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アン・ファミーユ(家族とともに)第2部  作者: 湖灯


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【ナトーのフランス外人部隊入り】

「ナトちゃんが何処に向かおうとしているかがわかったわ」

 待ちに待ったサオリからの連絡。

「ナトーは今、どこに居る!? 無事なんだろうな! ひもじい思いをしているなら送金する。病気や怪我はしていないか!?」

「……」

「ど、どうした!? やはり何かあったのか!??」

「……まあまあ、直接会ったこともないのに、まるで我が娘を旅に出した親みたいね」

 慌ててしまったのをサオリに見透かされてしまったが、そんなことはどうでも良い。

 肝心なのは、ナトーが無事で何不自由なく暮らしているかだ。

「そんなことより、今は何処だ!? 元気にしているんだろうな!」

「そんなに何回も言わなくたって、チャンと覚えているわよ」

「っで、どこなんだ!?」

「さっき密航した貨物船がベネチアに着いたところよ」

「密航!? 金がないのか!?」

 慌てて聞いた。

「お金は大丈夫よ」

 サオリの回答に、一瞬嫌な考えが閃いてしまう。

 ナトーは女の子だ。

 サラと同じように、凄い美人。

 しかもサラと違って、発育のいい健康的なスタイル。

 お金に困っていない。と言う事は、まさか、そんな……。

「言っておきますけれど、そういう風には育ててはいませんから」

「そっ“そういう風には”とは?」

「変なこと、考えていたでしょう?」

「まさか……」

 男は、なにかと思考能力が単純に出来ていて、そこを常に女に読まれてしまう。

「心配しないで。ナトちゃんは夜の歓楽街に集まるチンピラやマフィアをボコボコして稼いでいますから」

「そっちの方が、危ないだろう‼」

「あらナトちゃんの格闘技能力なら、そこら辺に居るストリートファイター相手なら無敗よ」

「それはそうだろうけど、相手は武器を持っていることもあるだろうから万一の事もあるだろう!」

「ないよ。そのために護身術を徹底的に教えてあるのだから」

「確かに護身術は武器に対しても有効だが、何故それで安心と言い切れるんだ?」

「だって、もう実力は私よりも上だもの」

「でも、ナトーは君に勝ったことがないんだろう?」

「そうね。あの子は優しいから、きっと深層心理の奥で、私を乗り越えることをためらっているんじゃないのかな。 だから私を追い詰めても、最後の最後でフィニッシュに持っていけない」

「……なるほど」

 ナトーと手合わせをしていない私には分からないが、思いやりのある優しい子らしいから、そういう面もあるのだろうと思った。

「ところで密航船に乗って地中海を渡ったのは分かったが、ナトーはいったいどこに向かおうとしているんだ?」

「フランスよ」

「フランス!? 何故?」

「就職のため」

「就職? どこに就職するつもりだ?」

「おそらく彼女は、軍隊に入るのだと思うわ」

「軍隊!? しかし、フランス国籍を持たないナトーはフランス軍には入れないだろうし。身分証明書を偽造したところで、フランス政府のデーターバンクを改ざんするのは難しいから直ぐにバレてしまうぞ……ま、まさか!」

「そう。その“まさか”の外人部隊よ」

「しかし、何のために!?」

「おそらく、復讐のため」

「誰への復讐?」

「ヤザ」

 なぜ義父のヤザに復讐しなくてはならないのか、私には理解できなかったがSISCONの情報網を持つサオリは、その理由を知っていた。

 サオリをザリバンの爆破テロに見せかけて偽の暗殺を企てたその日、あの場所に偶然ヤザが居合わせた。

 つまりナトーは、ヤザがサオリを殺したのだと思ってしまったのだ。

 バラクと同じ。

 あの心優しく穏やかで賢いバラクでさえ、姉のハイファを亡くしたとき、やり切れぬ思いを“復讐”と言う形に変えて癒してしまおうとした。

 心優しいナトーもまた同じ。

 いや、ナトーはバラクの比じゃないくらい、強い復讐心を持っているに違いない。

 仮に彼女が本当にグリムリーパーだとした場合、彼女をグリムリーパーと呼ばれるまでの伝説の狙撃兵に育て上げたのは義父のヤザと言う事になる。

 生きるため、子供だからといって300人近い人の死を照準越しに目の当たりにするのは辛かった事だろう。

 そのうえ、再び人間らしい生活と知識と身を守る術を教えてくれ、姉の様に慕っていたサオリを目の前で殺されたと思えば尚更。

 サオリの頼みを迂闊に聞いてしまったことで、偶然とはいえこんなにもナトーに辛い思いをさせてしまったことを後悔した。

 こうなれば是が非でもナトーの外人部隊入りを止めなければ……。

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― 新着の感想 ―
[一言]  優しいメェナードさん、本当に親のようにナトーちやんを心配していて、メェナードさんらしくて微笑ましかったです。  サオリさんは、ナトーちゃんを信じ切っていて、腰の座ったお母さんのよう。  あ…
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