【ナトーのフランス外人部隊入り②(Natow enlists in the French Foreign Legion)】
もともと外人部隊は女性兵士の募集は行っていない。
他の国の軍隊には、女性兵士はもはや珍しい存在ではなくなってきた。
そればかりか最近では歩兵の頂点を目指し、過酷な試練を乗り越えて特殊部隊員の栄冠を勝ち取る猛者も居る。
多くの国でジェンダー平等の精神に則り、希望し挑戦すれば必ず望む世界が実現する仕組みが築かれている。
しかし、フランス外人部隊は違う。
外人部隊の女性兵士といえば、後にも先にも1940年から1948年にかけて在籍したスーザン・トラバース(Susan Mary Gillian Travers)以外誰一人として居ない。
理由は風紀上の問題。
同じ国民の集まる“国軍”とは違い、それぞれに違う国から集まった兵士たちは生活上の習慣も違う。
その中に女性が混じると言う事は、何が起きるか予想の付かない事態に陥るかも知れない。
特に外人部隊と言えば、国軍が派遣を渋る紛争地帯でも特に危険なゾーンを任されることが殆ど。
孤立した最前線で戦争とは全く関係のない問題を抱えると言う事は、つまり全滅を意味する。
そう言うことが頻繁に起こったとしたら外人部隊の先輩たちが今まで築き上げて来た“死をも恐れぬ屈強な兵士たちの集まる最強部隊”という神話は崩れ去り、“問題児の集まる使えない部隊”と言う新たな認識へと変わり、そうなってしまうと最前線を外人部隊に任すことが出来なくなる。
外人部隊に変わり、最前線には国軍が派遣されることになり、戦闘が起こるたびにフランス兵の死傷者が出る。
それが限度を越えれば国民の間から不満がつのり、アフガニスタンを始めとする世界各地で起こる紛争を止めるための国際協力活動は大きく縮小しなくてはならなくなる。
だから外人部隊が女性隊員を執ることは無い。
しかしサラが不可能に思えるようなことも努力して可能にしてしまう能力がある以上、妹のナトーもまた不可能を可能にしてしまう能力が有るかも知れない。
まして彼女が本当にあの伝説の狙撃手グリムリーパーだったとしたら尚更。
念のためにPOCの親会社の傘下にある金融機関を使って、フランス外人部隊の事務方のトップに偽の身分証明書を持った女性が入隊を志願しに行くので絶対に受け入れないように釘を刺しておくことにした。
ナトーには申し訳ないが、バラクの様に手を血で染めてしまってから復讐の愚かさに気付いたのでは遅い。
ナトーの傍に居てあげて、直に何かしてあげることが出来たならと思うことは幾度となくあったが、ザリバンに入った以上このバクダッド周辺地域から外に出ることは叶わない。
しかも今現在リビアに進行する計画が持ち上がり、補給や大隊規模の部隊の投入計画立てる重要な任務に就くようにとザリバン本部から言われたばかり。
着々とザリバンの内部に侵入するという計画は進んでいるが、もう一方のナトーとグリムリーパーとの関連を調べる方は、肝心のヤザはアフガニスタンの本部へ移動しナトーもほぼ同時期に赤十字難民キャンプを離れて手の届かない所に行ってしまったのが計画外だ。
グリムリーパーの正体が誰なのかと、ザリバンの中の好戦的な奴らを焚きつけて武器を売りさばき、やがては大きな戦争を起こさせる。
言ってみれば2正面作戦。
第2次世界大戦で国土の東西で戦ったドイツと日本が負けたように、向きが違うだけでも難しい。
しかも2つの異なる目的を持った作戦と言うのは、難しい。
まるでアメリカ海軍の空母部隊を叩き潰す作戦と、ハワイ島周辺の哨戒活動のためにミッドウェイ島を占領する作戦を担った日本海軍連合艦隊のよう。
だが私は負けない。
サラのため、平和の為にもやり遂げて見せる。
ナトーの外人部隊入りは、先方の人事などを総合的に管轄する事務長のテシューブと言う男に指示しておいたとの連絡が入った。
入隊希望者の入隊の是非は、この男に全て任されているから先ず間違いはない。
もし仮に何らかの間違いがあったとしても、入隊後でも解雇する権限を持っているそうなので、これで一安心。
あとは入隊を拒否されたナトーを一旦POCで預かるために、スカウトを手配しておけば事は足りるだろう。
なにしろ、目的が達成されなかったばかりか、これから先の事も決まっていない状況。
住むところも、働くあても見つからない。
放浪しながら街のチンピラから金を巻き上げるような生活をいつまでも続けるわけにもいくまい。
それよりもPOCの研修施設で勉強をしながら働く知識を身に着け、就職先と宿の心配がいらない生活を提案したら、賢明なナトーなら必ずのってくるはず。
これで一安心。 と、思っていたが、事態は思わぬ方向に動いていた。




