ると奴は直ぐに電話を取った。
「珍しいな、貴様から連絡を寄越すとは。ザリバンに潜入して安い仕事にありついたのは良いが、とうとう行き詰ったか?助けてくれと泣き言を言われても、今更俺の仕事を邪魔したヤツに手は貸せないぞ」
早速嫌な言葉を投げかけられたが、そうでなければ困る。
「いや助けは要らない」
「助けが要らない?じゃあ何の用だ。金は貸せないぞ」
「金も必要ない。実はリビアで一儲け出来る仕事が入ってな。北アフリカは君の担当だろう。だから連絡した」
「くだらん。どうせお前の事だから中古のAK47が100丁居るとかザコみたいな仕事だろう。そんなことは自分でやれ、人の手を煩わすな!」
「いや、実は、ザリバンの大部隊がリビアに移動する。だが武器を持って国境越えることは難しいだろう?」
「ザリバンの大部隊?お前の言う大部隊なんてどうせ50人程度の小隊規模だろう。小遣い稼ぎにもなりゃしねえ」
「最初の移動部隊規模は50人前後だが、そこから拠点を築いて500人の大隊規模まで膨れ上がり更に人数は増える」
「大隊規模まで膨れ上がる? いったいザリバンはリビアで何をやるつもりだ!?」
やはり奴は食いついて来た。
「リビアの乗っ取りだ。上手くいけば商売相手は石油産出国になるが、上手くいくかどうかは支援体制次第だ」
「なるほど、お前では出来っこない仕事だな。それで俺様に泣きついて来たって言う訳か」
「ああ」
「で、物は何が要るんだ?」
「先発隊の50人の装備は自動小銃だけなので何とかなるが、その後から来る450人と現地採用分併せてとりあえず3000人分の自動小銃と機関銃、人数分の弾薬それにRPGと爆薬が必要となる」
「戦争だな」
「戦争になれば、ザリバンも引くことは出来ないから更に支援が必要となるだろうし、国境を接しているチュニジアやアルジェリア、エジプトも警戒を強めて武器や弾薬の備蓄を増やすだろう。もちろんヨーロッパ諸国も黙って見てはいないだろう」
「なるほど、お前の能力では出来ない仕事だな……ヨーロッパはお前の可愛いあの小生意気な娘に任せるつもりか?」
「いいや、サラはまだ東ヨーロッパで手いっぱいだろう」
「たしかにな。俺も忙しいが、折角頼まれたんだからやってやる。で、誰とコンタクトを取ればいい?」
「現地指令はバラクと言う男だ」
「全権は任されているんだろうな?」
「ああ」
「しょうがねえな」
ジュジェイは、そう言うと直ぐに電話を切った。
用心深いヤツだが、欲も深い。
今回は、欲が勝ったと言うことか……。
直ぐにバラクに連絡した。
「やあ黒覆面、元気にやっているみたいだな、ヤザから聞いたぞ、アサム様から要塞建設を任されたそうじゃないか流石だな」
「ありがとう。そっちはどうだ?」
「正直、君だけには話すけれど気が重い。もうじき移動を開始するが、後続部隊の武器弾薬の手はずはどうなった?」
「ジュジェイと言う男に頼んだ」
「ジュジェイ……君の部下なのか?」
「いや北アフリカ担当の幹部だ」
「紛争屋か」
「ああ。そこで、気の乗らない君の意志を確認しておきたいのだが、正直に話してくれ」
「……この電話は?」
「セキュリティーは大丈夫だ」
「なにを正直に話せばいい?」
「リビアをイラクのようにしたいかどうかだ」
イラクはクウェートに侵攻(湾岸戦争)に敗れたのち、アメリカ軍を主導とする多国籍軍と戦い国力が急激に衰えて治安が悪化した。
そこをついてアフガニスタンに拠点を置くザリバンや、宗教テロ組織ISIL(アイシル=イスラム国)によって侵された。
リビアもまた、ジュジェイたちPOCの強硬派と石油利権者たちのてによる“アラブの春”と言う、でっち上げの民衆運動(紛争)によって有能な指導者を失い未だにその混乱は続いている。
今回のキモとなる部分は、バラクの気持ち次第。
彼が平和と戦争のどっちを取るかによって、僕の対応も変わって来る。
彼が平和を選択するのなら僕はジュジェイを裏切るが、もし彼が戦争を選択するようなことがあれば……。




