【模擬市街戦施設オープン記念③(Commemorating the opening of the simulated urban warfare facility)】
サラが作ったとはいえ、ターゲットはランダムに出現する。
それさえも読んで行動するサラは、まさに天才!
ところで妹のナトーも、後日この模擬市街戦のインポッシブルクラスを使って入隊試験を受けるのですが、この模様は私の小説『フルメタル』外人部隊の章の第18部分入隊テスト⑤ で書いていますので良かったら2人の戦い方の比較してみると興味深いと思います。
「サラ、大丈夫かしら……」
「大丈夫なんじゃねえのか。なにせ奴はこのシステムの開発者なんだろう? いつどこでどんな標的が現れるかなんて全てお見通しさ」
「あんたバカねぇ、街の中をどう進むかによっても標的の場所は違うのよ、それに全ての標的が現れる訳でもないし、同じ地域に複数の標的がある場合はその現れる順番もランダムになっていて、同じパターンと出くわす確率はインポッシブルクラスでは6000万分の1以下の確立になるのよ」
「それって凄ぇのか?」
「宝くじの1等が当たる確率より10倍以上難しいわ」
「アチャー! そりゃあ幾らサラちゃんでも無理だな」
真っ先に出てきたのは私服の民兵のボード。
銃をこちらに向けている絵が2人。
単発で二人の心臓を撃ち抜き、次へ進むと、その先に出てきたのは民間人と警官。
警官は銃に手を掛けてはいないから、スルーする。
“なるほど、このパターンからのスタートね”
地図をもらった時点でパターンは60万分の1まで下がり、そしてこの民兵と警官のセットで更に確率は下がった。
いくらランダムと言ってもシステムとして制御している以上、人間の様に自由気ままではない。
ランダムにするための関数に当てはめて、物事が処理される仕組み。
前に進むと左手にある建物のドアが開き、女と子供のボードが出て来て右手側に移動する。
それと同時に右手の建物から多国籍の兵士、そして女と子供のボードの最後の列に反政府軍の兵士が出てきたので、反政府軍の兵士だけを撃つ。
“ん-! ズバリこのパターンは知っている。
関数を当てはめてみて次に最も出る確率の高いのは、通りを少し進むと壊れた塀の影から5人の民兵が出て来るパターン。
そして通りを進むと読み通り5人が出て来たので、銃を単発からフルオートに素早く切り替えて一気になぎ倒す。
私は、こうやって常に記憶と計算を辿りながら前に進む。
丁度ここでは的が出ないはずだから、先に進む前に弾倉を交換しておく。
外した弾倉には、まだ弾が2発残っていたが、この状態を放置してしまうと次に現れる的に対応できないから、弾倉から外してポケットに入れておく。
そうやって幾つか敵兵のボードを倒して進むと、メイン通りらしい十字路のある広場に出た。
正面奥には高い教会があり、そこから狙撃兵の的が出て来る。
地図では十字路を前に進むとあるが、素直に従うと四方から敵が出てくる。
つまり狙撃兵を見落としたまま前に進めばゲームオーバーになる。
装備してあるスコープで覗いてみると、思った通り狙撃兵が隠れていので逆に狙撃して倒してから、一気に通りを駆け抜けようとすると左前の窓から子供たちに混じった教師らしいボード、そして右前の窓には民兵2人とドアから更に3人の民兵が飛び出してきた。
窓の2人を単発で射貫き、ドアから出て来た3人を連射で片付け、通りを抜けて振り向くと来た方の家の左右から8人の民兵が飛び出してきた。
それも連射で打ち抜くと、お次は背後で小さな音がふたつ。
冷静に腰に付けたホルスターからP320を出すと、手前は女性の顔だけで、奥側の男は拳銃を構えていたので撃った。
ここで弾倉を替えるには丁度良いタイミングとなるがこれはフェイクで、そのまま歩き出すと狭い路地の二階の窓が開き子供の顔が飛び出し、そのタイミングでさっきの女のボードが銃を持つ姿に変わったので女の方を撃った。
頭の中でコンピューターと同じように計算しながら前に進む。
弾倉を交換しても、まだ少し時間に余裕があるのでポケットに片手を突っ込んで空いた弾倉に弾を詰めながら歩いた。
“ひとりの場合、敵の前で弾を打ち切ってしまうことは、死を意味する”
それがこのステージのコンセプト。
いよいよ街の出口に近付いた。
残る弾倉はひとつ。
P320の方も残る弾は2発しかないが問題はない。
おそらくカールをはじめ最終ステージにたどり着けなかった者たちは、残りの弾数に不安を覚え、それがミスにつながったのだろう。
銃弾数と、人間の心の余裕は等しい。
沢山銃弾があれば問題はないが、少なくなればなるほど心に余裕がなくなり焦ってミスをしてしまう。
街の出口へと近づくと、直ぐに窓の向こうに人の姿が立った。
ボードは女。
いや、その後ろに銃を構えた男が居る!
単発で、その男の額を打ち抜くと、ドアが開き年老いた老人が出てきた。
片手をポケットに入れ、もう一つの手には煙草。
後ろでガチャリと音がして、土砂を運ぶ大型の台車がこっちに向かって来る。
“お宝のお出ましだ!”
振り向かずに、目の前の老人がポケットに入れた手を抜くのを待つ。
抜かれた手に握られているのはハンマー。
ここでポケットからハンマーを取り出す前に撃ってしまえばゲームオーバー。
結果的にはこの老人はハンマーを持って襲って来る設定となっているが、民間人のため凶器を確認してからでないと発砲してはならない。
もちろん、その凶器であるハンマー以外の箇所に弾を当てるのもNG。
ハンマーを撃ち落とすと、すかさず横のドアが開き8人の民兵が一斉に飛び出したので、これをフルオートで撃つ。
次に立て続けに男女2人と、その間に挟まれた子供が出てくる。
3人とも私に拳銃を向けている。
私は2発しか残っていないP320 で男と女を撃ち、子供の額へ向けて弾のキレた銃を投げつけて台車に向かって走る。
台車の影から反政府軍の兵士の的が飛び出てきて、それに続いて台車の中から本物のAK-47を構えた的が起き上がる。
私は台車の影から出て来た反政府軍の兵士を撃つと、そこでHK416の方も弾が切れたのでその銃床で台車の的を叩いて倒し、持っていた本物のAK-47を奪う。
その動作とほぼ同時に、家の影から4人の民兵が出て来たのでフルオートを確認して打つ。
撃ち終わると同時に、後ろのドアが開き2人の多国籍軍兵士に挟まれた1人の男が出て来た。
2人の多国籍軍兵士は肩に小銃を掛けていて、2人に挟まれた男はその後ろにいて手は見えない。
これは私の設計と違う。
誰かが、後で追加した物だ。
冷静に、その男の額に一発お見舞いすると、案の定倒れるターゲットは両手に拳銃を隠し持っていた。
少しだけ静かな時間が過ぎると、街の教会の鐘が鳴り出した。
街に背を向け出口へと向かうと見せかけて、振り向きざまに屋根の上から顔を出した2人の民兵を撃つ。
そして鐘が鳴り終わるのを待って出口に向かい、これでインポッシブルクラス初の達成者となった。
後日談となるがこのインポッシブルクラスはその後1年間は誰1人として達成者を出すことなく、1年後に十数回のトライアルを経てクリアしたのはあのローランド・シュナイザーの弟ハンス・シュナイザーで、更にその後に私の妹であるナトーが外人部隊に志願した際にそのテストで私同様に1回のトライアルでクリアを果たし、それが切掛けとなり2人に恋が芽生える。
だが、この時はそのような運命が待ち受けているなど、知る由もなかった。




