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アン・ファミーユ(家族とともに)第2部  作者: 湖灯


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【運命の仕事②(Work of destiny)】

 プライベートジェットで‎ワルシャワ・バビツェ空港‎まで送ってもらい、そこからタクシーで25分走ってワルシャワ・フレデリック・ショパン国際空港から12時40分発パリ行きのエール・フランス1147便に乗った。

 たった2時間25分のフライトにもかかわらず機内食にサンドイッチが出た。

 機はポーランドからドイツ上空を通りフランスに入る。

 一見当たり前のように思えるが、第2次世界大戦当時なら、いつどこで撃ち落とされてもおかしくないルートを平然と飛んでいる。

 平和とは、こういうもの。

 あらためて平和の尊さを感じて、出されたサンドイッチを食べた。

 15時05分パリ郊外にあるシャルル・ドゴール国際空港に定刻通りに到着。

 機を出て、先ずは入国審査を済ませ、バゲージクレームエリアにスーツケースを取りに行く。

 空港の警備体制は物々しく、すれ違った4人の警備兵たちの手にはH&K UMPサブマシンガンが握られ、腰のホルスターにはSIG SAUER SP2022が収められていた。

 この重装備は、何もシャルル・ドゴール国際空港に限られたものではない。

 アフリカや中東などの紛争で多くの難民を受け入れているヨーロッパの国々では、その難民に紛れるようにやって来るテロリストに悩まされている。

 テロリストは民間人と見分けがつかないばかりか、その目的も定かでない。

 あるものはハイジャックを、またある者は民間人をターゲットにした無差別で卑劣な銃撃や爆破テロを行う。

 目的も収監された仲間を取り戻すための交渉であったり、仲間が攻撃を受けたことによる復讐や、ただ単に世界に組織の名前を売るだけの目的であったりするので、事前に奴らの起こそうとする事件を察知して未然に防ぐことは困難。

 特に多くの人で混雑する空港は昔からテロ組織のターゲットとされているので、主要な空港ではどの国も似たような厳重な警備態勢を取っている。

 テロ組織……メェナードさんは、そのテロ組織に潜入してもう2年、無事でいてくれているだろうか。


 重々しい空港警備員の姿を見て、不安な気持ちで空港のロビーを目指して歩いていると、不意にその不安を吹き飛ばしてくれる明るい声が耳に届けられた。

「ヤッホー! サラ、久し振りぃ‼」

 俯き加減だった顔を上げてみると、ルーシーをはじめフランス支局の人たちが出迎えに来てくれていた。

「ヤッホー! ルーシー、久し振り‼」

 私はルーシーが掛けてくれた明るく勇気づけてくれる雰囲気を言葉もそのまま返し、小走りに私を迎えるために広げてくれた輪の中に飛び込んでいった。


「で、先方からの仕様は?」

「それが、ハッキリと決まった仕様はないの。決まっているのは敷地面積と、こんな風に出来たらって言う漠然とした内容だけ」

「漠然とした内容って?」

 ルーシーによると相手方の外人部隊は“サバゲ―感覚でありながら、より緊迫感や臨場感が味わえるものが欲しい”と言う事らしい。

「他に条件は?」

「特にないわ」

 ルーシーたちが困るのも無理はない。

 普通、仕事を人に依頼する場合は、その依頼主の“こうありたい”と思う姿があるべきもの。

 それとオペレーション関連の知識が不足している。


 食事も摂らず、さっそく支局に入って計画を練る。

 先ずは地図から。

 今回の案件に関して、外人部隊の方からは特に“ここ”と言う場所の指定は無いから、訓練場の場所選びも重要なポイントとなるはず。

 将来的に施設が建てられそうな場所や、外部に近い敷地の外周や中央付近なども避けておいた方がいい。

 地図を見ながら、みんなで条件の良さそうな場所を探す。

 場所が確定した時には、もう22時を回っていたので、とりあえず今日はここまでにした。


 ルーシーのアパートに帰る前に、近くのレストランで食事をした。

 カーリングラードなら、もうお店が閉まっている時間。

 開いているお店だってラストオーダーの時間だけど、パリの夜は長い。

「すっかり管理職だね」

 食事をしている時にルーシーが誇らしそうな顔をして言った。

「どうして?」

「だって、昔のサラちゃんなら、誰も理解が追い付かないペースで黙々と一人で物事を進めていたでしょう?」

「あら、そうだったかしら?」

「そうよ。ゴッドアローの開発の時なんて、納得いかなければ2日も3日も研究室で徹夜していたでしょう。それなのに今日は22時に解散だなんて偉いわ」

「そうかなあ……。でも、切羽詰まったらみんなにも容赦なく徹夜してもらうことになると思うから覚悟しておいてね」

「ハイハイ」

 ルーシーが可笑しそうに笑う。

「なんで、笑うの?」

「だって、おそらく、そのようにはならないから」

「?」

「聞いているよ」

「なにを?」

「部下へのアドバイスが素晴らしいって。自分でやった方が早いし、他人にさせる事はサラにはストレスになるはずなのに、それを補うために教え方も上手になるなんてもうアンタ天才のレベルさえも超えているわ」

「買い被りは無しよ」

 そう言ったものの、ルーシーの言ったことは合っている。


 窓の外に止めてある灰色の車が気になった。

 大昔のフィアット・125とソックリなデザイン。

 これはポーランドの自動車メーカーであるFSOが、コーリアの自動車メーカーの傘下に入っていた頃に生産されたポルスキ・フィアット/FSO。

 気になるのは、この車が珍しいからではない。

 これに乗って来た人間の事。

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― 新着の感想 ―
[一言]  相変わらず、そこに居て体験しているような描写で凄いなあと、感嘆が溢れますう。  読ませて戴いて思い出したのですが、フランスってテロとかで治安がとても悪くなったと前に聞いたことあります。 …
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