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アン・ファミーユ(家族とともに)第2部  作者: 湖灯


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【ヤザ(Yaza)】

「おいっ、しっかりしろ!」

 誰かに揺さぶられて目を開ける。

 “大丈夫ですか”じゃないんだな……と言うことは、ここはイラクで相手はバラクなのか?

 強く打ってボーっとする頭の中で一瞬そう思った物の、直ぐにココがアフガニスタンのホテルだと言うことに気付いた。

 僕の体を揺らすのは、あのホテルマン。

 ブルカの女は!?

 辺りを見渡そうと首を動かしたとき痛みが走った。

「ターニャはもう帰った」

「ターニャ?」

「ブルカの女の名前だ」

「なぜ知っている!?」

「家族だからな」

「貴方の娘さん?」

「まさか、君のボスに関係のある女だ」

「私のボス……」

「ようこそ黒覆面、これから先は素のままではなく、チャンと頭巾を被っておいた方が良いぞ。なにしろ我々の仲間の中には白人に恨みを持つ奴は多いからな」

「じゃあ貴方は」

「ヤザだ。カードの場所当てクイズも合格、ターニャとの対戦も合格だ」

「でも、そのターニャには負けたぞ」

「誰もターニャには勝った事がない。秒殺されずにあと1歩の所まで追い詰めたのだから見上げたものだ」


 思いがけずグリムリーパーの正体を知る人物であり、ナトーの義父であるヤザと出会うことに成功した僕は、このホテルで休むこともなくヤザと本部のある北に向かうことになった。

 僕を襲ったターニャとは、どうやらザリバンの首領であるアサムに最近できためかけらしい。

 小柄な女性ながら護身術系の格闘技を操るプロ。

 今回は油断していたが、次に戦う機会があれば女性だって容赦はしない。

 この日は夕方近い出発だったので200㎞ほど走ったデラーラームの手前で野宿をした。

 イラクと似て、田舎と呼ばれる地域には緑が乏しくて夜は寒い。

 かと言って車の中は20リットル入りのジェリカンが2つ乗っているので、ガソリン臭くてとても寝られもんじゃない。

 仕方なしに、2人でその辺に散らばっている枯草や枯れ枝、そしてゴミまで燃えそうなものをかき集めて暖を取った。

 ヤザが煙草を吸いながら話しかけてくる。

「どうやってバラクを騙した?」と。

「騙した?」

「白人にとって、特にアメリカ人のオマエにとってザリバンは許しがたい敵のはず。違うか?」

「何を指して敵と呼ぶ?」

「何を指して? 国や宗教の違いだ。だからイラクは狙われた」

「狙われた? イラクはクウェートに侵攻して、アメリカと戦う羽目になって負けた。そして軍事的損失をカバーするためにフセインは生物化学兵器の保有を臭わせ、それがアダとなってフセイン政権は倒されただけだ」

「内戦干渉も甚だしい。それが本当の理由なら何故北朝鮮に侵攻しない? あいつ等は生物化学兵器どころじゃなく核兵器も保有しているのだぞ」

 たしかにヤザの言う通り。

 イラクの場合は生物化学兵器を持っていると言う疑いがあるだけでアメリカをはじめとする多国籍軍が攻めた。

 何故かと言われれば、それは攻めやすかったからに違いない。

 なにせ当時のイラクにはロシアや中国と言った強力な反自由主義国の後ろ盾がなかったから。

 それにイラクには石油と言う資源があり、フセインはその資源を自由主義諸国の言いなりにはならない体制を敷こうとしていた。

 これが現実のものになれば、オイルショックにより自由主義国の経済が多大な損失を被ることは避けられなかっただろう。

 リビアのカダフィーもほぼ同じ理由で狙われたが、カダフィーには生物化学兵器などと言う危険な要素がなかったためアラブの春と言うデッチ上げが仕掛けられた。

 北朝鮮には、その強力な後ろ盾があるから迂闊に攻めれば世界大戦を引き起こす可能性だってあるばかりか搾取するだけの資源も無いから放置されている。

 返事をしない私に対してヤザは「黙りか」と言った。

「ああ。オマエの言う通りだ。だから私は軍を辞めてザリバンに入ることにした」

「元軍人か、クソッタレめ」

「罵るなら罵ればいい。だが私には死の商人のルートがある。私を呼び寄せたオマエ達にはないルートがな。これでお相子だろう?」

「裏切り者め」

 ヤザはそう言ったきり、背中を向けて横になり眠った。

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― 新着の感想 ―
[一言]  命拾いですね。  ターニャは本気ではなかったのでしょうか。  ヤザに逢えて本当にラッキーです。  リビアや北朝鮮のお話、本当に疎い私にはとても良い勉強になりました。(o^-^o)
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