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アン・ファミーユ(家族とともに)第2部  作者: 湖灯


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【レイラ・ハムダン②(Layla Hamdan)】

「たしかに、そうね。イラクのサダム・フセインは超豪華な宮殿を持っていたとアナウンスされたけれど、その様なものは何処の国でも“迎賓館”と言う名のもとに建設されているわ。なにもフセインの私物ではない。それに国の豊かさを表す指針の一つとして上げられるGDP(国内総生産)の中で特に名目GDPは1979年にフセインが大統領に就任するまでは世界60位前後だったのに対して、就任後は30位まで押し上げている。そしてフセイン亡きあとには再び60位に落ちている」

「しかしGDPは実質右肩上がりの成長は維持されているが」

「GDPは国内総生産だから、国内で働く外国人の収益などもカウントされてしまう。国民のお金に対する裕福度を表すには、貯蓄高の方が良いでしょうね。あまったお金がないと貯蓄には回せないから。これはフセイン政権崩壊前の水準に比べて、現在は約20%にまで落ち込んでいるわ。つまりGDPで得たはずの利益が国民には行き渡らず、海外に流出しているということ。これではいくら頑張っても裕福には成り得ない」

「つまり、投資に消えていると言う事か」

「そうね。利権を維持するには“おつきあい”は重要な要素だからね」

「君の居たリビアでは、どうだったんだ?」

「リビアは、もっと顕著よ。カダフィーはフセインの様に贅沢な暮らしはしていなかったから報道されていることの殆どは西側の“でっち上げ”よ」

 レイラは淡々と説明してくれた。

 カダフィー就任前のリビアは石油産出国でありながら、世界で最も貧しい国の一つで、石油の利権は一部の特権階級の人間が支配していた。

 カダフィーは、その利権を独り占めした代わりに、石油のもたらす金を国民のために使った。

 例えば

 ・教育費の無償化政策で、当時わずか10%前後だった識字率を90%まで引き上げた。

 ・医療費の無償化政策で、誰もが高度な医療サービスを受けられるようになり平均寿命が延びた。そしてリビア国内で対応のできない難病に関してもリビア政府が手配して、海外での治療が受けられるようになった。

 ・税金を廃止した。

 ・不当な利益、地価の高騰に繋がりやすい不動産業を禁止した。

 ・電気代の無償化の実現。

 ・ローンの金利0%を法律で決めた。

 ・新婚夫婦にはマイホーム購入資金として、政府から5万ドルが支給された。

 (これは就任時に誓った『全てのリビア人に家を与える』と言う政策に基づくもの※貧しい家庭に生まれたカダフィーには子供時代に家が無かった)

 ・国民が車を購入する際に、その半額を政府が支払った。

 ・農業を志望するものには、政府から土地・家・器具・家畜・種子が無料で支給された。

 ・女性の人権も尊重され、教育や車の運転も問題がなく、イスラム圏でありながら全身を黒い布で覆うアバヤの強制もなくなった。


「つまり、石油の利権を全てカダフィー自身が管理することで、その利益が全ての国民に行き渡るようになった」

「でも、反政府勢力が武装蜂起したと言うことは、それでも悪政だったんだろう?」

「そうね西側の報道では、そう言うことになっているけれど、実際はどうかしら?」

「と、言うと?」

「民衆が蜂起したと言われる“アラブの春”だけど、彼らはどこで武器を買ったの? そして、そのお金は誰が出したの?」

「……」

「そして彼等が蜂起したのはベンガジなのに、どうやって1000キロも離れたトリポリまで戦い続けてこられたの? 民間人に高度な戦闘中の兵站を維持できるわけないでしょう?」

「……」

「なぜNATO軍は民衆の運動に呼応して、直ぐに空爆を始めたの?」

「……」

 そう。

 彼女が指摘する事は全て我々POCの強硬派が仕組んだこと。

 武器の供給も、兵站も、NATO軍の航空支援も。

「そして一番腑に落ちないのは反政府勢力が政権を掌握したのちに、何故完全国有化だった中央銀行を廃止して外国の資本銀行を入れたの?」

 この外国の資本銀行と言うのは、我々の親会社の事。

 もしかしたらレイラはPOCの存在に気が付いていると言うのか!?


 さすがにイギリスのインペリアル・カレッジに留学した才女だけのことはある。

 そして彼女を後押ししてくれたのはカダフィーの掲げた、教育の無償化政策。

 より優秀な人間には、海外への留学さえも支援すると言うもの。

 レイラは、かなりの切れ者。

 正直、長く一緒に居ると私の正体や目的さえも見透かされてしまいそうだ。

 引継ぎで良かったと思う反面、バラクの事が気になった。

 レイラは確実にバラクの心を見抜いてしまう。

 やる気のない隊長を裏切りかねない。


「ところで、ヤザの世話になっていたと言っていたが、どういう事だ?」

「彼は私の能力を見抜いて、本部に引き上げてくれた」

「本部では、何をしていた?」

「物流システムなどのIT化よ」

 ヤザは元大工だが、妻であるハイファはイラク工科大において最年少で博士号を取得した才女。

 そんな才女と連れ添っていたのだから、詳しくはないだろうけど筋が良い事は分かるに違いない。

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― 新着の感想 ―
[一言]  小難しい事はわからなかったのですが、カダフィーさんがいい人なのだけ解りました。  レイラは切れ者過ぎて油断ならない相手ですね。
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