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アン・ファミーユ(家族とともに)第2部  作者: 湖灯


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【レイラ・ハムダン①(Layla Hamdan)】

 いよいよ私にもザリバンの本部があるアフガニスタンへの移動が決まった。

 アフガニスタンに行けば、ヤザもいるし、首領のアサムもいる。

 これでグリムリーパーの正体がハッキリする日も見えてきた。

 これまでの2年半の辛抱が、いよいよ報われる時が来ると思うと、胸が躍る。


 バラクの部屋で後任の副司令官を待っていた。

 どのような奴なのか殆ど情報が無いのは、連絡手段が乏しいから。

 ネットや電話によるものと違ってハッキングとか盗聴に会わないから、こういう所は時代に取り残され過ぎている分セキュリティーが良い。

 人から直に秘密情報を得ようとする場合かなりの人間力が必要だが、これもスマートフォンなどのハイテク機器の普及により退化している。

 もちろんザリバン内部に他に諜報員を放っていない私には、それが誰なのか知る術はない。


 コンコンとドアがノックされる。

「入れ」

 ゆっくりとドアが開く。

 空いた僅かな隙間から、ナイフの様に先の尖ったベージュのパンプスが部屋の空気を突き刺した。

「BMの後任としてバラク大隊の副司令官に任命されたレイラ・ハムダン。本日より着任します」

 アフガニスタンの本部から来た女。

 背は高く180㎝近くあり、年のころは20代後半くらいだろう。

 優しそうな顔に似合わない鋭い目つきの経緯は、おそらくバラクが昔そうだったように復讐心からきているのだろう。

 まさか、私の後任が女だとは。

 別に女性蔑視ではない。

 だが女性の就労に対してあまり積極的ではないイスラム教の国で、大隊規模の副司令官という要職に女性が就くと言うのは大抜擢に他ならない。

「ヤザ様から宜しくとのことで、これを預かって参りました」

 レイラが大きめのバッグから、小型パソコンが入りそうなケースを取り出し机に置くと、ゴトンという平和には似つかない硬くて重い物の入った音が響いた。

 バラクが箱をゆっくり開くと、そこにあったのはゴールドメッキの施された特別仕様のイジェメック MP-443。

「これをヤザが?」

「はい。北アフリカの王となる方には相応しいかと」

 黄金の様にキラキラと光る銃は、まさに権力の象徴。

 自信満々の表情で渡したレイラとは対照的に、バラクは何事もなかったかのように箱を閉じてそれを素っ気なく机の引き出しにしまう。

 強い復讐心に燃える者と、そうでは無くなった者の対比。

 バラクの対応に苛立ちを覚えながらも上手に隠し、何事もなかったように私の方に顔を向けてレイラは、もう一つの用事を言った。

「BMとの引継ぎは3日間。アナタは4日目の未明には速やかにアフガニスタンの本部に移動する事」

「移動手段は?」

「私の乗って来た車を使ってください」

「ルートと、手筈は?」

「ありません」

「ない……」

「ルートは自由ですが、くれぐれも敵対する者に捕まらないようにしてください」

「連絡員は?」

「さあ……」

「本部の場所は?」

「秘密です」

 本部への移動命令が出たからといって、それが本部への就任となるわけではないと言う事。

 つまり道は約束されたわけではない。と言う事か。

 “面白い!”

 受けて立とう。


 レイラに引継ぎをしていて感じたことだが、彼女は思った以上に賢い。

 出身地はイラクではなくリビア。

「何故、リビアからザリバンへ?」

「イラクとリビアは、とても似ているわ」

「と、言うと?」

「色々な利権を主張する各部族長達を抑え込み、利権を“国”に集中させたことよ」

「それを欧米諸国が“独裁”と呼び、制裁の切掛けになったのでは?」

「いいえ、多くの人たちが色々な利権を持つことで、その多くの人以上にお金は失われてしまうの。利権を維持するためのお金も必要となるでしょう?」

「つまり、その利権を一つに集約してしまえば、失われる金も少なくなると言うわけか……しかし権力者が無駄遣いしてしまえば同じことではないのか?」

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― 新着の感想 ―
[一言]  それぞれの想いが交差するシーンですね。  短い会話が続くシーンでは、組織の厳しさを感じました。  独裁に触れてますね。  この後、どんな会話が続くのか気になるところです。
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