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アン・ファミーユ(家族とともに)第2部  作者: 湖灯


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【バラクの告白③(Confessions of Barack)】

 紅茶を飲み終えたバラクが、静かにカップをテーブルに置く。

「君のおかげで折角大きな部隊を任されるまでになったが、正直言うともう戦争にはウンザリしているところなんだ」

「それは?」

「ああ、姉の敵を討つためにザリバンに入って、一人の兵士としてはじめは我武者羅に敵と戦っていた。敵を追い詰めたこともあれば、逆に追い返されたこともある」

 バラクは話し始めた。

 戦場には敵だけが居る訳ではない。

 時には、戦争と全く関係のない女や子供、それに老人も居る。

 ザリバンの活動は正規軍のような華々しく悠々としたものではない。

 少ない戦力と、粗末な武器を有効に使うために市街地の建物の陰に隠れた“待ち伏せ作戦”が基本となり、そこには必ず市民が居る。

 戦争に巻き込んでしまった市民の死体を目にすることも多くある。

 敵が殺したのか、味方が殺したのか、自分自身が殺してしまったのかさえ分からない。

 殆どの場合は敵兵が殺したことにして、新たな復讐心を燃やす。

 だがある日、そうして自分に嘘を言い聞かせる事も出来ない事件が発生した。


 まだ小隊長になる前、バクダッド郊外の町で我々は敵を待ち伏せていた。

「来た! 点火しろ!」

 合図を受けた部下が、古い電気式の着火装置のハンドルを数回回し、そして一気に押し込む。

 ボムッ!

 3台のハンビーの車列を狙った爆弾に点火するが、粗悪な爆薬が原因なのか配線の組み間違えなのかその日待ち伏せに使用した爆弾の威力は低く、アメリカ軍のハンビーを吹き飛ばすどころか我々の攻撃を知らせるだけになってしまった。

 本来なら吹き飛んだハンビーから負傷者を助け出すために敵はパニック状態になるはずで、そこを我々が銃撃して全滅させる手はずだった。

 だが爆弾の威力は薄くタイヤを1本パンクさせるだけに留まり、更に運の悪いことに仕留めたと勘違いした一部の部下が命令を待たずに発砲を始めてしまった。

 当然敵は無傷に近い状態なので、直ぐに反撃に出て来た。

 厄介なのは、3台のうちの1台の天井に付いている防弾版で覆われたブローニングM2重機関銃。

 街中の至近距離からコイツの12.7 mm弾を浴びせられれば、薄いレンガで作られた塀は数発で粉々に砕かれてしまう。

「重機関銃の射手を狙え! うわぁっ‼」

 小隊長がやられ、敵をパニックに陥れるはずが、逆にこっちがパニックに。

 AK47で防弾版付きの重機関銃座を狙っても、こちらの損害が増えるだけ。

 おまけに敵はハンビーを盾に使って、正確な射撃をしている。

 このまま続ければ我々は全滅。

 だが逃げ帰えろうものなら、粛清に合ってしまう。

「RPGを探してこい‼」

「でも、この状態でRPGは格好の的になってしまうぜ!」

「いいから黙って持ってこい! 敵を殺さない限り、俺たちは全員死ぬ!」

 仲間が慌ててRPGを探しに行く。

 RPGは誘導弾ではないから、正確に目標に向けて狙いを定めて発射する必要がある。

 おまけに酷いバックドラフトが起こるため、身を隠すため伏せた状態で発射すると腰から下に激しくバックドラフトの炎を受けてしまい大やけどをしてしまう。

 もちろんそのバックドラフトのせいで、部屋の中からとか狭い塀と家屋の隙間からも撃つことは出来ない。

 砂漠の中だと急ごしらえでタコツボも掘れるが、この街中だと一旦道路に飛び出して立った状態で撃つ必要がある。

 まさに的だ。

 もし1発目が上手くいったとしても、そのバックドラフトのせいで簡単に位置は知れてしまうから、当然激しい反撃を受けるのは間違いない。

 だから仲間と上手く連携して撃つしかない。

「有ったぜ!」

「予備弾は!?」

「2発!」

「よし、お前はここに残れ。イワンは分隊員を連れてあの建物の2階から全員フルオートで一斉射撃! これを2回繰り返せ」

「合図は!?」

「お前に任せる! 新しいマガジンを使えよ。ふんづまると、コッチがヤラレル」

「了解! ではご無事で!」

 イワンが分隊員を連れて向こうの建物に移動し、我々2人も射撃位置に向かう。

「いいか、1発目を撃ち終わったら直ぐにRPGを渡す。お前はそれを受け取る手で俺にAK47を渡せ」

「はい」

 敵に見つからないように、建物の中を通って裏から配置に着く。

 建物の中には、急に起こった戦闘に、逃げそびれた住人が神への祈りを捧げていた。

 位置に着いてしばらく待つと、イワンたちの一斉射撃が始まった。

 それに合わせるように、他の分隊の発砲音も賑やかになり、逆に敵の発砲音は成りを鎮める。

 “今だ!”

 敵は今、我々の銃撃を避けるため身を潜めている。

 建物の陰から飛び出してM2重機関銃座の付いたハンビーに狙いを定め、トリガーを引く。

「RPG‼」

 敵兵が気付いて声を上げるが、もう遅い。

 点火したロケットは発射薬により秒速115mの速度で筒を飛び出すと、発射して約10mの距離からロケットモーターが作動して秒速295mの最高速度まで加速して行く。

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