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アン・ファミーユ(家族とともに)第2部  作者: 湖灯


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【模擬市街戦施設オープン記念①(Commemorating the opening of the simulated urban warfare facility)】

「ハーイ、サラ‼」

 空港のロビーにルーシーの明るい声が響く。

「いよいよね」

「うん。色々とありがとうサラ」

「ううん、私は私の出来る事しかやっていない。アナタ達の情熱があったから成し得たことよ。おめでとうルーシー」

「ありがとう」

 フランス外人部隊の“戦争ごっこ”に特化した遊戯場を作る案件は、結局コンペの末POCフランス支局が受注に成功し、私も出来る限り設計やシステムなどのサポートを行い、いよいよ明日がお披露目の日。

 つまり、除幕式だ。

「デモンストレーションは、もうやったの?」

「うん。何回もしたよ」

「最難関をパスした人は?」

「無理、無理! そんなの一人も出ていないよ」

 最難関と言うのは、ターゲットの数よりも数発少ない携行弾数を携帯して、全てのターゲットをクリアするというもの。

 ターゲットの数よりも弾が少ないなんてありえないゲームなのだけど、戦場ではこんなの日常茶飯事。

 そう、このゲームは“市外戦”という戦場を体験するゲームなのだから。


 除幕式の前日に行われるトライアル大会に合わせて、カーリングラードからパリに訪れた。

 ボディーガードのクラウディは1週間働きづめだったので、代わりのボディーガードとしてカールを連れてきた。

 カールの存在は、会社には秘密にしている。

 なぜかと言うと、会社内部にも私を付け狙うやつが居るから。

 切り札は、敵に知られないように取っておく必要がある。

 おそらくメェナードさんも、そのつもりでカールを私のもとに届けてくれたのだろう。


 空港ではルーシーが出迎えてくれた。

「トライアル大会を見に行く? それともパリで遊ぶ?」

「トライアルで遊ぶために来たのよ」

「遊ぶって、アンタまさか挑戦でるつもり!?」

「私だって、興味があるもの。でも、さすがに開発者が出るのは問題がありそうだから偽名で出るけどね」

「あら、何て名前?」

「ステファニー・ヨハンソン」

「あーっ、なんか雰囲気あるぅ!」

「でしょっ」

「でも、どのクラスに出るつもり?」

「とーぜん最難関のインポッシブルクラスよ」

「やっぱり……でも、あれは原理的には可能だけれど、普通は不可能よ」

「そうよね。5回や10回では当然無理よ。でもクリアした人間が居たと知れば、そこから考えるでしょう?」

「まあ、それはそうだけど、射撃の精度だけでなく、俊敏性や持久力、思考能力や勘と言った要素まで入れちゃっているのよ、そんな……いくら開発者だからってパターンも無限に近いから、いくらシステム開発に携わったからって、絶対無理よ」

「そうかしら?」

 空港から、そのまま外人部隊の基地に向かった。

 運転手は、カールだけど車はポルスキ・フィアット/FSOではなくて、私のマイバッハ。

 会場に到着すると、既に大会は始まっていた。

 受付に行って予め登録していた偽名と偽の身分証明書を見せる。

 POCが発行したものなので、その筋の者が躍起になって調べてもナカナカ足はつかない優れものだからバレる心配はない。

「ステファニー・ヨハンソンさんと、カイル・ベルクマンさんですね」

「はい」

 もちろんカールも偽名で登録しておいた。

 順番はカールの方が先。

 順番を待つ間、屋台のバーベキュー串を買ってルーシーと一緒に食べた。

「まるで、お祭りね」

「だって、戦争ごっこだもの」

「戦争ごっこかぁ……」

 ルーシーが、自分たちで設計した模擬演習場を眺めて言った。

 建物は耐久性を考えて一昔前の戦車などの装甲に使用されていた特殊圧延鋼板で作られていて、家屋に見立てるための塗装はペイントを使わずに化学変化による鉄そのものの色を利用している。

 例えば茶色い外壁は煮沸させた苛性ソーダに2時間浸けて酸化させて、色の強弱は添付する油の種類や仕上げ方法によって濃淡を作り、黒は黒錆を赤は赤錆を利用している。

 緑色の屋根には銅を酸化させて作って、いかにも木材やレンガで作ったような街並みにした。

 鉄に拘った理由はメンテナンス性とゲーム性に拘った結果。

 普通に家を作っていたのでは実弾を使う以上あっという間にボロボロになってしまい、ボロボロの成り具合で標的が現れる箇所がゲームをする側に分かってしまうし、弾が貫通してしまえば建物の内部にある“仕掛け”もダメージを受けてしまいかねないし事故も起こりやすい。

 そして建物の屋根の所々と、街の外周部には防弾樹脂で作られたカーテンが張られ、的を外れた銃弾が遠くまで飛翔しないようにしている。

 まあ飛翔する弾頭の方も通常の鉛の塊ではなく、プレス加工で作られた柔らかい弾頭とその内部に水を詰めることで安全性を高めている。

 つまり銃弾は薬莢による爆発で通常弾と同様の初速で撃ちだされるが、0,2~0,3秒後には銃弾自身の遠心力を利用した簡単な仕掛けにより銃弾内に充填された水が外に飛び出し、質量を失った銃弾は安全な飛翔体になる。

 つまり拳銃であれば約60m後、自動小銃では約140m後飛翔したのちに、一気にエアソフトガン以下の威力しかなくなってしまう。

 この安全性も、我々の案が採用された理由の一つ。

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― 新着の感想 ―
[一言]  色の拘りや、外壁の拘り、弾に至るまで細かな設計ができる湖灯様が凄いと思ってしまいます。  さてさてサラちゃんはやる気満々。  ナトーちやんは一発でクリアしてましたよね。  サラちゃんはどう…
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