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アン・ファミーユ(家族とともに)第2部  作者: 湖灯


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【バラクの告白④(Confessions of Barack)】

 ド~ンと言う爆発音と共に、真っ白な砂埃が舞う。

 ハンビーに命中したことは、敵兵達の甲高い悲鳴を聞けば良く分かる。

 だが、さすがにアメリカ兵。

 死傷者が何人出たのかは分からないが、反撃の手は緩めない。

 砂埃で確認できないまま、AK47を地上にできた黄土色の雲に向かって浴びせかける。

 砂埃が収まると、敵の被害状況が分かってきた。

 M2重機関銃座の付いたハンビーにロケット弾は当たったものの、車両の上部が破損しただけで車両そのものは横転もしていなければ火災も起こしてはいなかった。

 死傷者が何人出たのか分からないが、思ったほど数は出ていないはず。

 敵兵は未だにハンビーに張り付いたまま、反撃を続けている。

 直に敵の応援は来る。

 その前に敵を散らさなければ、我々の負けは確定してしまう。

「装填できました!」

「よし!」

 2発目のロケット弾の装填が完了したRPGを手に取り、新たな射撃位置に着くため通りに出る。

 ここで決めなければ、おそらく3発目を撃つときは確実に狙われる。

 しかし、予想は甘かった。

 既に通りに出た段階で、敵は待ち構えていた。

 周辺に撒き散らされる5.56㎜弾の砂埃。

 急いでハンビーに照準を合わせて、トリガーを引こうとしたときに、右肩を敵の銃弾がかすめた。

 バシューッ!

 慌てて発射したが、かすめたとは言え銃弾を受けたために放たれたロケット弾は大きく目標を外れ、敵の後方にあった民家の窓ガラスを突き破ってその中で爆発した。

 建物全ての窓ガラスが割れ、そこから爆発性のガスが噴き出す。

「分隊長、肩から血が!」

「かすり傷だ、最後の装填を急げ!」

「はい!」

 迂闊だった。

 そして未熟だった。

 弾を撃つのだから、敵からも弾をもらうのは分かっていたはずなのに、かすったくらいで体を反らしてしまい目標を大きく外してしまうなんて。

「装填できました!」

「よし!」

 RPGを構えて三度みたび通りに出て構える。

 敵も、もう簡単には撃たしてくれないだろう。

 今度は、たとえ心臓に弾が当たろうとも決して逃げずにトリガーを引く!

 だが現実は予想を超えて厳しいものだった。

 照準を合わせようと構えた矢先、目に入ったのはコッチに向けて既に銃を構えている敵兵の姿。

 “読まれていた!”

 もう負けは決まった。

 だが勝ちが無くなった訳ではない。

 敵が撃つ前に、いや、撃った後でもキッチリ狙いを定めて当てて見せる。

 最後のチャンス。

 焦らずに狙いを定める。

 狙うのは後輪のプロペラシャフト付近にある燃料タンク。

 ところが、銃を向けていた敵兵が急に倒れた。

 味方の流れ弾が当たったのか!?

 いや、この角度からだと流れ弾が当たることは無いはず。

 折角訪れたチャンスを逃さないように、ゆっくりとトリガーを引く。

 ドォォォォ~ン!

 今度は確実にハンビーの息の根を止めた。

 構えていたRPGを下した頃、頭上に1発の銃声が響く。

 “グリムリーパー……”

 撃たれて死ぬはずだった僕の命は、我々ザリバンの誇る伝説的狙撃手『グリムリーパー』によって助けられたのだ。

 爆発の反動で後輪は吹き飛び、その向こうにあるシャーシに守られていた燃料タンクに亀裂が入りディーゼル燃料が漏れ出した。

 通常ディーゼルエンジンの燃料に使われる軽油はナカナカ燃えない。

 だが今回は後輪が吹き飛んだ事により、漏れ出したブレーキオイルに火が着き、その火を介して徐々に軽油が燃え出した。

 炎は人を恐怖に陥れる。

 敵兵はハンビーを離れ、街の奥へと逃げて行く。

 その哀れな姿を見た我々は「オー!」と勝利の雄叫びを上げた。


 隊員の歓喜の声とは別に、気になることがあった。

 2発目の誤射が原因で燃え上がった、あの家屋にゆっくりと近付く。

 爆風で吹き飛んだドアを踏み、玄関から入る。

「誰か居るか!?」

 声を掛けるが返事はない。

 部屋を進む。

 何もかもが爆風で無茶苦茶になっている。

 奥のキッチンまで進んだところで足を止めた。

 そこに居たのは、折り重なるように死んでいる大人の女性と、その女性に守られているように抱かれている6歳から2歳までくらいの子供が3人。

 3人共眠る様に死んでいた。

 “誤射”

 ここに住む住民を狙ったわけではない。

 悪いのは、ここを戦場にした敵兵。

 こんな嘘が、いつまで通用するのだろう?

 敵の誤爆に巻き込まれて死んだ姉さん。

 姉さんの夫は直ぐに復讐のために、まだ5歳だった子供を連れてザリバンに入隊した。

 だが、その姉さんの夫は僕の入隊を止めた。

「姉さんの叶えられなかった人生の分を、お前は幸せに生きていなければならない」と言って。

 しかし僕にも姉さんの復讐をしなければならないと言う気持ちは強くあったが、復讐心は捨てられなかった。

 そして今、この家族を殺してしまった。

 なんという悲劇。

 僕は、その悲劇を繰り返してしまった。

 今度は加害者という立場に変わって。

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― 新着の感想 ―
[一言]  バラクの姉さんってもしかして·········。  なんだかとても皮肉なお話です。  ここでも運命が絡み合っていますね。  おととい少しだけフルメタルを読ませて戴いたのですが、バラクの名…
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